国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、プエルトリコの牛飼養数は、1960年代から1990年代初頭にかけて増加傾向を示し、1990年には60万頭を超えていました。しかし、その後は急激に減少し、2020年代には約23万頭前後で推移しています。この変化は農業、経済、災害、社会的背景などの複合的な要因が影響したものと考えられます。
プエルトリコの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 237,846 |
2021年 | 236,947 |
2020年 | 237,474 |
2019年 | 239,117 |
2018年 | 234,250 |
2017年 | 239,056 |
2016年 | 244,044 |
2015年 | 249,124 |
2014年 | 254,332 |
2013年 | 259,714 |
2012年 | 257,285 |
2011年 | 281,345 |
2010年 | 296,621 |
2009年 | 311,962 |
2008年 | 327,328 |
2007年 | 342,305 |
2006年 | 357,417 |
2005年 | 376,925 |
2004年 | 388,233 |
2003年 | 420,856 |
2002年 | 400,313 |
2001年 | 396,350 |
2000年 | 392,309 |
1999年 | 383,498 |
1998年 | 386,980 |
1997年 | 388,307 |
1996年 | 370,546 |
1995年 | 367,733 |
1994年 | 428,604 |
1993年 | 428,778 |
1992年 | 429,000 |
1991年 | 598,575 |
1990年 | 601,280 |
1989年 | 585,581 |
1988年 | 559,187 |
1987年 | 520,000 |
1986年 | 599,511 |
1985年 | 589,809 |
1984年 | 592,890 |
1983年 | 576,312 |
1982年 | 535,840 |
1981年 | 488,600 |
1980年 | 478,989 |
1979年 | 523,933 |
1978年 | 562,171 |
1977年 | 570,871 |
1976年 | 560,648 |
1975年 | 545,852 |
1974年 | 541,200 |
1973年 | 554,000 |
1972年 | 538,000 |
1971年 | 530,000 |
1970年 | 518,000 |
1969年 | 507,000 |
1968年 | 497,000 |
1967年 | 490,000 |
1966年 | 495,000 |
1965年 | 485,000 |
1964年 | 498,000 |
1963年 | 488,000 |
1962年 | 475,811 |
1961年 | 457,512 |
プエルトリコの牛飼養数推移を見てみると、1960年代から1970年代にかけては順調な増加がみられました。この時期、牛生産は増加する人口や需要に応えるため、農業政策や技術革新に支えられて拡大しました。特に1973年にはピークの55万4000頭を記録し、牛の飼養が地域経済における重要な要素であったことがうかがえます。しかし、その後、1980年代になると一時的な大幅減少が見られる中、1984年から1990年までの期間では再び回復基調となり、1990年には約60万1280頭の高水準に達しました。
1990年代以降の飼養数の急激な減少については、多面的な原因が関係していると考えられます。まず、1992年に記録された約42万9000頭という劇的な減少は、経済的な要因や都市化の進行、さらには地政学的背景も一因であった可能性があります。この地域では、農業が次第に主産業から外れて工業化が進み、環境や耕作地の転用が起きたことが寄与したと推察されます。また、1990年代を通じての人口動態変化や移住の影響も無視できません。加えて、1990年代後半から2000年代初頭にかけては再び40万頭前後で安定しましたが、これ以降、減少傾向はさらに加速しました。
2000年代から現在に至るまでのデータは、より深刻な課題を浮き彫りにしています。2010年を過ぎてからは30万頭を下回り、2020年代では平均して約23万頭程度にとどまっています。この背景として、ハリケーン・マリア(2017年)が牧場や家畜に与えた影響、農業従事者の減少、そして広範な財政危機など、自然災害や経済的課題が複合的に影響していると考えられます。他地域と比較すると、例えばアメリカ本土では大規模農業の普及や資源の充実により牛の減少傾向は緩やかであり、中国やインドのような新興国ではむしろ畜産業が成長しています。これに対してプエルトリコでは、農業インフラへの投資の不足や人材流出が著しいという特徴もあります。
現在、牛飼養数が安定する兆しを見せない中で、いくつかの課題と具体的な対策を提案する必要があります。まず、土地利用や牧場環境の改善を優先すべきです。農業活動を支えるインフラへの資金投入を増やし、牧草地の効率的な運用で飼養コストを抑えることが求められます。また、観光業や都市化が増える中で、持続可能な農地保持政策を確立し、農業と他産業の共存を目指すべきです。さらに、政府や国際機関が技術支援や助成金を導入することで、小規模生産者を支える取り組みも効果的だと考えられます。
また、農業分野における気候変動や災害対策は避けて通れません。特にプエルトリコは毎年ハリケーンの被害に遭う可能性が高いため、家畜の避難計画や牧場施設の耐災害性を高める施策に重点を置く必要があります。さらに、持続可能な飼料の確保や、地域間協力の枠組みを構築することで、輸送コスト削減にも取り組むべきだといえます。
結論として、プエルトリコの牛飼養数の減少傾向は、単なる農業政策の問題ではなく、経済、環境、社会という多領域に影響を及ぼす課題です。そのため、持続可能な発展のインフラを整備するとともに、地域住民のニーズに応じた農業モデルを構築していくことが必要です。国際社会での支援と協力のもと、これらの対策が実現されれば、牛飼養の改善のみならず、地域全体の経済・社会的な安定にもつながるでしょう。