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クック諸島の牛飼養数推移(1961-2022)

クック諸島における牛の飼養数は1960年代にはおおむね増加傾向を見せていましたが、その後は減少と変動を繰り返し、特に2000年代以降は大幅に減少し、2022年には109頭と大きく縮小しました。この極端な減少は、経済、畜産構造、そして地理的特性まで多くの要因と関連していると考えられます。

年度 飼養数(頭)
2022年 109
2021年 113
2020年 117
2019年 119
2018年 123
2017年 124
2016年 125
2015年 121
2014年 130
2013年 130
2012年 130
2011年 130
2010年 130
2009年 125
2008年 125
2007年 125
2006年 120
2005年 120
2004年 120
2003年 135
2002年 140
2001年 160
2000年 180
1999年 200
1998年 169
1997年 158
1996年 120
1995年 150
1994年 200
1993年 220
1992年 150
1991年 250
1990年 250
1989年 246
1988年 246
1987年 240
1986年 229
1985年 230
1984年 225
1983年 220
1982年 215
1981年 210
1980年 205
1979年 200
1978年 270
1977年 270
1976年 500
1975年 300
1974年 270
1973年 180
1972年 180
1971年 159
1970年 190
1969年 180
1968年 170
1967年 159
1966年 250
1965年 250
1964年 240
1963年 230
1962年 220
1961年 210

国際連合食糧農業機関(FAO)による最新データをもとにクック諸島の牛飼養数の推移を見ると、1960年代から1970年代にかけては緩やかな増加が見られ、最高値に達した1976年には500頭におよぶまで成長しました。しかしこの後、大きな変動が始まり、1990年代後半から2000年代初頭にかけて顕著な減少が観測されています。2004年以降、飼養数は120頭前後で推移し、2010年代後半からさらに縮小し、2022年には109頭となっています。

このデータは、クック諸島の産業や環境における牛飼養の重要性の低下を示唆しています。その背景には、いくつかの要因があります。まず、クック諸島のような小規模の島嶼国においては、広大な放牧地が確保できないことが牛飼養産業の発展を妨げる一因となっています。人口増加と観光産業による都市化によって農地の利用可能面積が圧迫される一方、競争力の高い輸入牛肉製品の増加によって国内飼養の必要性も低下しています。

さらに、気候変動の影響も無視できません。クック諸島は、地理的に台風や干ばつなどの極端な気象事象の影響を受けやすい位置にあります。これが1990年代以降の牧草地環境の劣化や畜産のコスト増加を招き、飼養頭数の減少に拍車をかけた可能性が考えられます。地政学的リスクとしては、運送コストが高いため、牛飼養を含む一次産業よりも、観光やサービス業に重点を置く傾向が強まっていると言えるでしょう。

また、疫病のリスクや飼料の確保問題など、牛を飼育する上での課題も少なくありません。コロナ禍においては、物流の停滞や経済の縮小が地域の農業活動全般に打撃を与えたことも飼養数減少の一因です。

解決策として、クック諸島政府および国際機関が具体的に取り組むべき課題があります。まず、小規模農家が牛の飼養を続けられるよう、持続可能な畜産技術の普及や補助金の提供を行うことが重要です。また、牧草地をより効率的に利用するための技術導入が必要です。そして、地域内で需要を満たすための牛の飼養だけでなく、観光業と牛肉消費を結びつける新たなマーケティング戦略を構築することも一つの解決策と言えます。

さらに、地域協力を進めることも長期的視点で重要です。例えば、サモアやフィジーといった近隣の太平洋諸国との連携を深め、畜産分野の専門知識を共有し、リスクに対応できる生産体制を構築するべきです。国際機関の協力を得て災害リスクの軽減や持続可能な農業基盤の整備も進めることで、牛飼養産業の回復が期待されます。

最終的に、長らく続く牛の飼養数減少はクック諸島の農業政策が抱える課題の象徴とも言えます。この問題を解決するためには、短期的な施策だけでなく、観光や環境保全と密接に結びついた中長期的な視点が求められます。持続可能な発展を目指して国際的な協力の枠組みを構築し、柔軟かつ革新的な対応をとることが必要です。