国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによれば、キルギスタンにおける馬肉生産量は1992年から2023年の間に大きく増加しており、特に2020年代に入ってからは急激な伸びが見られます。1992年には11,000トンだった馬肉生産量が2023年には31,100トンとなり、約2.8倍の増加を記録しました。この期間において、一部の年では減少が見られたものの、全体的な傾向としては増加の一途をたどっています。
キルギスタンの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
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2023年 | 31,100 |
1.64% ↑
|
2022年 | 30,599 |
9.42% ↑
|
2021年 | 27,965 |
6.44% ↑
|
2020年 | 26,274 |
6.78% ↑
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2019年 | 24,605 |
3.55% ↑
|
2018年 | 23,762 |
-4.07% ↓
|
2017年 | 24,769 |
7.26% ↑
|
2016年 | 23,092 |
-6.11% ↓
|
2015年 | 24,594 |
23.57% ↑
|
2014年 | 19,903 |
-8.7% ↓
|
2013年 | 21,800 |
1.16% ↑
|
2012年 | 21,550 |
14.71% ↑
|
2011年 | 18,786 |
-1.18% ↓
|
2010年 | 19,011 |
1.66% ↑
|
2009年 | 18,701 |
1% ↑
|
2008年 | 18,516 |
-2.27% ↓
|
2007年 | 18,947 |
-0.89% ↓
|
2006年 | 19,117 |
-5.61% ↓
|
2005年 | 20,253 |
11.66% ↑
|
2004年 | 18,138 |
-31.53% ↓
|
2003年 | 26,490 |
17.73% ↑
|
2002年 | 22,500 |
-9.27% ↓
|
2001年 | 24,800 |
4.64% ↑
|
2000年 | 23,700 |
16.69% ↑
|
1999年 | 20,311 |
13.38% ↑
|
1998年 | 17,914 |
-1.4% ↓
|
1997年 | 18,169 |
38.94% ↑
|
1996年 | 13,077 |
28.21% ↑
|
1995年 | 10,200 |
-19.69% ↓
|
1994年 | 12,700 |
23.3% ↑
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1993年 | 10,300 |
-6.36% ↓
|
1992年 | 11,000 | - |
キルギスタンにおける馬肉の生産量は、過去30年以上にわたって一定の変動を経ながらも、全体的には大幅な増加を見せています。1990年代には年間10,000トン台で推移していた馬肉の生産量が、次第に20,000トンを超え、2020年代に入って30,000トンを上回るまでに成長しました。この成長は、国内農業政策の変化や国内需要の拡大、さらには輸出市場の開拓に関連していると考えられます。
特に1995年以降の急激な増加傾向は、旧ソ連崩壊後の経済的混乱からの復興と農業振興策の成果によるものと見られます。1997年には18,169トンとなり、その後も増加が進むことで、2003年には過去最高の26,490トンに達しました。しかしその後一時的に減少し、2004年以降は18,000トン台に落ち込む年も見られました。この変動は、国内の経済状況や農業資源の再配分、更には天候条件などさまざまな要因が影響を及ぼした結果であると考えられます。
2020年以降の大幅な増加は、新型コロナウイルス感染症の影響が一因である可能性があります。この感染症の拡大に伴い、地域内での家畜産業への注力が高まり、地元生産の食肉に対する需要が増加したことが背景にあると推測されます。また、アジア諸国を中心とした輸出需要の高まりも、生産拡大を後押ししていると考えられます。他国と比較すると、東アジアの馬肉輸出量が多い中国やモンゴルとは異なり、キルギスタンの場合は国内消費と輸出が比較的バランス良く増加していることが特徴です。
一方で、課題も明確です。特に気候変動が放牧環境に与える影響や、一部地域での生産インフラの不足が挙げられます。キルギスタンの山岳地域は馬の飼育に適しているものの、極度の降雨不足や寒波は生産に直結するリスクを抱えています。また、馬肉の生産・加工の効率性を向上させるための技術革新が遅れている可能性も指摘されます。
このような背景を踏まえ、将来的にはいくつかの具体的対策が求められます。第一に、持続可能な牧草地管理と気候変動への適応策を講じることが重要です。例えば、灌漑設備の整備や耐旱性の高い草種の導入は、生産基盤の安定化に寄与するでしょう。第二に、馬肉の衛生管理や加工技術の確立を進めることで、国内外の消費者の安全性への信頼を高める必要があります。特に、輸出を拡大するためには、国際基準を満たした認証制度を整備することが不可欠です。さらに、地域間の協力も重要となります。他の中央アジア諸国と共同で市場を開拓し、広域での流通インフラを強化する取り組みも有効です。
地政学的にも注目される点として、馬肉生産が他国との関係性に与える影響があります。特に隣国中国への輸出拡大は、両国間の経済的結びつきを深めると同時に、中央アジア全体の経済協力を進める契機になります。ただし、その一方で過剰な輸出依存が国内市場の供給不足や価格高騰を招く懸念もあり、持続可能な輸出戦略が必要です。
結論として、キルギスタンの馬肉生産量は過去30年間で大幅な成長を遂げていますが、この成長を維持し、さらに発展させるためには、気候変動への対応や国際基準の整備、地域間協力などが重要な課題となります。これらに適切に対処することで、今後も国内外での重要な畜産産業として馬肉が成長し続けることが期待されます。