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クウェートの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関による2024年7月更新のデータによると、クウェートの牛飼養数は1961年の4,000頭から徐々に増加し、1982年には25,000頭に達しました。しかし1991年には著しく減少して再び4,000頭にまで落ち込みました。その後、顕著な復興を遂げ、2000年代には安定した増加傾向が見られたものの、2011年以降は再び振動的な動きを繰り返しています。2022年の時点では32,665頭となっており、増減を繰り返しつつも一定の高い水準を維持しています。この長期間のデータは、クウェートの地政学的背景や経済的要因、さらには農業政策における特有の課題を反映しています。

年度 飼養数(頭)
2022年 32,665
2021年 31,768
2020年 31,480
2019年 34,746
2018年 29,077
2017年 30,630
2016年 24,246
2015年 29,263
2014年 27,310
2013年 25,112
2012年 25,775
2011年 28,745
2010年 35,705
2009年 35,822
2008年 32,931
2007年 32,674
2006年 31,529
2005年 27,359
2004年 28,220
2003年 27,444
2002年 24,969
2001年 20,331
2000年 20,555
1999年 19,980
1998年 18,481
1997年 21,023
1996年 19,476
1995年 19,879
1994年 14,820
1993年 11,128
1992年 6,256
1991年 4,000
1990年 21,280
1989年 20,419
1988年 24,389
1987年 27,834
1986年 23,374
1985年 23,085
1984年 19,963
1983年 24,000
1982年 25,000
1981年 20,000
1980年 16,158
1979年 13,956
1978年 11,950
1977年 9,863
1976年 9,000
1975年 8,435
1974年 7,369
1973年 5,970
1972年 5,344
1971年 4,977
1970年 5,940
1969年 4,941
1968年 4,600
1967年 4,500
1966年 4,400
1965年 4,300
1964年 4,200
1963年 4,100
1962年 4,000
1961年 4,000

クウェートの牛飼養数の推移データを見ると、半世紀以上にわたる経済や地域状況の変化が鮮明に反映されています。1961年の4,000頭という数値は、厳しい気候条件や飼料の不足といった環境的要因の影響が強かった当時のクウェート畜産業の基盤の脆弱さを示しています。その後、石油収入に基づく経済成長やインフラ整備の進展に伴い、1970年代から1980年代初頭にかけては持続的な増加を遂げ、1982年には25,000頭に達しました。この時期は国内の農業関連支援政策が強化されたと考えられます。

一方で、1991年に牛飼養数が急落して再び4,000頭に逆戻りした背景には、湾岸戦争の影響が大きく関与しています。この紛争により農業インフラや貿易経路が破壊され、特に飼料の輸入が大打撃を受けました。ただしその後は、復興政策により急速に回復がみられ、2000年代には再び高い水準に戻るまで成長を遂げました。

2010年代以降はほぼ3万頭前後で推移しているものの、2011年以降の一時的な減少(25,775頭)や、コロナ禍の影響を受けた2020年の31,480頭への減少など、柔軟な対応を必要とする課題が表面化しています。COVID-19が世界中の農業生産や物流に影響を与え、生産コストの上昇や供給不足が影響を与えた可能性が高いと言えるでしょう。

近隣諸国との比較では、クウェートは一般的に牛飼養数が限られていることが特徴的です。これは自然環境の制限(乾燥した気候や水資源の不足)が要因と考えられます。それに対し、日本やフランスなどの温帯地域の国々では、牛飼養数は相対的に高い水準にあり、また環境負担の軽減や食料供給確保との調和を目指した高度な技術が活用されています。

クウェートが直面する課題としては、まず効率的な飼料調達の仕組みが挙げられます。輸入依存の高い飼料供給体制は、地政学的なリスクや災害時には脆弱性を露呈する可能性が高くなります。2つ目に、水不足問題への対策が重要です。牛の飼養には多量の水が必要であり、この課題には脱塩水技術の向上や画期的な省水型農業技術の活用が期待されます。

さらに、クウェート政府には、国内畜産業の持続可能な発展を支援するため、包括的な政策の策定が求められます。たとえば、牛を効率的に育てるための農業技術の支援や、病気予防のための健全な飼養環境作りなどが含まれるでしょう。また、気候変動の影響を考慮した災害対応策や、ICT技術を活用したスマート農業の導入も積極的に推進すべきです。これにより、外部依存を減らし、地域的な競争力を高めることが期待されます。

結論として、クウェートの牛飼養数の長期的な変動は、地域的な地政学的リスクや経済変動、そして国内の農業政策の深化への必要性を象徴しています。今後、持続可能性を視野に入れた農業戦略の構築が必要であり、国際機関との協調や知識の共有も重要な一歩となるでしょう。これが最終的に、農業の自立性向上と食料安全保障の強化につながると考えます。