国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新のデータによれば、中国、香港特別行政区の羊飼養数は、1960年代半ばから1970年代半ばにはおおよそ30匹前後で推移していましたが、1975年以降急激に減少し、1990年代には一時的な増加を見せたものの、2000年代初頭以降は15匹の一定水準で推移しました。その後、2010年代からわずかに増加し、2022年には22匹となりました。
中国、香港特別行政区の羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 22 |
2021年 | 21 |
2020年 | 21 |
2019年 | 22 |
2018年 | 22 |
2017年 | 21 |
2016年 | 21 |
2015年 | 20 |
2014年 | 20 |
2013年 | 20 |
2012年 | 20 |
2011年 | 19 |
2010年 | 18 |
2009年 | 19 |
2008年 | 18 |
2007年 | 18 |
2006年 | 18 |
2005年 | 15 |
2004年 | 15 |
2003年 | 15 |
2002年 | 15 |
2001年 | 15 |
2000年 | 15 |
1999年 | 15 |
1998年 | 15 |
1997年 | 15 |
1996年 | 15 |
1995年 | 28 |
1994年 | 7 |
1977年 | 10 |
1976年 | 10 |
1975年 | 30 |
1974年 | 40 |
1973年 | 40 |
1972年 | 36 |
1971年 | 35 |
1970年 | 28 |
1969年 | 31 |
1968年 | 26 |
1967年 | 32 |
1966年 | 27 |
1965年 | 20 |
1964年 | 19 |
1963年 | 19 |
1962年 | 20 |
1961年 | 15 |
香港特別行政区の羊飼養数の推移を振り返ると、1960年代から1970年代にかけてはおおむね30匹前後で推移していたものの、1975年以降急激な減少が見受けられます。この減少は、当時の香港の急速な都市化とそれに付随する農業用地の減少が大きな要因と考えられます。特に、1976年以降の飼養数は大幅に減少しており、1977年にはわずか10匹にまで落ち込みました。また、1990年代には一時的に回復し、1995年には28匹まで増加しましたが、以降は再び減少に転じ、2000年からは15匹前後で安定するようになりました。
2000年代以降の安定した水準を見ると、この時期には香港特有の地理的・経済的条件が重要な背景として存在していると言えます。香港は金融や貿易を中心とした都市型経済が発展しており、農業や畜産業の役割は限られています。そのため、羊の飼養数も商業規模や輸出規模を伴う他国の農業のような堅調な成長を遂げることはありませんでした。この点では、日本においても都市化が進む地域で同様の現象が見られ、例えば首都圏では農業・畜産業が縮小傾向にあります。
一方で、2010年代以降、香港の羊飼養数は僅かな増加傾向が見受けられます。この増加は、おそらく地元の農産物や地域生産品への関心の高まりや政策的な支援が影響している可能性があります。近年、香港では輸入依存を低減し、地元生産を強化する動きが見られ、農家への助成や小規模牧場の支援が一部行われていることも背景にあると考えられます。
課題としては、人口の伸びと都市化の進展が与える影響が今後も大きい点を挙げることができます。香港は依然として土地が限られている上に、不動産価格の高騰などにより農業用地確保が困難で、畜産業の収益性を維持することは容易ではありません。そのため、持続可能な畜産業のモデルを確立する必要があります。
将来に向けた提言として、香港の羊飼養数を維持または増加させるためには、小規模ながら収益性の高い持続可能な畜産モデルの導入が鍵となるでしょう。たとえば、技術革新を取り入れた高効率な飼養方法の普及や、地元消費者に特化した付加価値の高い製品開発が考えられます。また、都市と農村の連携を強化し、例えば観光と畜産業を結びつけたアグリツーリズムの導入など、新しい収益拡大の仕組みを取り入れることも注目されます。さらに、畜産に特化した教育や訓練を強化し、若い世代による農業参入を促す取り組みが必要です。
地政学的には、香港の畜産業が今後も長期的に成長するには、中国本土との輸出入動向や国際的な食品市場の変動が大きな影響を及ぼすと考えられます。また、疫病や自然災害のリスク管理も重要であり、これらの課題への備えが地域の畜産業を長く支えるための基盤となるでしょう。国際的な協力を図りつつ、地域産業の持続可能な発展を進めることが求められます。
以上のように、香港の羊飼養数推移は都市化や国際的な経済動向を映す指標として興味深いだけでなく、今後の農業政策や持続可能な地域づくりを考える上で重要な例と捉えることができます。国や地方自治体、国際機関が連携し、持続可能性と地域産業の振興を一体的に進める政策を実施することが望まれます。