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エストニアの羊飼養数推移(1961年~2023年)

エストニアの羊飼養数は、1992年には約141,882匹でしたが、その後急激に減少し、1999年には28,700匹まで減少しました。2000年代に入り回復傾向が見られ、特に2005年以降増加に転じ、2012年には83,900匹に達しました。しかし、その後再び減少し、2022年には63,100匹まで落ち込んでいます。この変化の背景には、経済構造の変化や農業政策、世界市場の動向、エストニア国内の社会的要因が複雑に絡み合っています。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 55,100
-12.68% ↓
2022年 63,100
-3.81% ↓
2021年 65,600
-3.67% ↓
2020年 68,100
-6.84% ↓
2019年 73,100 -
2018年 73,100
-9.53% ↓
2017年 80,800
-5.52% ↓
2016年 85,520
0.38% ↑
2015年 85,200
4.16% ↑
2014年 81,800
6.51% ↑
2013年 76,800
-8.46% ↓
2012年 83,900
6.74% ↑
2011年 78,600
2.75% ↑
2010年 76,500
-2.17% ↓
2009年 78,200
8.01% ↑
2008年 72,400
15.47% ↑
2007年 62,700
26.41% ↑
2006年 49,600
27.84% ↑
2005年 38,800
25.97% ↑
2004年 30,800
3.01% ↑
2003年 29,900
3.82% ↑
2002年 28,800
-0.69% ↓
2001年 29,000
2.84% ↑
2000年 28,200
-1.74% ↓
1999年 28,700
-15.34% ↓
1998年 33,900
-13.52% ↓
1997年 39,200
-21.29% ↓
1996年 49,800
-19.02% ↓
1995年 61,500
-26.17% ↓
1994年 83,300
-32.93% ↓
1993年 124,200
-12.46% ↓
1992年 141,882 -

エストニアの羊飼養数推移は、同国の農業や畜産業、そしてその構造変化を反映する興味深いデータです。1992年には141,882匹と比較的高い水準でしたが、その後数年間で急速に低下し、1999年には約80%減少して28,700匹にまで減少しました。この大幅な減少は、エストニアが1991年に旧ソ連から独立した後の経済的混乱や移行過程に起因していると考えられます。この時期には、集団農場から個別農業へ移行する中で畜産業の縮小が進み、羊飼養の収益性が低下しました。

2000年代以降になると、羊の飼養数は徐々に回復し、特に2005年から2009年にかけて大きく増加しました。欧州連合(EU)加盟後の補助金や支援政策により、小規模農家や牧場が復活を果たし、羊の需要が高まったことが要因の一つです。こうした政策的支援や市場回復によって、2012年には83,900匹という高水準に到達しました。この回復は、エストニア国内外での羊肉や羊毛の需要の増加に支えられていました。

しかし、2013年以降、飼養数は再び減少傾向にあり、特に2020年から2022年にかけて減少幅が顕著です。この背景には、新型コロナウイルス感染症の流行や、それに伴う国際貿易と物流の停滞が影響している可能性があります。また、エストニア国内では農業従事者の高齢化や若年層の農業離れが深刻化しており、これも長期的な畜産業低迷の一因と考えられます。

エストニア特有の課題として、羊飼養業が地政学的リスクに直面している点も見逃せません。エストニアはロシアとの国境を接する位置にあり、その緊張関係による輸送経路や貿易の不安定性が影響しています。特にエネルギーコストの上昇や農業機械の高騰が、経営の効率化を阻む要因となっています。

将来の羊飼養数を安定化させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、若い世代が農業に参入しやすい仕組みを構築するべきです。例えば、農業教育プログラムの充実や、資金援助制度の強化が挙げられます。また、エストニア産の羊肉や羊毛の魅力を高め、国内および国外市場での販路開拓を進めることも重要です。その際、地域間協力を強化し、近隣諸国との連携を深めることで、地政学的リスクを軽減することが求められます。

さらに、持続可能な畜産業のためには、スマート農業技術の導入が鍵となるでしょう。IoTや人工知能(AI)を活用し、効率的な飼養管理を実現することで生産性を向上させることができます。同時に、政府や国際機関が先導し、環境への配慮を重視した政策立案を進めることが望まれます。

以上から、エストニアの羊飼養数の減少は単なる数字の問題ではなく、経済、社会、地政学的な要因が複雑に絡み合った結果であることが読み取れます。これに対応するため、エストニア政府は長期的視野に立った政策を設計し、国際協力の推進や若い世代への働きかけを行うべきです。また、国際機関もエストニアの課題を共有し、必要に応じて支援を行うべきです。