国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、ウルグアイの馬肉生産量は長期的に増加傾向を示しているものの、近年は大きな振れ幅を見せています。特に1960年代から1990年代にかけては徐々に生産量が拡大し、1990年代後半には年間7,000~8,000トンに達しました。その後、2000年代初頭の一時的なピークを経て、2010年代には若干の生産低迷期を挟むも、2021年には13,376トンという急増を記録しています。一方で、2023年には5,569トンまで減少しました。このような変動に関しては、国内外の需要、政策、国際的な地政学的背景、また疫病や環境要因の影響が挙げられます。
ウルグアイの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,569 |
-53.56% ↓
|
2022年 | 11,991 |
-10.35% ↓
|
2021年 | 13,376 |
61.07% ↑
|
2020年 | 8,304 |
-12.21% ↓
|
2019年 | 9,459 |
3.55% ↑
|
2018年 | 9,135 |
6.05% ↑
|
2017年 | 8,614 |
11.58% ↑
|
2016年 | 7,721 |
-11.45% ↓
|
2015年 | 8,719 |
5.18% ↑
|
2014年 | 8,289 |
83.6% ↑
|
2013年 | 4,515 |
-46.25% ↓
|
2012年 | 8,400 |
2.82% ↑
|
2011年 | 8,170 | - |
2010年 | 8,170 |
-5% ↓
|
2009年 | 8,600 |
-13.13% ↓
|
2008年 | 9,900 |
13.79% ↑
|
2007年 | 8,700 |
-3.33% ↓
|
2006年 | 9,000 |
12.5% ↑
|
2005年 | 8,000 |
-4.76% ↓
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2004年 | 8,400 |
20% ↑
|
2003年 | 7,000 |
-6.67% ↓
|
2002年 | 7,500 |
-29.91% ↓
|
2001年 | 10,700 |
20.22% ↑
|
2000年 | 8,900 |
27.14% ↑
|
1999年 | 7,000 |
-4.11% ↓
|
1998年 | 7,300 |
-9.88% ↓
|
1997年 | 8,100 |
14.08% ↑
|
1996年 | 7,100 |
16.39% ↑
|
1995年 | 6,100 |
-12.86% ↓
|
1994年 | 7,000 |
-6.67% ↓
|
1993年 | 7,500 |
1.35% ↑
|
1992年 | 7,400 |
8.92% ↑
|
1991年 | 6,794 |
28.19% ↑
|
1990年 | 5,300 |
60.61% ↑
|
1989年 | 3,300 |
89.66% ↑
|
1988年 | 1,740 |
52.1% ↑
|
1987年 | 1,144 |
-17.1% ↓
|
1986年 | 1,380 |
-43.77% ↓
|
1985年 | 2,454 |
6.7% ↑
|
1984年 | 2,300 |
-4.17% ↓
|
1983年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1982年 | 2,300 |
19.17% ↑
|
1981年 | 1,930 |
60.83% ↑
|
1980年 | 1,200 |
-14.29% ↓
|
1979年 | 1,400 |
-4.11% ↓
|
1978年 | 1,460 |
6.57% ↑
|
1977年 | 1,370 |
-27.89% ↓
|
1976年 | 1,900 | - |
1975年 | 1,900 |
46.15% ↑
|
1974年 | 1,300 |
-23.08% ↓
|
1973年 | 1,690 |
28.03% ↑
|
1972年 | 1,320 |
-10.81% ↓
|
1971年 | 1,480 |
17.83% ↑
|
1970年 | 1,256 |
31.79% ↑
|
1969年 | 953 |
13.45% ↑
|
1968年 | 840 |
42.37% ↑
|
1967年 | 590 |
-6.35% ↓
|
1966年 | 630 |
7.14% ↑
|
1965年 | 588 |
-2% ↓
|
1964年 | 600 |
3.45% ↑
|
1963年 | 580 |
1.75% ↑
|
1962年 | 570 | - |
1961年 | 570 | - |
ウルグアイの馬肉生産は、1960年代には年間500トン台で推移していましたが、1970年代以降に増加基調に入りました。この背景には、国内での馬飼育の増加や輸出需要の拡大があったと考えられます。1980年代に入ると、2,000~3,000トンを超える生産量を記録するようになり、1990年代には国際市場におけるウルグアイ産馬肉の需要拡大に伴って大きく増加しました。特に1990年からの5年間では、年間生産量がおよそ2倍に増え、1991年には6,794トン、翌1992年には7,400トンに達しました。
2000年代初頭には10,000トンを超える生産量を記録する年もありましたが、2010年代に入るとやや減少傾向が見られました。この時期、国際市場の競争激化や衛生基準の厳格化が影響したとも考えられます。そして、2021年には再び13,376トンという大きなピークを迎えるものの、2022年に急減、そして2023年にはさらに減少して5,569トンという近年では特に低い水準に落ち込んでいます。このような急な変動には、多くの要因が複合的に絡んでいると考えられます。
新型コロナウイルス感染拡大は、馬肉生産体制や輸出の流通網に大きな影響を与えました。人の移動制限や貿易遅延によって需要が減少した一方で、パンデミックを経た安価なタンパク源需要の増大が一時的に生産増加を支えた可能性があります。こうした需要のアップダウンとともに、2023年のように生産量が大きく減少した背景には、地政学的リスクや環境要因の影響も考慮すべきです。ウクライナの戦争や世界的な飼料価格の高騰は、他の畜産品だけでなく、馬肉生産コストをも押し上げ、結果として生産規模の縮小につながった可能性があります。
ウルグアイの馬肉産業は主に輸出に依存しており、その主要な輸出先はEU諸国や東アジアの消費者です。特に中国や韓国などの国では、馬肉が高品質なグルメ食材として認識されています。一方で、これらの市場では他の競合する輸出国も多く、価格競争や質の高い安全基準に対する対応が求められる状況が続いています。日本市場では、馬肉("桜肉"と呼ばれる)は珍味として消費される傾向が強く、需要そのものは安定していますが、持続的な供給能力が課題です。
未来への課題としては、馬肉生産の環境的持続性および経済的安定性を向上させることが挙げられます。地球温暖化の進行は農業全般にとって大きなリスク要因であり、馬飼育の生態系にも影響を与えます。具体的には、牧草の生産性低下や水資源の確保などが問題となり得ます。また、輸出の経済的な不透明性を緩和するための取り組みが必要です。例えば、他地域の新興市場の開拓による市場の多角化や、国内需要の掘り起こしを行うことが、安定した生産量維持に資すると考えられます。
さらに、国際的な貿易条件の変化や動物福祉への意識の高まりへの対応も重要な課題です。特に動物の飼育環境に関する基準の厳格化は、EU市場やアメリカ市場に馬肉を輸出する際の前提条件となる可能性が高く、それに向けた制度や運用の見直しを進める必要があります。また、地元の馬肉加工産業における技術革新をも促進し、製品の付加価値を高めることも重要です。
今後は、ウルグアイ政府や国際機関が協力して、牧場管理の合理化や輸出市場開拓、天候変動対策に注力するべきです。これにより、馬肉産業が中長期的に安定した収益性と持続可能性を保ちつつ、国際競争力を高めることが期待されます。