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モーリタニアの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによると、モーリタニアの牛飼養数は1960年代に2,500,000頭近くのピークを迎えましたが、その後1970年代に大幅に減少しました。特に、1974年には記録的な低水準となる1,115,000頭まで減少しました。その後、1990年代以降は緩やかな上昇が見られ、2022年には1,945,413頭となっています。近年、飼養数は安定的に推移しているものの、過去のピークを取り戻していません。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 1,968,393
1.18% ↑
2022年 1,945,413
-1.32% ↓
2021年 1,971,436
1.17% ↑
2020年 1,948,604
0.84% ↑
2019年 1,932,367
2.76% ↑
2018年 1,880,390
0.36% ↑
2017年 1,873,677
-4.06% ↓
2016年 1,953,000
5.62% ↑
2015年 1,849,000
-0.05% ↓
2014年 1,850,000
4.31% ↑
2013年 1,773,543
1.4% ↑
2012年 1,749,076
1.41% ↑
2011年 1,724,797
1.39% ↑
2010年 1,701,112
0.12% ↑
2009年 1,699,000
19.56% ↑
2008年 1,421,000
1.72% ↑
2007年 1,397,000
-17.82% ↓
2006年 1,700,000
23.01% ↑
2005年 1,382,000
0.95% ↑
2004年 1,369,000
-14.44% ↓
2003年 1,600,000
2.32% ↑
2002年 1,563,665
-0.1% ↓
2001年 1,565,178
3% ↑
2000年 1,519,590
3% ↑
1999年 1,475,330
5.83% ↑
1998年 1,394,000
3.03% ↑
1997年 1,353,000
20.59% ↑
1996年 1,122,000
0.99% ↑
1995年 1,111,000
1% ↑
1994年 1,100,000
-8.33% ↓
1993年 1,200,000 -
1992年 1,200,000
-14.29% ↓
1991年 1,400,000
3.7% ↑
1990年 1,350,000
3.85% ↑
1989年 1,300,000
3.17% ↑
1988年 1,260,000
3.28% ↑
1987年 1,220,000
1.67% ↑
1986年 1,200,000 -
1985年 1,200,000
9.09% ↑
1984年 1,100,000
-8.33% ↓
1983年 1,200,000
-20% ↓
1982年 1,500,000
7.37% ↑
1981年 1,397,000
16.71% ↑
1980年 1,197,000
0.34% ↑
1979年 1,193,000
5.95% ↑
1978年 1,126,000
-5.54% ↓
1977年 1,192,000
4.01% ↑
1976年 1,146,000
3.9% ↑
1975年 1,103,000
-1.08% ↓
1974年 1,115,000
-25.67% ↓
1973年 1,500,000
-3.23% ↓
1972年 1,550,000
-16.22% ↓
1971年 1,850,000
2.78% ↑
1970年 1,800,000
-6.25% ↓
1969年 1,920,000
-23.2% ↓
1968年 2,500,000
2.46% ↑
1967年 2,440,000
2.09% ↑
1966年 2,390,000
2.14% ↑
1965年 2,340,000
2.18% ↑
1964年 2,290,000
2.23% ↑
1963年 2,240,000
1.82% ↑
1962年 2,200,000
2.33% ↑
1961年 2,150,000 -

モーリタニアにおける牛飼養数の変動を俯瞰すると、いくつかの特徴的な傾向が浮き彫りになります。まず、1960年代の増加期、1970年代から1980年代にかけての急激な減少期、1990年代以降の緩やかな回復期に分けることができます。この変化には、気候条件の悪化、社会的・経済的状況、さらには地政学的要因が深く関係しています。

1960年代では牛飼養数が継続的に増加し、砂漠に近い地域の牧畜業が順調に拡大していました。モーリタニアはこの時期、牧畜を含む農業依存の経済構造を持っており、牛は重要な資産であり生計の基盤となっていました。しかし、1970年代に入り、サヘル地域を襲った深刻な干ばつ(いわゆる「サヘル飢饉」)がこの動向を一変させました。この干ばつは土地の砂漠化をさらに進行させ、国内の牧草地は急激に減少し、多くの牧畜民が生計を維持できなくなりました。1974年の牛飼養数が1,115,000頭と過去最低値を記録したことは、この干ばつが飼養業に与えた壊滅的な影響を象徴しています。

1990年代以降、飼養数は緩やかな回復を見せましたが、1960年代のピークを取り戻すには至っていません。この時期の回復は主に国際的な支援により実現した家畜管理の改善や、地域農村の開発政策によるものと考えられます。FAOやその他の国際機関の協力の下、水資源や放牧地の効率的な利用技術が導入されました。それでもなお、現在でもモーリタニアの牧畜業は砂漠化や干ばつの影響を受けやすく、特に気候変動が進む中で先行きが不透明な状況です。

さらに、地政学的視点から見ると、同国が位置するサヘル地域では、紛争の影響が牧畜業に及ぶ可能性が懸念されています。これにより、牧畜業者が放牧地を安全に利用できず、生計が脅かされるケースも指摘されています。安定した地域社会の構築が急務とされています。

モーリタニアの牛飼養数増加には課題がいくつかあります。一つは気候変動への適応策です。近年、砂漠化が進む中、持続可能な放牧技術や水資源管理がさらに重要になります。例えば、草地再生プロジェクトの推進や、地域住民が主導する土地復元活動を進めることが効果的です。また、家畜用教育プログラムを充実させ、畜産の効率化と病気の予防策強化も欠かせません。

もう一つの課題は、経済的支援の持続性と規模の拡大です。複数の国際機関と協働し、農村を中心にした投資を引き続き優先すべきです。さらに、日本や欧州諸国、中国などからの技術支援や資金提供を活用し、新しい牧畜モデルを構築することも検討に値します。農村住民の生活向上を目指した包括的なアプローチが牛飼養数の安定化に寄与すると考えられます。

結論として、モーリタニアが持続可能な牧畜業の未来を実現するためには、気候変動への対応を中心とした多岐にわたる政策と支援が必要です。地域住民の生活基盤としての役割を考えると、牛の飼養数は単なる数値の動向ではなく、同国の経済的・社会的・環境的バランスの鏡としての役割を担っています。これを実現するためには、国内外の連携や地域社会の活性化が不可欠です。