国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによれば、モンゴルのヤギ肉生産量は長期的に増加傾向を示しています。1961年の生産量は21,000トンから始まり、2020年には129,163トンと過去最高の水準に到達しました。その後は若干の変動があるものの、2022年には121,089トン、2023年には101,120トンと、高い水準を維持しています。このデータは、モンゴルの農畜産業の成長や気候変動、需要増加などの影響を反映しています。
モンゴルのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 101,120 |
-16.49% ↓
|
2022年 | 121,089 |
23.9% ↑
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2021年 | 97,734 |
-24.33% ↓
|
2020年 | 129,163 |
44.1% ↑
|
2019年 | 89,634 |
7.19% ↑
|
2018年 | 83,623 |
3.48% ↑
|
2017年 | 80,813 |
5.08% ↑
|
2016年 | 76,903 |
-10.95% ↓
|
2015年 | 86,356 |
42.62% ↑
|
2014年 | 60,548 |
-5.59% ↓
|
2013年 | 64,134 |
13.84% ↑
|
2012年 | 56,336 |
16.81% ↑
|
2011年 | 48,228 |
-1.73% ↓
|
2010年 | 49,075 |
-36.74% ↓
|
2009年 | 77,576 |
63.28% ↑
|
2008年 | 47,510 |
23.08% ↑
|
2007年 | 38,600 |
16.97% ↑
|
2006年 | 33,000 |
-11.29% ↓
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2005年 | 37,200 |
12.73% ↑
|
2004年 | 33,000 |
73.68% ↑
|
2003年 | 19,000 |
-5% ↓
|
2002年 | 20,000 |
-28.57% ↓
|
2001年 | 28,000 |
-6.67% ↓
|
2000年 | 30,000 |
-6.9% ↓
|
1999年 | 32,225 |
7.06% ↑
|
1998年 | 30,100 |
16.22% ↑
|
1997年 | 25,900 |
-7.83% ↓
|
1996年 | 28,100 |
56.11% ↑
|
1995年 | 18,000 |
12.5% ↑
|
1994年 | 16,000 | - |
1993年 | 16,000 |
-17.53% ↓
|
1992年 | 19,400 |
-16.38% ↓
|
1991年 | 23,200 |
-6.07% ↓
|
1990年 | 24,700 |
30.74% ↑
|
1989年 | 18,892 |
6.81% ↑
|
1988年 | 17,688 |
-16.91% ↓
|
1987年 | 21,288 |
3.01% ↑
|
1986年 | 20,666 |
7.08% ↑
|
1985年 | 19,300 |
-10.23% ↓
|
1984年 | 21,500 |
2.87% ↑
|
1983年 | 20,900 |
-4.13% ↓
|
1982年 | 21,800 |
-0.46% ↓
|
1981年 | 21,900 |
-8.75% ↓
|
1980年 | 24,000 |
-15.25% ↓
|
1979年 | 28,320 |
-1.13% ↓
|
1978年 | 28,643 |
33.62% ↑
|
1977年 | 21,436 |
-5.11% ↓
|
1976年 | 22,590 |
-14.63% ↓
|
1975年 | 26,460 |
14.05% ↑
|
1974年 | 23,200 |
16% ↑
|
1973年 | 20,000 | - |
1972年 | 20,000 | - |
1971年 | 20,000 | - |
1970年 | 20,000 | - |
1969年 | 20,000 | - |
1968年 | 20,000 |
17.65% ↑
|
1967年 | 17,000 |
13.33% ↑
|
1966年 | 15,000 | - |
1965年 | 15,000 |
-6.25% ↓
|
1964年 | 16,000 |
6.67% ↑
|
1963年 | 15,000 |
-6.25% ↓
|
1962年 | 16,000 |
-23.81% ↓
|
1961年 | 21,000 | - |
1961年以降、モンゴルにおけるヤギ肉生産量の推移にはいくつかの重要な特徴が見られます。1960年代から1970年代にかけての生産量は比較的安定的で、20,000トン前後で推移しました。しかし、1975年以降には28,000トンを超える増加傾向が見られ、経済状況の変化や内需拡大、ヤギの飼育効率向上などが背景にあったと考えられます。その後、1990年代には一時的に生産量が低迷し、特に1993年や1994年には16,000トンまで減少しました。この時期の低迷は、モンゴルの経済移行期による混乱や気候条件の悪化が影響したと推測されます。
21世紀に入ると、生産量は再び増加に転じ、特に2008年には47,510トンと顕著な伸びを示しました。2015年から2020年にかけては急激な増加が記録され、2015年の86,356トンから2020年の129,163トンに至っています。この時期の急激な増加の背景には、国内外の需要の高まりや輸出拡大、モンゴル政府による畜産業振興政策が寄与していると考えられます。同時に、気候条件の改善や飼育技術の向上が生産効率に好影響を与えたとみられます。
一方、2021年以降の生産量には変動があり、2021年の97,734トンから2022年には121,089トンへ増加したものの、2023年には101,120トンと再び減少しました。この変動は、気候変動の影響や地域による異常気象が影響している可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症による物流や市場構造の一時的な混乱も影響を及ぼしたと推測されます。
モンゴルのヤギ肉生産量の推移と将来展望には複数の課題が存在します。まず、地政学的なリスクとして、中国やロシアとの輸出依存が強い点が挙げられます。これらの国々との政治的関係や経済摩擦が輸出に悪影響を及ぼす可能性があります。また、近年の急激な生産量増加は環境への負荷を招いており、過放牧による土地の荒廃や生態系への影響が危惧されています。さらに、気候変動とそれが引き起こす極端な天候イベントも大きな脅威となっています。
これに対処するためには、いくつかの具体的な施策が必要です。例えば、持続可能な畜産業の確立を目指し、草地の保全と過放牧防止に向けた新たな管理方法の導入が求められます。また、中国やロシア以外の貿易相手国の多角化を進めることで、輸出リスクの分散を図ることができます。さらに、革新的な飼育技術や気候に強い家畜種の育成を促進するための研究開発投資が必要です。
モンゴルのヤギ肉生産は、食糧安全保障や経済成長に対して大きな潜在力を持つ分野であり、その重要性は増しています。しかし、それを持続可能な形で成長させるためには、短期的な利益追求ではなく、長期的な視野に基づいた政策が欠かせません。国際社会や関係国との協力を深めながら、モンゴル国内での資源管理能力の向上や気候変動適応能力を高めることが、将来の安定的な発展の鍵となるでしょう。