国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータから、カナダの馬飼養数の推移を分析すると、1961年の55万5000頭から2022年の約39万9554頭まで、長期的には大幅に減少しています。ただし、特に1980年代以降は一定の上昇と減少を繰り返しながら、近年は約40万頭で安定しています。この長期的な減少と最近の停滞の背景には、農業や運輸の機械化の進展、馬の利用目的の変化とそれに関連する経済要因が影響していると考えられます。
カナダの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 399,554 |
2021年 | 399,171 |
2020年 | 398,788 |
2019年 | 399,660 |
2018年 | 399,757 |
2017年 | 399,345 |
2016年 | 398,716 |
2015年 | 400,053 |
2014年 | 408,000 |
2013年 | 407,000 |
2012年 | 407,000 |
2011年 | 405,000 |
2010年 | 400,000 |
2009年 | 390,000 |
2008年 | 390,000 |
2007年 | 385,000 |
2006年 | 385,000 |
2005年 | 385,000 |
2004年 | 385,000 |
2003年 | 385,000 |
2002年 | 385,000 |
2001年 | 470,000 |
2000年 | 385,000 |
1999年 | 380,000 |
1998年 | 380,000 |
1997年 | 400,000 |
1996年 | 376,000 |
1995年 | 380,000 |
1994年 | 350,000 |
1993年 | 370,000 |
1992年 | 350,000 |
1991年 | 419,000 |
1990年 | 415,000 |
1989年 | 415,000 |
1988年 | 550,000 |
1987年 | 455,000 |
1986年 | 390,000 |
1985年 | 393,000 |
1984年 | 380,000 |
1983年 | 380,000 |
1982年 | 370,000 |
1981年 | 370,000 |
1980年 | 370,000 |
1979年 | 350,000 |
1978年 | 350,000 |
1977年 | 350,000 |
1976年 | 350,000 |
1975年 | 345,000 |
1974年 | 345,000 |
1973年 | 343,000 |
1972年 | 359,500 |
1971年 | 361,900 |
1970年 | 369,900 |
1969年 | 355,600 |
1968年 | 359,500 |
1967年 | 373,900 |
1966年 | 399,400 |
1965年 | 418,900 |
1964年 | 439,800 |
1963年 | 461,000 |
1962年 | 496,000 |
1961年 | 555,000 |
カナダにおける馬の飼養数の推移を見ると、1961年から1980年代までは減少傾向が顕著で、1961年の55万5000頭から1970年代後半には約35万頭前後にまで減少しています。この減少は主に産業構造の変化が起因しています。この時期、農業や輸送分野の機械化が進んだことにより、以前は労働力として農業や運搬に活用されていた馬の需要が大幅に減ったことが挙げられます。
1980年代に入ると一度約38万頭に達し安定した後、1987年には45万5000頭、1988年には55万頭に急増しています。この短期間の急増は、おそらく農業や馬関連のレクリエーション活動(乗馬、競馬など)の需要拡大や政策的な支援によるものと考えられます。しかし、その後1989年に41万5000頭へと急減しており、経済的な要因、例えば市場の飽和や景気の低迷が影響を与えた可能性があります。
1990年代から2000年代前半にかけては35万から40万頭の間で推移し、大きな変化は見られませんでしたが、2001年に再び47万頭と急増しました。この増加も乗馬の普及や、レクリエーション活動の需要増加、観光業の台頭が寄与したと思われます。その後、2010年以降は約40万頭前後で推移し、2015年以降ではほぼ横ばいの状況が続いています。
特に近年、2015年から2022年にかけての馬飼養数は約39万8000頭から約40万頭で安定しており、大きな伸びも減少も観測されていません。この安定傾向は、馬が趣味、競技、農業補助などの特定ニーズに特化して利用されている状態を示唆しています。しかしながら、馬の飼育費用の増加や、都市化に伴う農地の減少が、この安定した水準を維持するための課題として挙げられます。
カナダの馬飼養数推移を他国と比較すると、アメリカやヨーロッパ(イギリスやフランスを含む)などの先進国と同様に、馬の利用目的が農業や運搬からレクリエーションや趣味、競馬などに変化しており、これは世界的なトレンドにも一致します。また、人口が多く都市化の進んでいる中国やインドでは、馬の利用は主に伝統的なイベントや運搬で使用されるケースが多い一方、徐々に先進国に似た形に変わりつつあります。
カナダの課題としては、馬飼養産業を今後も発展させるために、馬飼育に関連する高騰する費用の支援や、農村部のインフラ整備の充実が不可欠です。また、馬関連の産業、例えば乗馬観光や馬育種技術を活用した国際的取引を視野に入れるべきです。地政学的リスクとしては、新型コロナウイルスのようなパンデミックや自然災害がレクリエーション需要や輸送に与える影響が懸念されます。
今後の具体的な対策として、政府と民間が連携し、馬飼養者への補助金や税制優遇政策の実施が重要となります。また、地域間協力を進め、例えば競馬産業や乗馬体験を中心に観光業を活性化させる枠組みを作ることが、持続可能な成長を支える鍵となります。加えて、世界的な気候変動に対応し、持続可能な飼養方法を採用することも考慮するべきです。
結論として、カナダの馬飼養数は長期的な減少から一旦落ち着きを見せていますが、今後も安定的な発展を促すためには、経済的な支援や政策面での工夫、さらに市場の多様化を目指す取り組みが必要です。このデータは、馬関連産業の現状と未来を考えるうえでの重要な指針となるでしょう。