国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ニジェールの馬飼養数は1961年の121,000頭から2022年の263,470頭に増加しています。この61年間で2倍以上に増加しており、特に1970年代から1980年代前半に急激な変動が見られます。一方で、干ばつやその他の要因により一時的に大幅な減少が起きた年もありました。このデータはニジェールの農業・牧畜経済や地域社会の変化を反映していると考えられます。
ニジェールの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 263,470 |
2021年 | 260,861 |
2020年 | 258,279 |
2019年 | 255,721 |
2018年 | 253,189 |
2017年 | 250,683 |
2016年 | 248,200 |
2015年 | 245,743 |
2014年 | 243,310 |
2013年 | 240,902 |
2012年 | 238,516 |
2011年 | 236,154 |
2010年 | 233,816 |
2009年 | 239,522 |
2008年 | 237,151 |
2007年 | 234,803 |
2006年 | 232,478 |
2005年 | 230,176 |
2004年 | 227,874 |
2003年 | 225,595 |
2002年 | 223,340 |
2001年 | 221,106 |
2000年 | 218,895 |
1999年 | 216,706 |
1998年 | 214,539 |
1997年 | 212,394 |
1996年 | 210,270 |
1995年 | 208,167 |
1994年 | 206,085 |
1993年 | 204,025 |
1992年 | 201,984 |
1991年 | 199,964 |
1990年 | 197,965 |
1989年 | 195,985 |
1988年 | 194,025 |
1987年 | 192,085 |
1986年 | 190,164 |
1985年 | 153,080 |
1984年 | 202,238 |
1983年 | 338,932 |
1982年 | 329,445 |
1981年 | 326,858 |
1980年 | 320,390 |
1979年 | 313,922 |
1978年 | 308,316 |
1977年 | 301,831 |
1976年 | 271,177 |
1975年 | 249,954 |
1974年 | 235,806 |
1973年 | 207,509 |
1972年 | 235,806 |
1971年 | 235,806 |
1970年 | 200,000 |
1969年 | 190,000 |
1968年 | 170,000 |
1967年 | 160,000 |
1966年 | 160,000 |
1965年 | 160,000 |
1964年 | 150,000 |
1963年 | 129,000 |
1962年 | 125,000 |
1961年 | 121,000 |
ニジェールはサハラ砂漠の南に位置し、国内の多くの地域が乾燥地帯または半乾燥地帯に属しています。そのため、家畜の飼養は経済的にも文化的にも重要な役割を果たしています。馬は移動手段や農業労働の支援、さらには社会的ステータスの象徴として、特に遊牧民や農村部の生活に不可欠なものです。FAOが発表したデータをもとに、ニジェールの馬飼養数の推移を分析すると、いくつかの重要なパターンと背景が浮かび上がります。
まず、1961年から1970年にかけて馬の飼養数は着実に増加し、200,000頭を超えました。しかし、1973年や1984年には大幅な減少が見られます。例えば、1984年には前年度の338,932頭から202,238頭へと約40%減少しました。これは西アフリカ全域を襲った深刻な干ばつと結びついており、栄養不足や飼料供給の減少によって多くの馬が死亡または飼育中止に追い込まれたと考えられます。その後、1990年代以降はやや安定した増加を続け、2022年には263,470頭に達しています。
また、馬の飼養数の推移には地政学的な背景も影響を与えています。ニジェールは地理的にマリやチャドなどの不安定な地域に隣接しており、時折その影響を受けることがあります。例えば、牧畜が重要な地域衝突や資源争奪に影響されることがあります。特に、家畜の移動や牧草地の利用を巡る紛争は、首都近郊や地域間で緊張を高める要因となっています。さらに、貧困率が高く、気候変動の影響を強く受けるニジェールでは、馬などの家畜を守るための資源や技術が十分に確保されていない状況です。
こうした背景を踏まえると、今後の課題としては、干ばつや疫病などの災害への備えが挙げられます。気候変動によって雨季の不安定性が増していることを考えると、馬の飼養を支えるためには、地下水を活用した安定した水供給や、栄養価の高い飼料の確保が重要です。また、地域ごとの衝突を抑えるためには、遊牧民や農民間での調停や資源利用の公平なルール作りが求められます。
さらに、国際的な支援も重要です。例えば、馬疫病の予防接種を無償提供する取り組みや、地域コミュニティにおける持続可能な牧草地管理プロジェクトが一案として挙げられます。このような政策に基づき、ニジェール国内外の協力を強化することが、飼養数の安定を助けるだけでなく、馬を中心とした地域の社会経済の向上にも寄与するでしょう。
結論として、ニジェールにおける馬飼養数の増加傾向は、地域社会が持つ潜在的な成長や経済的重要性を示しています。しかし、この傾向を持続可能な形で維持するには、環境的、経済的、社会的な課題に直面する必要があります。国や国際機関は、気候変動対応策や家畜保護に関する具体的な支援を強化し、牧畜と地域社会が共存・発展するための長期的な視野を持つことが求められます。