国連食糧農業機関(FAO)が更新した最新のデータによると、モンゴルの牛飼養数は1961年の約190万頭から2022年には約551万頭へ着実に増加しています。この期間中、経済的・気候的影響による減少期も見られましたが、特に1990年代後半以降は一貫して顕著な増加傾向を示しました。近年では、過去最高水準の牛飼養数を記録しています。
モンゴルの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 5,512,839 |
2021年 | 5,022,225 |
2020年 | 4,732,010 |
2019年 | 4,753,192 |
2018年 | 4,380,879 |
2017年 | 4,388,455 |
2016年 | 4,080,936 |
2015年 | 3,780,402 |
2014年 | 3,413,851 |
2013年 | 2,909,456 |
2012年 | 2,584,621 |
2011年 | 2,339,700 |
2010年 | 2,175,999 |
2009年 | 2,599,300 |
2008年 | 2,503,400 |
2007年 | 2,425,800 |
2006年 | 2,167,900 |
2005年 | 1,963,600 |
2004年 | 1,792,800 |
2003年 | 2,053,700 |
2002年 | 2,069,600 |
2001年 | 3,097,600 |
2000年 | 3,824,700 |
1999年 | 3,725,800 |
1998年 | 3,612,800 |
1997年 | 3,476,300 |
1996年 | 3,317,000 |
1995年 | 3,005,200 |
1994年 | 2,730,500 |
1993年 | 2,819,000 |
1992年 | 2,822,000 |
1991年 | 2,848,700 |
1990年 | 2,692,700 |
1989年 | 2,541,300 |
1988年 | 2,525,900 |
1987年 | 2,479,600 |
1986年 | 2,408,100 |
1985年 | 2,373,900 |
1984年 | 2,373,900 |
1983年 | 2,395,500 |
1982年 | 2,376,300 |
1981年 | 2,397,100 |
1980年 | 2,477,000 |
1979年 | 2,482,000 |
1978年 | 2,388,000 |
1977年 | 2,417,000 |
1976年 | 2,427,000 |
1975年 | 2,364,500 |
1974年 | 2,234,600 |
1973年 | 2,189,400 |
1972年 | 2,176,100 |
1971年 | 2,107,800 |
1970年 | 1,991,000 |
1969年 | 1,979,000 |
1968年 | 2,031,000 |
1967年 | 2,074,000 |
1966年 | 2,093,000 |
1965年 | 1,982,000 |
1964年 | 1,856,000 |
1963年 | 1,702,000 |
1962年 | 1,637,000 |
1961年 | 1,905,000 |
モンゴルはその広大な草原と遊牧文化を誇り、畜産業が経済と生活の柱となっています。FAOのデータは、1961年から2022年までのモンゴルの牛飼養数を詳細に記録しています。1960年代から1980年代にかけては、年間200万頭台で推移していましたが、1990年代に入り急激な増加を見せました。この大規模な成長は、政策の自由化や新市場の開拓、牧畜の近代化の影響によるものと考えられます。
一方で、2001年および2002年には飼養数が激減し、それまでの増加傾向が一時的に逆転しています。この減少の背景には、厳冬(ゾド)や経済的混乱が影響したとされています。特に厳しい自然環境や気候リスクが、しばしば遊牧民の生活や畜産に大きな打撃を与えます。この後、2005年以降の回復期に入り、牧畜業の再建が進み、以降の2桁成長が見られる年もあるなど、顕著な増加基調を続けています。2022年には、統計開始以来最高の約551万頭に達しました。
経済の観点では、この増加はモンゴルの輸出に寄与し、特に乳製品や革製品の生産が拡大しています。しかしながら、増加する飼養数に伴い、新たな課題も浮かび上がっています。一つは、過放牧による土地の劣化問題です。これは、増加する牛の負担が草地の再生能力を上回ることで、生態系を損なうリスクを意味します。乾燥気候が支配的なモンゴルでは、持続可能な牧畜経営が不可欠です。
また、モンゴルにおける牛の増加が地政学的な側面にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、近隣中国との貿易関係強化が進む中、モンゴル牛を用いた肉製品の輸出が活性化していますが、これが他国の畜産業と競争関係にあるため、輸出依存のバランスを慎重に見極める必要があります。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による物流の停滞や、近年の気候変動、そして紛争リスクを含む地政学的問題が将来の畜産業に与える影響は無視できません。牧畜による経済成長を維持するためには、自然災害や外部リスクに対応できる制度設計が重要です。
結論として、モンゴルの牛飼養数の著しい増加は国民の経済力向上や食料安全保障の一環として讃えられるべきですが、課題解決のための具体的な行動も求められます。未来に向けた対策として、以下の点が挙げられます。まず第一に、持続可能な牧畜管理のためにAIやドローンなどの先端技術を活用し、草地のモニタリングと効率的な放牧を促進することです。第二に、遊牧民への教育や金融支援を通じて、自然災害に対する防災インフラを整備するべきです。そして第三に、近隣諸国や国際機関との協力体制を構築し、持続可能な肉類や乳製品の輸出戦略を推進することが重要です。これらの取り組みを通じて、地域経済や環境保護が調和する「モンゴルの牧畜業モデル」の確立が期待されます。