国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、ベネズエラの牛飼養数は1961年に6,500,000頭であったのに対し、2022年には16,644,150頭に増加しています。この期間中、特に1960年代から1980年代にかけては一貫して増加がみられましたが、2009年以降には一部乱高下する傾向が現れました。2010年以降は再び減少傾向が目立ちましたが、最近の2022年には改善の兆しが確認されます。
ベネズエラ (ボリバル共和国)の牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 16,644,150 |
2021年 | 15,985,583 |
2020年 | 16,055,171 |
2019年 | 16,002,651 |
2018年 | 15,898,928 |
2017年 | 16,058,763 |
2016年 | 16,494,055 |
2015年 | 16,795,158 |
2014年 | 16,816,301 |
2013年 | 16,971,185 |
2012年 | 16,969,650 |
2011年 | 14,334,094 |
2010年 | 14,134,039 |
2009年 | 17,000,000 |
2008年 | 16,987,936 |
2007年 | 16,853,524 |
2006年 | 16,628,837 |
2005年 | 16,615,439 |
2004年 | 16,231,616 |
2003年 | 15,988,907 |
2002年 | 15,791,136 |
2001年 | 15,474,090 |
2000年 | 15,164,370 |
1999年 | 14,858,779 |
1998年 | 14,539,512 |
1997年 | 14,249,724 |
1996年 | 14,016,307 |
1995年 | 13,950,403 |
1994年 | 13,796,000 |
1993年 | 13,325,000 |
1992年 | 13,648,000 |
1991年 | 13,586,200 |
1990年 | 13,272,100 |
1989年 | 13,075,900 |
1988年 | 12,856,400 |
1987年 | 12,640,800 |
1986年 | 12,330,771 |
1985年 | 11,843,600 |
1984年 | 11,575,000 |
1983年 | 11,315,000 |
1982年 | 11,051,700 |
1981年 | 10,792,300 |
1980年 | 10,539,000 |
1979年 | 10,248,900 |
1978年 | 9,918,697 |
1977年 | 9,545,876 |
1976年 | 9,404,383 |
1975年 | 9,088,786 |
1974年 | 8,842,782 |
1973年 | 8,729,552 |
1972年 | 8,549,364 |
1971年 | 8,485,106 |
1970年 | 8,289,408 |
1969年 | 8,101,537 |
1968年 | 7,852,169 |
1967年 | 7,612,379 |
1966年 | 7,379,912 |
1965年 | 7,154,544 |
1964年 | 6,936,058 |
1963年 | 6,724,244 |
1962年 | 6,518,899 |
1961年 | 6,500,000 |
ベネズエラにおける牛飼養数の推移は、同国の畜産業が経済状況や政策、地政学的な要因によって大きな影響を受けてきたことを示しています。1961年から2009年まではほぼ一貫して増加を続けましたが、2010年に約14,134,039頭へ急減。この後の10年間は乱高下を繰り返し2022年には16,644,150頭と、1970年代や2009年の水準に再び近づいています。
この背景として、学術的に指摘されるいくつかの要因があります。まず、1960年代から1980年代にかけての増加ペースは、国内の畜産業拡大政策、農業技術の進歩、及び天然資源に裏打ちされた経済成長の影響を反映しています。しかし、1990年代以降、政治情勢の不安定化と社会的対立の深刻化により、生産体制が徐々に弱体化していきました。特に2010年以降の急減は、経済危機、インフレの激化、さらには社会資源の流出による影響と関連していると考えられます。また、エネルギー資源に注力する国家政策の一環で農業や畜産業が政策優先度の低下から不利を受けた可能性も考えられます。
2022年の回復傾向については、新たな農牧畜促進政策の採用や地域間の協力の積極化が要因となっていると推察されますが、その持続可能性は依然として不確実です。ベネズエラ国内では依然として燃料不足や物流の混乱、農業インフラの老朽化が課題として残っており、それが畜産業にも影響を及ぼしています。
また、このような牛飼養数の変動は、国内のみならず、輸出市場、特に肉類や乳製品を主要輸出品としている近隣諸国との経済関係にも影響をもたらします。他の生産大国、例えば隣国ブラジルの安定した牛飼養数増加傾向(2022年で2億を超える)や、世界最大市場を持つアメリカとの競争力も重要な視点です。ベネズエラが現状の需要に応じた生産力を維持するには、これら競争相手国や国際市場の動向も考慮しつつ、適切な政策を模索する必要があります。
さらに、地政学的リスクも無視できない要素です。例えば、国内治安情勢が悪化した場合、牛の生産・飼養現場における安全確保が困難になるほか、貿易の停滞につながるおそれがあります。自然災害や気候変動の悪化も、牧草供給や農地の持続可能性に直接的な影響を及ぼすため、中長期的な計画による畜産インフラの強化が必要です。
同国の畜産業を持続的に発展させるためには、まず飼料供給や物流の安定化、それに併せた輸出先拡大が鍵を握るでしょう。また、小規模農家による持続可能な生産モデルの支援や、気候変動対策を政策の柱に据える重要性も増しています。特に乳牛や肉牛の生産効率を向上させる技術投資が求められます。例えば、ブラジルが行っている持続可能な放牧技術やデジタル技術を活用した飼育管理システムを参考とすることが有効です。
最終的に、今日のデータが示すのは、国内外の多くの要因が畜産業界に影響を与える中でベネズエラが回復の兆しを見せつつも依然として不安定な状況にあることです。今後、国連機関や地域的な農業協力機構が果たす役割はますます重要になると予測されます。同時に、民間投資の促進や公共部門の強化も加速されるべきでしょう。このような取り組みを通じて、ベネズエラの畜産業が国内外で更なる発展を遂げることを期待したいと思います。