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モルドバ共和国の馬飼養数推移(1961年~2023年)

モルドバ共和国における馬の飼養数は、1992年から2003年まで増加傾向にあり、ピーク時には2003年に78,200頭を記録しました。しかし、それ以降は一貫して減少し、2022年には19,600頭まで大幅に減少しました。馬飼養数の推移からは、モルドバ農業の変遷や経済的・社会的要因、そして地政学的影響を読み取ることができます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 16,268
-17% ↓
2022年 19,600
-13.27% ↓
2021年 22,600
-13.14% ↓
2020年 26,020
-13.17% ↓
2019年 29,966
-10.76% ↓
2018年 33,579
-8.63% ↓
2017年 36,750
-6.79% ↓
2016年 39,429
-5.99% ↓
2015年 41,943
-6.83% ↓
2014年 45,020
-2.94% ↓
2013年 46,385
-6.54% ↓
2012年 49,633
-4.83% ↓
2011年 52,152
-4.16% ↓
2010年 54,413
-1.94% ↓
2009年 55,487
-4.93% ↓
2008年 58,363
-12.59% ↓
2007年 66,766
-3.43% ↓
2006年 69,134
-4.62% ↓
2005年 72,479
-6.41% ↓
2004年 77,441
-0.97% ↓
2003年 78,200
2.09% ↑
2002年 76,600
7.74% ↑
2001年 71,100
5.8% ↑
2000年 67,200
5% ↑
1999年 64,000
5.45% ↑
1998年 60,692
3.43% ↑
1997年 58,679
2.95% ↑
1996年 57,000
1.45% ↑
1995年 56,185
7.46% ↑
1994年 52,284
1.76% ↑
1993年 51,380
6.07% ↑
1992年 48,438 -

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、モルドバ共和国における馬の飼養数は過去30年間で著しい変化を見せています。1992年に48,438頭だった飼養数は、2003年に78,200頭へと増加し、それ以降急速に減少して2022年には19,600頭となりました。このような減少傾向は、モルドバの農業構造や社会的・経済的な背景の変化を反映していると考えられます。

まず、1992年から2003年にかけて飼養数が増加した要因として、農業分野での馬の利用が依然として重要な役割を果たしていたことが挙げられます。特に国土面積の小さいモルドバでは、馬が中小規模農家で農作業や輸送に利用されることが広く見られました。しかし、2003年以降の減少は、農業の機械化や都市化の進展、そして馬の必要性が低下したことが大きく影響していると推測されます。また、モルドバ経済の近代化に伴い、農業の方式が変化し、馬を使用する従来の方法から機械化農業へと移行してきたことも影響していると考えられます。

さらに、2003年以降の激しい減少は、モルドバが直面した経済的困難や人口減少とも関連しています。特に若年層の国外移出が増加し、農村地域で農業に従事する人々の数が減少したことが飼養数の減少に影響していると言えます。また、2014年以降続くロシアとウクライナによる地域紛争もモルドバに間接的な影響を及ぼし、地政学的リスクで内需が減退した側面があります。

一方、近隣諸国と比較した場合、ポーランドやウクライナなどでも農業機械化に向かう動きが見られ、馬飼養数が減少する傾向にありますが、モルドバほど急速な変化はみられません。このことから、モルドバ特有の社会・経済要因がこの推移に大きく寄与していることが分かります。

馬飼養数の減少は単なる数字の変化にとどまらず、農村文化や伝統的農業の衰退をも意味しています。これを放置すれば、農村の経済低下や文化の喪失といったさらなる影響を及ぼす可能性があります。この状況に対処するためには、地域農業における馬の役割を再定義し、馬を観光資源や文化伝統の一環として活用する取り組みが有効でしょう。たとえば、馬を利用したエコツーリズムの推進や伝統的農業技術の保存などが挙げられます。さらに、農村地域での雇用機会の創出やインフラの整備によって、若年労働力の流出を防ぐ取り組みも必要とされるでしょう。

結論として、モルドバにおける馬飼養数の推移は、この国の農業構造と社会的状況の変化を反映したものといえます。農業機械化や都市化の進展などがその背景にありますが、地域経済の多様化や文化資源の活用を通じて、この変化を逆転する可能性も存在します。国際機関や近隣諸国との連携を強化し、地域特有の課題に取り組むことで、持続可能な農村社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出せるでしょう。