国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによると、ニジェールのフォニオ生産量は1961年から2022年にかけて大きな変動を伴いながら成長を遂げてきました。特に1970年代以降、生産量が顕著に増加しましたが、不安定な動向も見られます。2008年の5,329トン、2010年の5,467トン、そして2013年の7,071トンなどのピーク以降、2020年代前半において再び変動が続いています。2022年時点での生産量は6,050トンで、前年に比べ上昇に転じたものの、2018年の6,400トンに近い安定的な水準には戻っていない状況です。
ニジェールのフォニオ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 6,372 |
5.32% ↑
|
2022年 | 6,050 |
50.69% ↑
|
2021年 | 4,015 |
-29.23% ↓
|
2020年 | 5,673 |
-6.17% ↓
|
2019年 | 6,046 |
-5.52% ↓
|
2018年 | 6,400 |
3.1% ↑
|
2017年 | 6,207 |
1.54% ↑
|
2016年 | 6,113 |
5.27% ↑
|
2015年 | 5,807 |
56.02% ↑
|
2014年 | 3,722 |
-47.36% ↓
|
2013年 | 7,071 |
19.18% ↑
|
2012年 | 5,933 |
19.62% ↑
|
2011年 | 4,960 |
-9.27% ↓
|
2010年 | 5,467 |
69.89% ↑
|
2009年 | 3,218 |
-39.61% ↓
|
2008年 | 5,329 |
190.09% ↑
|
2007年 | 1,837 |
-10.22% ↓
|
2006年 | 2,046 |
-32.77% ↓
|
2005年 | 3,043 |
-23.34% ↓
|
2004年 | 3,970 |
176.46% ↑
|
2003年 | 1,436 |
-62.42% ↓
|
2002年 | 3,821 |
187.08% ↑
|
2001年 | 1,331 |
114.33% ↑
|
2000年 | 621 |
-31% ↓
|
1999年 | 900 |
-62.5% ↓
|
1998年 | 2,400 |
100% ↑
|
1997年 | 1,200 |
-15.85% ↓
|
1996年 | 1,426 |
58.44% ↑
|
1995年 | 900 |
12.5% ↑
|
1994年 | 800 |
14.29% ↑
|
1993年 | 700 |
40% ↑
|
1992年 | 500 |
-16.67% ↓
|
1991年 | 600 |
-3.54% ↓
|
1990年 | 622 |
-81.71% ↓
|
1989年 | 3,400 |
13.33% ↑
|
1988年 | 3,000 |
71.62% ↑
|
1987年 | 1,748 |
74.8% ↑
|
1986年 | 1,000 |
-62.96% ↓
|
1985年 | 2,700 |
8% ↑
|
1984年 | 2,500 |
66.67% ↑
|
1983年 | 1,500 |
-34.78% ↓
|
1982年 | 2,300 |
155.56% ↑
|
1981年 | 900 |
-65.38% ↓
|
1980年 | 2,600 |
6.12% ↑
|
1979年 | 2,450 |
75% ↑
|
1978年 | 1,400 |
40% ↑
|
1977年 | 1,000 |
-23.08% ↓
|
1976年 | 1,300 |
44.44% ↑
|
1975年 | 900 |
12.5% ↑
|
1974年 | 800 | - |
1973年 | 800 |
33.33% ↑
|
1972年 | 600 |
20% ↑
|
1971年 | 500 | - |
1970年 | 500 | - |
1969年 | 500 | - |
1968年 | 500 |
25% ↑
|
1967年 | 400 | - |
1966年 | 400 |
8.11% ↑
|
1965年 | 370 | - |
1964年 | 370 |
5.71% ↑
|
1963年 | 350 | - |
1962年 | 350 | - |
1961年 | 350 | - |
ニジェールのフォニオ生産は、過去数十年にわたり特に1970年代から目立つ成長を遂げてきました。フォニオは、西アフリカ地域における重要な穀物で、乾燥地域でも栽培可能なことから食料安全保障上の戦略的作物と位置付けられています。この作物は一般的に耐性が強く、気候変動の影響を他の穀物に比べ受けにくいため、農村部の持続可能な農業や収入源の確保において重要な役割を果たしています。
データを見ると、生産量は特に1960年代から1975年頃まで緩やかに増加し、その後急成長に至りました。この急激な増産は、農業政策の変化や生産技術の向上、さらにはフォニオを主食とする地域における需要の高まりに起因していると考えられます。しかし、1980年代以降、生産量には深刻な変動が観察され、特に1981年や1990年には急激に減少しています。これらの減少は、干ばつや資源不足、あるいは農業インフラの脆弱性が一因と推測されます。それに伴い、フォニオの安定供給が課題として浮上しました。
2000年代に入ると生産量は再び増加傾向に転じ、2008年や2010年には5,000トンを超える大きな山を迎え、最終的に2013年の7,071トンに達しました。しかしそれ以降の数年、特に2020以降では気候変動や政治的不安定さが影響を与えた可能性が高く、生産量はやや伸び悩んでおり、2021年には4,015トンと大幅な減少傾向を示しました。2022年には6,050トンへ再び回復しましたが、長期的な安定成長はまだ達成されていません。
フォニオ生産の不安定な動向は、地域の食糧安全保障面での課題をさらに浮き彫りにしています。一方で、フォニオには気候変動への適応性が強く、長期的な農業政策の中で重要な位置を占めるポテンシャルがあります。今後の課題として、ニジェール国内の農業インフラの整備、作物生産における科学技術の導入、さらに持続可能な農業支援を進めるための国際協力が重要と考えられます。
加えて、近年の地政学的リスクや地域紛争により、農業活動が妨げられるケースが深刻化しています。特にサヘル地域全般で頻発している紛争がフォニオの生産にも影響を与える可能性があり、安定供給のためには地域間協力体制の強化が不可欠です。また、急速な人口増加が食糧需要を押し上げており、これに対応するには収量向上と流通網の強化が求められます。
具体的な対策としては、気候変動に対応する灌漑技術の導入や地域農家への災害保険提供といった政策が検討されるべきです。また、地域内外の市場アクセスを改善し、フォニオの国際的需要を強化することも重要です。これにより、農家の経済的安定を確保し、さらなる生産拡大が可能となります。
ニジェールのフォニオは今後の食糧安全保障に大きな可能性を秘めていますが、その可能性を最大限に活かすには政策的支援と生産基盤の強化、地域的な平和と安定の確立が欠かせません。