国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、オマーンの牛の飼養頭数は1961年の60,000頭から一貫して増加しており、2022年には430,389頭に達しました。この増加は、オマーンの農業政策や経済発展、そして食料や乳製品の需要拡大によるものと考えられます。1970年代、1990年代、および2000年代以降にかけて、特に急激な増加が見られたことが特徴的です。一方で、特定の時期には一時的な減少や停滞も観察され、その背景には自然災害や経済環境の変化が影響を与えていると推測されます。
オマーンの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 430,389 |
2021年 | 421,950 |
2020年 | 412,948 |
2019年 | 404,851 |
2018年 | 396,913 |
2017年 | 389,130 |
2016年 | 381,500 |
2015年 | 374,020 |
2014年 | 366,680 |
2013年 | 359,500 |
2012年 | 346,000 |
2011年 | 339,500 |
2010年 | 332,780 |
2009年 | 325,500 |
2008年 | 319,900 |
2007年 | 313,580 |
2006年 | 307,580 |
2005年 | 301,550 |
2004年 | 333,000 |
2003年 | 326,200 |
2002年 | 319,800 |
2001年 | 313,500 |
2000年 | 299,000 |
1999年 | 285,000 |
1998年 | 271,000 |
1997年 | 258,000 |
1996年 | 246,000 |
1995年 | 235,000 |
1994年 | 223,000 |
1993年 | 200,000 |
1992年 | 180,000 |
1991年 | 158,000 |
1990年 | 137,000 |
1989年 | 136,000 |
1988年 | 135,500 |
1987年 | 135,000 |
1986年 | 130,000 |
1985年 | 130,000 |
1984年 | 126,000 |
1983年 | 120,000 |
1982年 | 125,886 |
1981年 | 146,468 |
1980年 | 140,589 |
1979年 | 135,182 |
1978年 | 129,775 |
1977年 | 135,000 |
1976年 | 133,800 |
1975年 | 125,900 |
1974年 | 117,500 |
1973年 | 97,900 |
1972年 | 81,600 |
1971年 | 68,000 |
1970年 | 69,000 |
1969年 | 68,000 |
1968年 | 66,500 |
1967年 | 65,000 |
1966年 | 63,500 |
1965年 | 63,000 |
1964年 | 62,000 |
1963年 | 61,000 |
1962年 | 60,500 |
1961年 | 60,000 |
オマーンにおける牛飼養頭数の長期的な推移を見ると、全体として着実な成長を遂げていることが分かります。1961年には60,000頭だった飼養数は、2022年までの61年間で約7倍以上に拡大し、オマーンの農業部門の発展を象徴する重要な指標となっています。この増加傾向の背景には、食肉および乳製品の需要増加や農業技術の向上があると考えられます。また、経済の安定化とともに農牧業分野に対する政府の支援策が重要な役割を果たしてきました。
特に注目すべきは、一部の時代における急激な増加です。1972年から1975年にかけての急上昇(81,600頭から125,900頭まで)は、オマーンにおける農業振興施策や地域経済の発展が原因と考えられます。この時期はまた、ペトロダラーによるインフラ整備の影響が他分野にも及んだ時期に重なります。さらに、1990年代初頭から中盤にかけての増加(1991年の158,000頭から1995年の235,000頭)や2000年以降の持続的な増加も、オマーン経済の安定性や近代化が背景にあると考えられます。
その一方で、いくつかの時期には飼養数に停滞や下落が見られました。たとえば、1982年から1983年にかけての減少(125,886頭から120,000頭)や、2005年ごろの一時的な減少(333,000頭から301,550頭)は、国内外の経済的要因、自然災害、または疫病の影響が指摘される可能性があります。特に2005年前後には、干ばつや水資源不足が農業全般に与えた影響が大きかったと考えられます。
他国の状況と比較すると、オマーンの牛飼養数は日本や韓国といった農業の規模が限定的な国と似たような水準にとどまります。一方で、インドやアメリカのような世界最大の畜産国とは大きく異なり、これらの国々では牛飼養頭数が数千万頭から数億頭規模になることを考えると、オマーンは小規模ながら持続可能性を重視した牧畜を推進していると言えます。
しかし、オマーンが直面している課題も無視できません。一度目立ったのは水資源の不足です。牛は水を大量に消費する動物であり、この地域は限られた降雨量と気候変動による乾燥化の影響を受けやすい場所です。このため、牧場での持続可能な水利用技術の導入や効率的な水管理が急務です。また近年では、地政学的リスクや輸入飼料価格の変動も、畜産業界全体にとって懸念材料となっています。
さらに、地域の気候変動リスクが家畜の健康や飼養効率に与える影響も深刻です。猛暑や干ばつ、さらには新たな疫病の発生は、すでに世界各地で畜産業を脅かしています。これらを踏まえると、オマーンは自給自足型の飼料作物栽培を奨励し、地域的な協力による疫病監視体制を強化する必要があります。また、家畜の飼養過程で発生する温室効果ガス排出を削減することも、国際社会からの要請に合致した政策課題となるでしょう。
今後、オマーンが牛飼養数の増加を持続可能な形で推進していくためには、効率的な水利用技術、国際的な協力を通じた疫病対策、そして環境負荷の軽減を目指した畜産政策を一層強化する必要があります。また、市場の需要に対応するための乳製品加工設備の近代化や、輸出を視野に入れた高品質な牛肉や乳製品の生産にも注力すべきでしょう。地域間の協力と、農業インフラの整備が今後の鍵を握ることでしょう。