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ミャンマーの羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ミャンマーの羊飼養数は長期的には着実に増加してきました。特に2003年以降、急速な増加が見られ、2016年には約150万匹に達しました。しかし、その後の2017年から2018年にかけて急激な減少があり、2018年から2022年では40万匹台で横ばいの推移となっています。このデータは、単純な畜産分野の動向を超え、ミャンマーの経済、地政学的背景、および社会的影響を反映しています。

年度 飼養数(匹)
2022年 450,000
2021年 455,400
2020年 439,400
2019年 421,900
2018年 404,300
2017年 1,314,300
2016年 1,496,476
2015年 1,321,424
2014年 1,162,318
2013年 1,016,461
2012年 884,000
2011年 854,383
2010年 663,780
2009年 663,733
2008年 524,700
2007年 497,085
2006年 566,562
2005年 516,832
2004年 478,837
2003年 453,992
2002年 431,539
2001年 402,892
2000年 389,781
1999年 378,825
1998年 369,126
1997年 356,672
1996年 340,613
1995年 328,000
1994年 303,552
1993年 305,473
1992年 284,172
1991年 279,000
1990年 276,000
1989年 269,000
1988年 313,000
1987年 304,000
1986年 317,000
1985年 332,000
1984年 316,000
1983年 291,000
1982年 258,000
1981年 250,000
1980年 236,000
1979年 219,000
1978年 210,000
1977年 207,000
1976年 191,041
1975年 182,741
1974年 187,042
1973年 198,000
1972年 176,971
1971年 177,078
1970年 182,970
1969年 190,615
1968年 223,983
1967年 203,000
1966年 181,256
1965年 170,762
1964年 134,000
1963年 110,773
1962年 77,927
1961年 73,989

ミャンマーの羊飼養数は、1961年に73,989匹と記録された後、長期間にわたりほぼ一貫して増加してきました。この増加は、農村地域を中心に羊が食料、繊維、交易手段として利用され、多様な農牧複合経済を支える一角を担っていたことが背景にあります。1980年代から1990年代にかけて、ミャンマーは人口増加や生活水準向上、畜産業への行政支援が進む中で、羊飼育が重要な位置を占めるようになりました。

特筆すべきは、2000年代初頭から2016年にかけて飼育数が急成長した時期です。この時期、国内の農業政策の推進やインフラ整備が畜産業の発展を後押ししました。また、国際市場での畜産物需要の拡大も、羊飼育の拡大に寄与しました。この期間、例えば2005年から2016年の間に飼養数は約3倍に増加しました。このような発展は他の国と比べても特異です。たとえば日本では、食習慣や国土制約により羊飼育は限られています。また、中国やインドでは羊の飼養数は高水準で維持されていますが、ミャンマーほど急激な増加と後の変動は少ない傾向です。

しかし、2017年以降になると急激な変化が見られます。特に2018年では羊飼養数が約150万匹から40万匹台まで減少しました。このような急落は異常事態ともいえ、畜産セクターにおける重大な未解決課題を示唆しています。この大規模な減少には、いくつかの要因が考えられます。一つは、ミャンマー国内の政治的・社会的な不安定性です。政治的な混乱やそれに伴う衝突の影響が、農牧民が羊の飼育・管理を継続することを妨げた可能性があります。さらに、気候変動や疫病の発生による直接的な飼育数減少も否定できません。

また、2018年以降も羊飼養数は40万匹台で安定しているものの、その増加ペースは見られません。この背景には、国内需要や国際市場の変化、畜産インフラの老朽化、飼育技術・資金へのアクセス不足といった複合的な課題が存在しています。近年のCOVID-19パンデミックも、畜産セクターの物流や労働力に深刻な影響を与えました。

このような状況に対して、具体的な対策が急務となっています。政府及び関係機関は、まず羊飼養数が減少している主因を特定し、適切な対応策を講じる必要があります。たとえば、飼育農家への金融支援や技術研修の拡充、動物疫病対策の強化が挙げられます。同時に、地域間での牧草地管理の調整や持続可能な畜産業政策の策定も重要です。また、輸出市場へのアクセスを改善するため、輸送インフラや国際的な安全基準への適応が求められます。ミャンマーにおける現状は、社会での安定を保つための経済施策への依存も必要であり、農業・畜産の成長による貧困削減の可能性も秘めています。

結論として、ミャンマーの羊飼育業は、単なる畜産活動ではなく、地政学的なリスクや政策の一環として広範囲で捉えるべき分野です。過去の増加から安定、減少の流れは、地域環境の格差や政策の未対応を反映しており、長期的な視野のもとでの改善が求められます。この分野の発展が、農村経済のみならず、持続可能な国全体の再生への鍵となる可能性を秘めています。