国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、モーリタニアにおける馬肉の生産量は、2023年時点で513トンとなっています。この値は1961年の135トンから増加の一途をたどり、2008年から2014年にかけてのピーク時には657トンに達しました。しかし、その後は減少傾向にあり、現在の水準まで落ち込んでいます。この変遷は、国内外の食肉需要、気候変動、牧畜資源の管理状況、さらには社会経済的要因など、さまざまな背景に影響を受けています。
モーリタニアの馬肉推移(1961年~2023年)
| 年度 | (トン) | 増減率 |
|---|---|---|
| 2023年 | 513 |
-5.62% ↓
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| 2022年 | 543 |
-0.38% ↓
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| 2021年 | 546 |
-0.37% ↓
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| 2020年 | 548 |
-0.72% ↓
|
| 2019年 | 552 |
2.87% ↑
|
| 2018年 | 536 |
-13.53% ↓
|
| 2017年 | 620 |
4.69% ↑
|
| 2016年 | 592 |
-4.45% ↓
|
| 2015年 | 620 |
-5.64% ↓
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| 2014年 | 657 | - |
| 2013年 | 657 | - |
| 2012年 | 657 | - |
| 2011年 | 657 | - |
| 2010年 | 657 | - |
| 2009年 | 657 | - |
| 2008年 | 657 |
1.39% ↑
|
| 2007年 | 648 | - |
| 2006年 | 648 |
1.65% ↑
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| 2005年 | 638 | - |
| 2004年 | 638 |
8.97% ↑
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| 2003年 | 585 |
10.48% ↑
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| 2002年 | 530 |
11.71% ↑
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| 2001年 | 474 |
13.26% ↑
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| 2000年 | 419 |
15.29% ↑
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| 1999年 | 363 |
18.05% ↑
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| 1998年 | 308 |
22.02% ↑
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| 1997年 | 252 |
24.44% ↑
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| 1996年 | 203 | - |
| 1995年 | 203 |
3.85% ↑
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| 1994年 | 195 | - |
| 1993年 | 195 | - |
| 1992年 | 195 | - |
| 1991年 | 195 | - |
| 1990年 | 195 | - |
| 1989年 | 195 | - |
| 1988年 | 195 | - |
| 1987年 | 195 | - |
| 1986年 | 195 |
8.33% ↑
|
| 1985年 | 180 | - |
| 1984年 | 180 | - |
| 1983年 | 180 | - |
| 1982年 | 180 | - |
| 1981年 | 180 |
9.09% ↑
|
| 1980年 | 165 | - |
| 1979年 | 165 | - |
| 1978年 | 165 |
-15.38% ↓
|
| 1977年 | 195 | - |
| 1976年 | 195 | - |
| 1975年 | 195 | - |
| 1974年 | 195 | - |
| 1973年 | 195 | - |
| 1972年 | 195 |
-13.33% ↓
|
| 1971年 | 225 | - |
| 1970年 | 225 |
15.38% ↑
|
| 1969年 | 195 | - |
| 1968年 | 195 |
-23.53% ↓
|
| 1967年 | 255 |
41.67% ↑
|
| 1966年 | 180 |
20% ↑
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| 1965年 | 150 | - |
| 1964年 | 150 |
11.11% ↑
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| 1963年 | 135 | - |
| 1962年 | 135 | - |
| 1961年 | 135 | - |
モーリタニアの馬肉生産は、1961年の135トンから始まり、しばらく低水準での推移が続いていましたが、1997年から急激に増加し、2004年には638トンに達しました。その後、2008年から2014年にかけてほぼ安定して657トンという規模が維持されました。しかし2015年以降、減少が始まり、2023年には513トンまで落ち込んでいます。
このような大きな変動の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、モーリタニアはサヘル地帯に位置し、干ばつや砂漠化といった気候変動が牧畜への深刻な影響を与えています。馬は草地を主とする飼料資源を必要としますが、降雨量の変動や気温の上昇により、適切な飼料の確保が困難になっています。この問題は馬肉生産の減少につながっていると考えられます。
次に、社会経済的な側面も無視できません。馬肉は主に地元市場で消費されており、輸出を目的とした生産は限定的です。そのため国内の購買力や食習慣の変化が生産量に直接的な影響を及ぼします。2014年以降、モーリタニア国内では経済成長の停滞や失業率の上昇が指摘されており、こうした要因が馬肉の消費と生産に影響している可能性があります。
さらに、紛争や政治的安定性の欠如も重要な要素です。モーリタニアは、アフリカ西部において比較的安定している国に分類されていますが、隣国との国境地域ではテロ組織の活動が見られ、安全保障上の懸念が存在します。これが牧畜業全般に与える間接的な影響も考えられます。
未来に向けて、モーリタニアの馬肉生産を持続可能な形で増加させるためには、いくつかの具体的な提案が重要です。まず、気候変動への適応策として、耐干ばつ性の高い牧草種の導入や灌漑技術の普及が推進されるべきです。また、牧畜技術の向上に向けた地域協力の枠組みを整備することで、畜産業全体の効率化を図る必要があります。さらに、地元での消費を促進するために、馬肉を利用した新たな食文化や加工食品の開発も検討すべきです。
国際社会、特に食糧農業を支援する国際機関は、モーリタニアの馬肉産業を支えるための技術支援や資金提供を行うことが求められます。例えば、FAOが主導する地域牧畜支援プログラムや持続可能な開発を支援する国際協力がその一端を担うでしょう。
結論として、モーリタニアの馬肉生産量が減少している理由は、気候変動、経済的要因、地域的リスクなど多岐にわたります。この課題に対応するためには、国全体での持続可能な牧畜業の戦略構築や国際的な支援が不可欠です。十分な対策が講じられれば、再び安定した生産量に戻る可能性があると考えられます。