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トルコの馬肉推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新のデータによると、トルコにおける馬肉生産量は1961年の6,900トンをピークに長期的に減少傾向を続け、2023年には672トンにまで低下しました。この60年間でおよそ90%減少しており、馬肉が国内食糧供給および畜産業において占める役割が劇的に縮小していることがわかります。

年度 (トン) 増減率
2023年 672
-10.04% ↓
2022年 747
-10.24% ↓
2021年 832
-5.99% ↓
2020年 885
-11.21% ↓
2019年 997
-4.15% ↓
2018年 1,040
-10.96% ↓
2017年 1,168
-1.05% ↓
2016年 1,181
-5.69% ↓
2015年 1,252
-2.28% ↓
2014年 1,281
-5.36% ↓
2013年 1,354
-10.75% ↓
2012年 1,517
-8.08% ↓
2011年 1,650 -
2010年 1,650
-8.33% ↓
2009年 1,800 -
2008年 1,800
-7.69% ↓
2007年 1,950 -
2006年 1,950 -
2005年 1,950 -
2004年 1,950
12.07% ↑
2003年 1,740
-10.77% ↓
2002年 1,950 -
2001年 1,950
-2.99% ↓
2000年 2,010
-6.29% ↓
1999年 2,145
-4.67% ↓
1998年 2,250
-16.67% ↓
1997年 2,700 -
1996年 2,700 -
1995年 2,700 -
1994年 2,700 -
1993年 2,700 -
1992年 2,700
-5.26% ↓
1991年 2,850 -
1990年 2,850
-2.56% ↓
1989年 2,925
-7.14% ↓
1988年 3,150 -
1987年 3,150 -
1986年 3,150
-4.55% ↓
1985年 3,300
-12% ↓
1984年 3,750
-3.85% ↓
1983年 3,900
-3.7% ↓
1982年 4,050 -
1981年 4,050 -
1980年 4,050
-3.57% ↓
1979年 4,200
-6.67% ↓
1978年 4,500 -
1977年 4,500 -
1976年 4,500
-3.23% ↓
1975年 4,650
-6.06% ↓
1974年 4,950
-29.79% ↓
1973年 7,050
30.56% ↑
1972年 5,400
-2.7% ↓
1971年 5,550
-5.13% ↓
1970年 5,850
-2.5% ↓
1969年 6,000
-2.44% ↓
1968年 6,150
-2.38% ↓
1967年 6,300 -
1966年 6,300 -
1965年 6,300
2.44% ↑
1964年 6,150
-4.65% ↓
1963年 6,450
-6.52% ↓
1962年 6,900 -
1961年 6,900 -

トルコの馬肉生産量の動向を詳しく分析すると、1960年代初頭から1970年代初頭までおおむね6,000トン台で推移していたのが特徴です。この時期は馬が輸送手段としても重要視された背景があり、馬を屠畜して馬肉として供給する流れが一定の規模で維持されていました。しかし、1970年代後半を境に馬肉生産量は低下を始め、1980年代以降、その減少のペースが加速しています。この変化はトルコの産業構造と消費習慣の変革を反映していると考えられます。

まず、馬肉消費の減少は、文化的背景と食習慣の影響を大きく受けています。トルコでは、イスラム教の影響が強く、馬肉はあまり一般的な食材とされていません。この点は、馬肉の消費が盛んな一部の中央アジア諸国とは対照的です。また、経済発展に伴い食材の多様性が増し、牛肉や鶏肉といった他のタンパク源が主流となったことも、馬肉需要の低下を後押ししました。

さらに、農業技術の進歩と近代的な交通インフラの整備により、馬の需要自体が縮小したことも注目すべき要因です。農村部での耕作や輸送手段として利用されていた馬は、より効率的な機械に置き換えられ、同時に馬肉生産の縮小にも寄与しました。1990年代からは年間3,000トン以下で推移し、2000年以降はさらに低い水準に移行しています。

最近のデータでは、2022年から2023年にかけての生産量減少は約75トンと、引き続き停滞傾向が続いています。この現象の背景には、トルコ国内での馬の飼育数減少に加え、世界的な動物福祉への意識向上や、家畜の管理に対する規制の強化といった国内外の政策課題が影響しています。

未来の課題としては、このような背景を考慮することで、トルコの農業政策および動物飼育政策を適切に調整する必要があることが挙げられます。特に、馬飼育農家への支援策や国内における馬肉の新たな文化的価値を提案する取り組みが求められるでしょう。また、国際市場における馬肉需要を分析し、輸出可能性を探ることで、農村コミュニティの活性化を図る手段にもつながると考えられます。

他国の状況と比較すると、中央アジアやモンゴルにおいては馬肉が伝統的なタンパク源として利用されており、それを基に国内市場と輸出市場の両方をある程度安定的に維持しています。一方、ヨーロッパでは馬肉は特殊な市場ニッチとして捉えられ、特定の文化圏での需要も続いています。トルコはこれら諸国の事例を参考にし、特定の地域や民族的背景における馬肉の需要を再発見することが対策として考えられます。

さらに地政学的な観点では、馬肉生産の背景にある畜産業全体の安定性が、地域の食料安全保障に影響を与えることが考えられます。戦争や地域衝突などが発生した際、人口増加や供給不足のリスクにさらされる可能性があり、あらゆるタイミングで多様な食料生産体系を維持することが鍵となります。

結論として、トルコの馬肉生産量の減少は単なる数字の変化にとどまらず、農業形態や食文化、さらには地域経済の構造変化を反映したものであると言えます。将来への示唆として、持続可能な畜産モデルの構築や地域の特性に応じた新しい需要創出を目指し、政府や地域コミュニティが一体となって政策を策定する必要性があるでしょう。