国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、カザフスタンの馬肉生産量は1992年の55,500トンから2023年には167,429トンまで増加し、約3倍に伸びています。このデータからは、カザフスタンが馬肉生産における重要な国であり続けるとともに、国内の生産力の著しい向上が確認できます。特に2000年代後半以降、増加率が大幅に加速していることが特徴的です。
カザフスタンの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
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2023年 | 167,429 |
6.74% ↑
|
2022年 | 156,864 |
3.75% ↑
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2021年 | 151,199 |
5.79% ↑
|
2020年 | 142,924 |
8.3% ↑
|
2019年 | 131,969 |
4.31% ↑
|
2018年 | 126,520 |
7.71% ↑
|
2017年 | 117,459 |
8.99% ↑
|
2016年 | 107,773 |
6.24% ↑
|
2015年 | 101,440 |
9.84% ↑
|
2014年 | 92,353 |
3.32% ↑
|
2013年 | 89,387 |
5% ↑
|
2012年 | 85,133 |
12.64% ↑
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2011年 | 75,580 |
3.35% ↑
|
2010年 | 73,133 |
2.45% ↑
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2009年 | 71,387 |
7.67% ↑
|
2008年 | 66,300 |
1.53% ↑
|
2007年 | 65,300 |
2.19% ↑
|
2006年 | 63,900 |
6.86% ↑
|
2005年 | 59,800 |
-1.64% ↓
|
2004年 | 60,800 |
6.67% ↑
|
2003年 | 57,000 |
2.15% ↑
|
2002年 | 55,800 |
1.09% ↑
|
2001年 | 55,200 |
2.03% ↑
|
2000年 | 54,100 |
-9.23% ↓
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1999年 | 59,600 |
-7.88% ↓
|
1998年 | 64,700 |
3.03% ↑
|
1997年 | 62,800 |
-7.1% ↓
|
1996年 | 67,600 |
13.23% ↑
|
1995年 | 59,700 |
-12.59% ↓
|
1994年 | 68,300 |
12.15% ↑
|
1993年 | 60,900 |
9.73% ↑
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1992年 | 55,500 | - |
カザフスタンは、ユーラシア大陸の中心部という位置的利点と歴史的背景から、馬肉を重要な食文化の一部としてきた国です。その生産動向を見ると、1990年代には経済的・社会的な不安定さの影響で生産量が上下しましたが、2000年代に入り経済の安定と政策の見直しにより、生産増加の基盤が整えられました。特に2009年以降の増加が顕著で、2023年には167,429トンという記録に到達しています。このように継続した増加は、単に国内需要だけでなく輸出市場の拡大も一因であると考えられます。
また、馬肉生産量が増加した背景には、同国内で家畜管理技術の進歩や飼育用の土地の整備が進展し、さらに農業政策で補助金の拡充が行われたことがあります。カザフスタン国土の約70%が草原という地形的条件も、馬の飼育に大きく寄与しました。他の馬肉生産国、例えばモンゴルやキルギスと比較すれば、その生産量はカザフスタンが圧倒的に優位に立っています。
さらに、カザフスタンの馬肉産業は地政学的な要因や輸出先の多様化によっても影響を受けています。特に2010年代後半から、馬肉の輸出は中国やロシアといった近隣諸国のみならず、欧州市場にも進出しています。これは、健康志向の高まりとともに、馬肉が高タンパクかつ低脂肪な食品として西洋諸国での人気を得たためです。しかし、同時に新型コロナウイルスによる国際物流の停滞や、地政学的な緊張による貿易制限が一時的に生産や輸出に影響を与えた可能性も挙げられます。
課題として、馬肉の大規模生産が地域の生態系へ与える影響が挙げられます。これは、過放牧による土地の砂漠化や、飼料用作物の過剰生産が他の農業生産への圧力を引き起こすリスクを孕んでいます。そのため、持続可能な農業の実現が今後重要な焦点となります。具体的な対策として、放牧地の管理とモニタリングの強化、飼育動物の健康と繁殖力向上を促進する技術開発、また循環型農業を推奨する国際協力が必要です。
カザフスタンの馬肉推移は、国の農業政策成功の一例であり、国内外の需要に応える成長を遂げてきました。一方で、自然環境への影響や輸出市場の不確実性など、持続可能性を意識した課題解決が求められています。カザフスタン政府や国際社会が連携して適切な政策を進めることで、同国の馬肉産業は今後も成長の軌道に乗り続けるでしょう。この動向を注視しながら、他国もまたカザフスタンを農業発展のモデルケースとすることが期待されます。