国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アフガニスタンの馬飼養数は1960年代から2010年代にかけて大きく変動してきました。最も多い時期には40万頭以上の飼養数を記録しましたが、1990年代初頭から急減し、その後も不安定な推移が続いています。そして2020年代には飼養数が再び減少し、2022年にはわずか28,792頭となりました。このデータは、アフガニスタンの社会経済、地域紛争、環境変化などの複合的な要因が家畜飼育業に与えた影響を示しています。
アフガニスタンの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 28,792 |
2021年 | 28,607 |
2020年 | 58,098 |
2019年 | 105,265 |
2018年 | 175,825 |
2017年 | 175,000 |
2016年 | 171,200 |
2015年 | 173,000 |
2014年 | 171,000 |
2013年 | 171,000 |
2012年 | 178,000 |
2011年 | 181,000 |
2010年 | 197,000 |
2009年 | 177,000 |
2008年 | 162,000 |
2007年 | 145,000 |
2006年 | 146,000 |
2005年 | 149,000 |
2004年 | 155,000 |
2003年 | 144,000 |
2002年 | 141,000 |
2001年 | 162,000 |
2000年 | 162,000 |
1999年 | 104,000 |
1998年 | 100,000 |
1997年 | 100,000 |
1996年 | 100,000 |
1995年 | 100,000 |
1994年 | 100,000 |
1993年 | 200,000 |
1992年 | 300,000 |
1991年 | 350,000 |
1990年 | 362,000 |
1989年 | 374,000 |
1988年 | 387,000 |
1987年 | 400,000 |
1986年 | 410,000 |
1985年 | 410,000 |
1984年 | 410,000 |
1983年 | 405,000 |
1982年 | 405,000 |
1981年 | 405,000 |
1980年 | 405,000 |
1979年 | 400,000 |
1978年 | 410,000 |
1977年 | 400,000 |
1976年 | 370,000 |
1975年 | 370,000 |
1974年 | 370,000 |
1973年 | 370,000 |
1972年 | 369,000 |
1971年 | 415,000 |
1970年 | 415,000 |
1969年 | 369,000 |
1968年 | 372,000 |
1967年 | 278,000 |
1966年 | 278,000 |
1965年 | 320,000 |
1964年 | 291,000 |
1963年 | 263,265 |
1962年 | 245,850 |
1961年 | 276,841 |
アフガニスタンの馬飼養数は、FAOのデータが示すように、過去約60年で劇的な変化を遂げてきました。1960年代には20万〜30万頭規模で推移していましたが、1970年には人口増加や農業の発展に伴う需要増加から、飼養数が40万頭を超える水準にまで達しました。この時期、農業や運搬手段としての馬の需要が高まり、家畜飼養が村落生活の重要な一部を形成していたことが表れています。
しかしながら、1990年代に入ると状況は急変しました。特に1994年には飼養数が10万頭に激減しています。この急な減少の背景には、長期化したソ連侵攻やその後の内戦による政治的不安定が影響を及ぼしていると考えられます。紛争の激化により農村部の家畜管理が困難になり、馬などの大型家畜は他地域への移動や、戦争の影響で失われたケースが少なくないでしょう。また、1990年代後半には、大規模な干ばつも発生しており、これがさらに馬飼育に悪影響を及ぼした可能性があります。
その後、2000年代に入ると緩やかな回復を見せ、2000年には飼養数が再び16万頭を超えましたが、それでも1970年代後半に見られたピーク時の水準には遠く及びません。さらに近年の2020年以降には再び減少が顕著になり、2022年には3万頭を切る規模まで縮小しています。この縮小の要因としては、タリバン政権の再登場による政治的不安定、農業インフラの劣化、そして新型コロナウイルスの流行による経済的悪影響が重なったと考えられます。地域間の家畜取引の減少や、生産コストの増加がこれに拍車をかけたでしょう。
馬の飼養における大きなリスク要因としては、まず長期的な地域紛争が挙げられます。アフガニスタンでは農業経済が重要な基盤を成しており、馬のような家畜が輸送や農作業の中核を担っていますが、政情不安定が継続する限り、その価値を最大限に引き出すことが難しい状況です。加えて、地球温暖化の影響で水資源が減少し、農地や放牧地の利用可能性が制限されるという環境的な課題もあります。
このような背景を踏まえると、今後の課題としてまず挙げられるのは、家畜管理が可能な地域での安定的な環境づくりです。具体的には、農村部への資源配分を増やし、家畜の餌となる作物の生産性を向上させる取り組みが求められます。また、国際的な援助を活用して、家畜の疫病対策を含む獣医学的支援を強化することも重要です。さらに、地域間の農業協力を促進する枠組みを整えることで、紛争によるリスクを減らし、持続可能な家畜運営が可能となるでしょう。
結論として、アフガニスタンの馬飼養数はその長い歴史の中で国家の情勢や国際環境の影響を受けてきました。現時点の縮小傾向を克服するためには、国の政策と国際的な支援が調和する形で取り組むことが必要不可欠です。持続可能な農業および家畜管理の実現は、アフガニスタンの経済安定と食糧安全保障の鍵となるでしょう。