国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年7月に更新されたデータによると、トルコの馬飼養数は1961年の1,312,300頭から2022年の74,359頭に大幅に減少しました。この約60年間で飼養数はおよそ94%減少しており、特に2000年以降の減少傾向が顕著です。本データは、トルコの畜産業における大きな変化を示しており、その背景には社会的、経済的、技術的な要因が複雑に絡んでいると考えられます。
トルコの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 74,359 |
2021年 | 83,718 |
2020年 | 90,007 |
2019年 | 102,467 |
2018年 | 108,076 |
2017年 | 120,040 |
2016年 | 122,704 |
2015年 | 131,480 |
2014年 | 136,209 |
2013年 | 141,422 |
2012年 | 151,230 |
2011年 | 154,702 |
2010年 | 166,753 |
2009年 | 179,855 |
2008年 | 188,640 |
2007年 | 204,352 |
2006年 | 207,808 |
2005年 | 212,414 |
2004年 | 227,399 |
2003年 | 249,000 |
2002年 | 271,000 |
2001年 | 271,000 |
2000年 | 309,000 |
1999年 | 330,000 |
1998年 | 345,000 |
1997年 | 391,000 |
1996年 | 415,000 |
1995年 | 437,000 |
1994年 | 450,000 |
1993年 | 483,000 |
1992年 | 496,000 |
1991年 | 513,000 |
1990年 | 545,000 |
1989年 | 557,000 |
1988年 | 590,000 |
1987年 | 600,000 |
1986年 | 604,000 |
1985年 | 623,000 |
1984年 | 703,000 |
1983年 | 744,000 |
1982年 | 772,000 |
1981年 | 794,000 |
1980年 | 807,000 |
1979年 | 812,000 |
1978年 | 843,000 |
1977年 | 853,000 |
1976年 | 871,000 |
1975年 | 878,000 |
1974年 | 936,000 |
1973年 | 962,000 |
1972年 | 1,027,000 |
1971年 | 1,049,000 |
1970年 | 1,110,000 |
1969年 | 1,151,000 |
1968年 | 1,183,000 |
1967年 | 1,204,000 |
1966年 | 1,199,000 |
1965年 | 1,209,600 |
1964年 | 1,170,770 |
1963年 | 1,238,500 |
1962年 | 1,305,000 |
1961年 | 1,312,300 |
トルコにおける馬飼養数の減少は、この60年間で顕著化した畜産業と社会構造の変化を象徴するデータとなっています。1960年代から1980年代にかけて、馬は農業作業や輸送手段として広く利用されていました。当時の飼養数は100万頭を超えており、農村部の暮らしを支える重要な存在でした。しかし1970年代以降、機械化とモータリゼーションの進展により、農業用トラクターや自動車が普及するにつれて、馬の需要は徐々に減少していきました。
特に2000年以降の急激な減少は経済的側面と都市化の進行によるものと考えられます。経済成長に伴うライフスタイルの変化により、農村部では機械化がさらに浸透し、馬の役割は大幅に縮小しました。同時に、都市部への人口集中が進むことで農業従事者が減少し、農業における馬の需要も一層低下しました。また、動物飼養にかかるコストや効率性の問題も馬の維持を難しくする要因の一つとなっています。
このような動向は世界的にも見られますが、トルコでは特に顕著であり、同様の工業化の進んだ国であるアメリカやドイツと比べても減少ペースは比較的速いと言えます。一方、中国やインドのように、地域によって依然として馬が重要な労力として利用されている国もあることから、各地域ごとの経済状況や文化的背景が飼養数に与える影響を示しています。
しかし、馬の飼養数減少には課題も伴っています。馬文化や伝統的な農耕方法の喪失といった文化遺産への影響です。トルコには馬に関する競馬などのスポーツ文化も存在しており、飼養数の減少がこうした産業にも影響を及ぼす可能性があります。また、馬産業に関わる雇用や関連ビジネス(例えば馬具の製造や観光業)も縮小する恐れがあります。
未来に向けては、馬を農業用や移動手段としてではなく、観光やスポーツ、伝統文化の維持といった新たな視点で活用する必要があります。たとえば、エコツーリズムを通じて馬を利用した観光プランを展開し、馬文化を保護・復興させる政策が考えられます。また、馬の保護・飼育基盤を強固にするために、地域の畜産業者へ補助金を付与するなどの取り組みも有効です。
トルコにおける馬飼養数の推移は、単なる減少の数字以上に、畜産業の近代化や地域社会の変化、さらにはグローバルな経済動向の影響を反映したものです。個体数が回復する可能性は低いものの、馬が伝統的・文化的価値を維持できるような新たな社会的役割を見出すことで、この動向を持続可能な形で活用する道筋を模索する必要があります。このような取り組みは、トルコ国内だけでなく、同様の課題を抱える地域においても参考となるでしょう。