国際連合食糧農業機関の最新データによると、2022年のパナマの牛飼養数は約150万頭で、過去数十年間にわたる変動の後、やや安定した水準を示しています。特に1960年代から1980年代半ばにかけての急激な増加期、1990年代の減少期、2000年代の回復期を経て、2010年代以降は減少と横ばいが続いています。これらの動きは、パナマの農業政策、経済状況、気候変動、さらに地域的な地政学的リスクの影響を反映していると見られます。
パナマの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 1,508,571 |
2021年 | 1,509,900 |
2020年 | 1,505,500 |
2019年 | 1,498,700 |
2018年 | 1,558,400 |
2017年 | 1,523,000 |
2016年 | 1,554,200 |
2015年 | 1,540,500 |
2014年 | 1,633,800 |
2013年 | 1,727,300 |
2012年 | 1,722,500 |
2011年 | 1,728,748 |
2010年 | 1,640,900 |
2009年 | 1,621,100 |
2008年 | 1,603,100 |
2007年 | 1,526,200 |
2006年 | 1,561,600 |
2005年 | 1,564,600 |
2004年 | 1,480,400 |
2003年 | 1,498,400 |
2002年 | 1,532,500 |
2001年 | 1,533,461 |
2000年 | 1,342,400 |
1999年 | 1,359,800 |
1998年 | 1,382,200 |
1997年 | 1,362,200 |
1996年 | 1,442,100 |
1995年 | 1,455,612 |
1994年 | 1,453,700 |
1993年 | 1,436,600 |
1992年 | 1,427,200 |
1991年 | 1,399,487 |
1990年 | 1,388,000 |
1989年 | 1,416,600 |
1988年 | 1,422,500 |
1987年 | 1,409,500 |
1986年 | 1,430,200 |
1985年 | 1,446,900 |
1984年 | 1,452,100 |
1983年 | 1,459,000 |
1982年 | 1,456,600 |
1981年 | 1,432,740 |
1980年 | 1,404,900 |
1979年 | 1,436,700 |
1978年 | 1,395,000 |
1977年 | 1,373,900 |
1976年 | 1,361,200 |
1975年 | 1,347,900 |
1974年 | 1,332,800 |
1973年 | 1,312,200 |
1972年 | 1,288,900 |
1971年 | 1,259,892 |
1970年 | 1,187,700 |
1969年 | 1,156,800 |
1968年 | 1,118,600 |
1967年 | 1,036,600 |
1966年 | 1,010,700 |
1965年 | 968,600 |
1964年 | 890,610 |
1963年 | 842,400 |
1962年 | 835,400 |
1961年 | 762,987 |
1961年の約76万頭から2022年の約150万頭まで、パナマの牛飼養数は長期的には倍増しています。この増加を牽引した主な要因は、農地拡大や家畜育成の技術向上、さらには畜産業の商業化による経済的な後押しだと考えられます。特に1960年代中ごろから1970年代にかけての案件は、パナマ国内での牛肉需要の高まりだけでなく、国際市場への輸出拡大もその背景にありました。
しかしながら、1980年代以降は成長が鈍化し、その後1990年代には一部で減少傾向が見られました。この時期は、二つの要因が影響していると考えられます。一つは農業における土地利用の変化です。都市化の進展や輸出目的の他作物(例:バナナやコーヒーなど)の栽培に農地が使われ始めたことが、畜産規模の縮小を招きました。二つ目は、経済的不安定や国際市場での競争激化が畜産業の収益性に影響を及ぼしたことです。
2000年代に入ると、牛飼養数は再び上昇傾向を示し、2008年から2013年には約160万頭から170万頭の間を推移しました。この回復期の背景としては、政府の農業振興政策、国際牛肉需要の回復、牛育成技術のさらなる向上が考えられます。しかし、2014年以降は再び減少に転じ、2022年時点ではこの回復期以前の水準にまで減少しています。
畜産業の課題にはいくつかの要素が挙げられます。一つは、気候変動による影響です。特に乾季が長引くことによる牧草地への影響や、局地的な洪水が牛の飼育環境に悪影響を与えています。また、牛肉消費の多様化やベジタリアニズムの拡大といった社会的な要因も、国内外からの牛肉需要に変化をもたらしています。さらに、パナマ運河を有する地政学的な位置から輸出活動における競争相手が増加し、業界が高い競争力を要求される状況に直面しています。
将来を見据えるといくつかの取り組みが重要となります。まず、政府による気候変動に対応した政策の導入が急務です。たとえば、牧草地の管理方法の改善や、自給的飼料生産への補助金制度の導入が考えられます。また、畜産業の競争力を高めるための技術研修や国際市場でのブランド構築も有用でしょう。さらには、隣国との協力体制を強化し、地域規模での畜産発展戦略を策定することが重要です。
結論として、パナマの畜産業には過去の成功とその後の課題から学ぶべき多くの点が存在します。持続可能な手法を取り入れ、気候や市場の変化に強い産業基盤を構築することが、今後の発展の鍵となります。国際機関や隣国との連携を通じた戦略的な動きが、安定した牛飼養数の確保と産業全体の活性化に寄与すると期待されます。