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キルギスタンの馬飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、キルギスタンにおける馬の飼養数は1992年の320,500頭から始まり、2022年には533,979頭に増加しました。この約30年間で200,000頭以上の増加が見られ、特に2010年代からの増加傾向が顕著です。ただし、直近である2022年には微減していることが観察されます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 542,527
1.6% ↑
2022年 533,979
-2.43% ↓
2021年 547,253
1.41% ↑
2020年 539,644
3.26% ↑
2019年 522,611
4.8% ↑
2018年 498,684
3.61% ↑
2017年 481,329
3.01% ↑
2016年 467,249
3.92% ↑
2015年 449,614
3.84% ↑
2014年 432,972
6.28% ↑
2013年 407,381
2.15% ↑
2012年 398,796
2.53% ↑
2011年 388,971
2.78% ↑
2010年 378,448
1.47% ↑
2009年 372,951
4.9% ↑
2008年 355,533
2.3% ↑
2007年 347,526
0.68% ↑
2006年 345,174
-0.58% ↓
2005年 347,178
1.96% ↑
2004年 340,505
-5.6% ↓
2003年 360,700
1.78% ↑
2002年 354,400
0.14% ↑
2001年 353,900
1.17% ↑
2000年 349,800
4.36% ↑
1999年 335,200
3.01% ↑
1998年 325,400
3.6% ↑
1997年 314,100
1.95% ↑
1996年 308,100
3.04% ↑
1995年 299,000
-7.14% ↓
1994年 322,000
2.88% ↑
1993年 313,000
-2.34% ↓
1992年 320,500 -

キルギスタンの馬飼養数は、農業生産や食料供給、伝統文化だけでなく、国の経済活動においても重要な役割を果たしています。このデータは馬の数量の推移を示しており、地域の畜産業の変遷や経済的、社会的背景を分析する上で有用です。

データから、1990年代初頭に約32万頭前後で推移していた馬の飼養数は、1995年までに減少を見せました。これはソビエト連邦崩壊後の経済的混乱が影響したと考えられ、キルギスタン全体の畜産業が低迷した時期と合致しています。しかしながら、1998年以降、着実な増加傾向が観測されました。特に2010年代以降は年々増加幅が拡大し、2014年以降では毎年10,000頭以上の増加を記録するようになりました。この増加は、国内外における馬に対する需要の高まりや、政府の農業・畜産業支援策の効果と関連している可能性があります。

興味深い点として、2022年には547,253頭から533,979頭へと減少が見られます。この減少の背後には、パンデミックの影響による経済停滞や飼料価格の上昇、さらには地域的な気候変動による飼料供給の不安定さが考えられます。特に、馬の飼育は草地や農作物との競合が発生するため、自然環境の変化に敏感です。

馬はキルギスタンの文化的アイデンティティとも深く結びついています。遊牧文化を背景に、経済的価値だけでなく、社会的・伝統的な象徴として重要視されています。そのため、飼養数の増減は単なる農業経済の指標に留まらず、地域社会の安定性や生活基盤にも関わります。

重要な課題として、飼養数の増加に伴い、適切な政策対応が求められます。一つには、過放牧による草地の劣化を防ぐための土地管理と環境保全政策の実施です。また、品質の高い飼料や予防医療へのアクセスを確保するための畜産インフラの改善も必要です。さらに、気候変動リスクを考慮した適応策として、乾燥地向けの馬飼育技術の研究開発を促進することが望まれます。

国際的な比較の視点では、中央アジアの他国、特にカザフスタンやモンゴルも同様に馬の飼養を行っていますが、各国が直面する課題は異なります。たとえば、カザフスタンでは自給用だけでなく輸出市場も重要視されており、グローバルな需要に対応しています。一方、キルギスタンでは輸出よりも国内消費および伝統文化への寄与が主とされています。この点で、馬を地域経済や観光資源として活用する可能性も模索すべきです。

まとめると、キルギスタンの馬飼養数は長期的な増加傾向にあるものの、2022年の減少は一過性の現象とは言い切れず、中長期的な視点での課題対策が求められます。キルギスタン政府や国際機関は、気候変動対策、適切な放牧地管理、畜産技術向上に焦点を当てた政策を一層推進する必要があります。これにより、持続可能な畜産業の発展を図るとともに、地域経済と文化の調和を促進する道筋を確立できるでしょう。