国際連合食糧農業機関(FAO)が示したデータによると、マダガスカルの牛飼養数は1961年の約800万頭から2022年にはおよそ890万頭となり、歴史的な増減を経た結果、全体的にはやや減少傾向にあります。特に2001年や2018年には数値が急激に低下したタイミングが確認されますが、その背景には社会的・経済的要因や気候変動が影響している可能性があります。一方で、2019年以降は微増する動きも見られ、安定的な回復の兆しとともに持続可能な管理策の必要性が浮き彫りになっています。
マダガスカルの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 8,916,001 |
2021年 | 8,838,476 |
2020年 | 8,556,770 |
2019年 | 8,700,000 |
2018年 | 8,605,900 |
2017年 | 10,322,680 |
2016年 | 10,301,490 |
2015年 | 10,280,300 |
2014年 | 10,198,800 |
2013年 | 10,030,000 |
2012年 | 10,037,600 |
2011年 | 9,958,000 |
2010年 | 9,881,130 |
2009年 | 9,805,000 |
2008年 | 9,730,000 |
2007年 | 9,647,000 |
2006年 | 9,573,290 |
2005年 | 9,500,139 |
2004年 | 8,105,000 |
2003年 | 8,020,450 |
2002年 | 7,877,075 |
2001年 | 8,800,000 |
2000年 | 10,364,000 |
1999年 | 10,353,000 |
1998年 | 10,342,000 |
1997年 | 10,331,000 |
1996年 | 10,320,340 |
1995年 | 10,309,000 |
1994年 | 10,298,000 |
1993年 | 10,287,000 |
1992年 | 10,276,000 |
1991年 | 10,265,300 |
1990年 | 10,254,000 |
1989年 | 10,243,000 |
1988年 | 10,232,000 |
1987年 | 10,220,000 |
1986年 | 10,207,000 |
1985年 | 10,194,000 |
1984年 | 10,363,000 |
1983年 | 10,322,000 |
1982年 | 10,281,000 |
1981年 | 10,241,000 |
1980年 | 10,201,000 |
1979年 | 10,000,000 |
1978年 | 10,150,000 |
1977年 | 9,128,000 |
1976年 | 8,886,000 |
1975年 | 8,811,000 |
1974年 | 8,700,000 |
1973年 | 8,500,000 |
1972年 | 8,250,000 |
1971年 | 8,043,914 |
1970年 | 8,781,709 |
1969年 | 9,400,000 |
1968年 | 9,780,000 |
1967年 | 9,707,000 |
1966年 | 9,630,000 |
1965年 | 8,800,000 |
1964年 | 8,500,000 |
1963年 | 8,500,000 |
1962年 | 8,500,000 |
1961年 | 8,000,000 |
FAOが発表するマダガスカルの牛飼養数のデータを分析すると、半世紀以上にわたる動向から同国の農業や食糧生産の重要な位置づけが見えてきます。1961年から1980年代にかけて、牛の飼養数は概ね増加傾向にあり、1978年には1,015万頭に到達しました。このような増加は農業の拡大や牛が労働力および経済資産として不可欠だったことを反映しています。しかし、1980年代後半以降は成長の鈍化が見られ、2000年代には減少傾向が顕著になります。
1990年代後半の安定期を経て、2001年や2002年には飼養数が急減しています。これは、同時期のマダガスカルにおける政治的混乱や自然災害の影響、あるいは家畜伝染病の発生などが原因として考えられます。同国では、牛が貴重な資源とされる反面、インフラの不足や効果的な衛生管理の欠如が生産性の向上を阻む要因となっている可能性があります。さらに2018年の急落は、干ばつや農村地域の貧困率の高さが影響したとも推測されます。こうした課題が家畜数の増減に直結していて、中長期的な改善策が求められています。
また、マダガスカルは気候変動の影響を強く受けやすい地域であり、特に乾季が長引き地域農業に打撃を与えています。この要因により、牛が必要な飼料の供給に支障が出る結果、家畜数が減少するという負のスパイラルが懸念されています。さらに地政学的に不安定な状況にあることも、農業活動全般の不安定化に拍車をかける一因となっています。
一方で、2019年以降はわずかながら回復の兆しが見えており、2022年にはおよそ891万頭が確認されています。この動きは、農業における持続可能な取り組みや農村地域での教育普及が奏功した可能性を示唆しています。しかし、同時に、社会経済的な課題を解決しなければさらなる成長は見込めない状況です。例えば、日本、中国、アメリカでは、家畜の効率的な管理や衛生状態の向上を図るための技術導入が進められており、マダガスカルにおいても同様のモデルを参考にすることが求められるでしょう。
今後の課題としては、牛飼養数の安定化と持続可能な増加を目指すために、いくつかの具体的な政策が必要です。まず、家畜伝染病を防ぐために全国的なワクチン普及と衛生管理体制の整備が急務です。また、持続可能な農業実践を支援するために国際協力を強化することが効果的であり、日本のODA(政府開発援助)のような枠組みを活用することが一例に挙げられます。さらに、気候変動が牛の飼料供給や水資源に影響を及ぼすため、農村インフラ開発や気候適応型農業システムの導入も大きな要素となるでしょう。
結論として、マダガスカルの牛飼養数推移は増減を伴いながら、同国の農業や社会経済状況に深く関係していることが確認されます。2030年以降に向けて、持続可能性を支持する農業および家畜管理の構築が同国の農業発展において重要な舵取りとなりそうです。この実現には、国内外の連携を基盤とした長期的な視点での政策実施が求められると言えるでしょう。