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モンゴルの馬肉推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、モンゴルにおける馬肉生産量は、過去約60年にわたって大きな変動を示してきました。特に2020年には105,881トンという記録的な量に達し、その後2021年の64,553トン、2022年の82,633トン、2023年の73,883トンと高止まりで推移しています。この間、経済的・地政学的要因や食文化の変化が生産量に影響を与えていると考えられます。

年度 (トン) 増減率
2023年 73,883
-10.59% ↓
2022年 82,633
28.01% ↑
2021年 64,553
-39.03% ↓
2020年 105,881
49.52% ↑
2019年 70,812
23.81% ↑
2018年 57,193
36.87% ↑
2017年 41,787
0.13% ↑
2016年 41,734
-17.59% ↓
2015年 50,642
71.47% ↑
2014年 29,535
-0.76% ↓
2013年 29,760
-4.25% ↓
2012年 31,082
22.01% ↑
2011年 25,474
10.53% ↑
2010年 23,047
-35.23% ↓
2009年 35,582
-6.61% ↓
2008年 38,100
31.38% ↑
2007年 29,000
-9.09% ↓
2006年 31,900
-21.04% ↓
2005年 40,400
1% ↑
2004年 40,000
53.85% ↑
2003年 26,000
-33.33% ↓
2002年 39,000
20% ↑
2001年 32,500
-18.75% ↓
2000年 40,000
-12.09% ↓
1999年 45,500
13.75% ↑
1998年 40,000
0.5% ↑
1997年 39,800
3.11% ↑
1996年 38,600
70.04% ↑
1995年 22,700
14.65% ↑
1994年 19,800
-15.74% ↓
1993年 23,500
-38.96% ↓
1992年 38,500
5.77% ↑
1991年 36,400
18.57% ↑
1990年 30,700
4.1% ↑
1989年 29,492
7.1% ↑
1988年 27,536
-6.67% ↓
1987年 29,505
-1.2% ↓
1986年 29,862
1.23% ↑
1985年 29,500
7.66% ↑
1984年 27,400
1.11% ↑
1983年 27,100
2.26% ↑
1982年 26,500
-3.64% ↓
1981年 27,500
-5.17% ↓
1980年 29,000
-8.81% ↓
1979年 31,800
-14.75% ↓
1978年 37,300
9.71% ↑
1977年 34,000
15.25% ↑
1976年 29,500
-3.28% ↓
1975年 30,500
5.17% ↑
1974年 29,000
17.41% ↑
1973年 24,700
2.92% ↑
1972年 24,000
9.09% ↑
1971年 22,000
-3.51% ↓
1970年 22,800
-0.87% ↓
1969年 23,000
-5.74% ↓
1968年 24,400
-7.92% ↓
1967年 26,500
9.5% ↑
1966年 24,200
-4.35% ↓
1965年 25,300
5.42% ↑
1964年 24,000
4.35% ↑
1963年 23,000
9.52% ↑
1962年 21,000
-19.23% ↓
1961年 26,000 -

モンゴルにおける馬肉生産の長期的な変動は、歴史的・経済的背景と深く関連しています。1961年時点では26,000トンから始まり、数トン単位の増減を繰り返しながら1970年代後半には37,300トンに達しました。この時期の増加は、ソ連圏での需要増加やモンゴル国内での畜産政策の強化によるものと推測されます。一方、1990年代初頭のソ連崩壊後、混乱する経済や市場の変化により1994年には19,800トンと急激に減少しました。その後、経済が安定するにつれて再び馬肉の生産が増加し、1999年には45,500トンに至りました。

注目すべき点は、2015年以降の急激な上昇です。特に2015年の50,642トンを皮切りに、2018年に57,193トン、2019年には70,812トン、そして2020年には105,881トンという過去最高値を記録しました。この増加の背景には、モンゴル政府が農畜産業の輸出を奨励していることが挙げられます。近年、中国、ロシア、日本などの近隣国において馬肉の需要が高まり、モンゴル産馬肉が輸出品目として注目されていることが要因と考えられます。

また、COVID-19パンデミックの影響で2020年に多くの国が国内食糧生産を強化したにもかかわらず、モンゴルの馬肉生産がピークに達したのは輸出市場の安定性が保たれていた証拠でもあります。しかし2021年には64,553トンと減少しており、これは輸送の制約や国内外の需要変動による影響と見られます。その後も馬肉生産量は比較的高い水準で推移しており、モンゴルでの重要な産業であり続けています。

課題としては、馬肉生産量の安定性が挙げられます。1970年代から1990年代にかけて、地政学的リスクや環境問題(特に寒波「ゾド」)が生産に大きく影響を与えました。2020年以降の増減も含め、モンゴルの気候条件や国際市場への依存度の高さが、馬肉生産の変動を助長しているようです。

今後の課題として、生産の持続可能性と気候変動への対応が検討されるべきです。モンゴルの広大な草原環境の保全を前提に、馬の家畜化管理や牧草地の効率利用を採用することが必要です。また、輸出重視の戦略を維持しつつ、近隣国への輸送インフラを改善することで、経済的リスクを低減できます。

さらに、天然資源や食文化を含むモンゴル独自の価値を生かした国際ブランドとして馬肉を売り出すことも有効です。たとえば、他の国々と比較しても、品質管理の認証制度(HACCPや有機認証など)を導入することで競争力を強化できます。また、疫病や自然災害時のリスク分散として、地域間協力を強化し、国際的枠組みでの支援体制を整えることも重要です。

結論として、モンゴルの馬肉生産の推移は、同国経済や食文化、国際市場の影響を直接反映したものです。このデータから、モンゴルが持つ資源と課題を理解し、国際的な競争力を強化しつつ、持続可能な発展への取り組みを進めるべきであることが示唆されます。