Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、カナダのイチゴ生産量は1961年から2022年まで一貫した増減の波を見せています。1960年代から1980年代にかけて右肩上がりの増加傾向が見られた一方、2000年代以降は減少傾向が顕著で、近年では横ばいを続ける状況にあります。1985年には34,811トンを記録し過去最高となったものの、以降は25,000~30,000トン付近で推移しています。特に、2020年代に入ってからは20,000トン台前半にとどまることが増えており、生産量の減少が課題となっています。
カナダのイチゴ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 25,072 |
2021年 | 24,615 |
2020年 | 24,134 |
2019年 | 27,270 |
2018年 | 28,039 |
2017年 | 31,275 |
2016年 | 26,598 |
2015年 | 24,698 |
2014年 | 22,476 |
2013年 | 23,734 |
2012年 | 21,690 |
2011年 | 22,950 |
2010年 | 19,093 |
2009年 | 19,530 |
2008年 | 20,366 |
2007年 | 23,902 |
2006年 | 22,482 |
2005年 | 22,299 |
2004年 | 23,494 |
2003年 | 24,521 |
2002年 | 25,068 |
2001年 | 26,199 |
2000年 | 25,825 |
1999年 | 28,207 |
1998年 | 27,671 |
1997年 | 27,002 |
1996年 | 27,894 |
1995年 | 35,041 |
1994年 | 31,779 |
1993年 | 29,734 |
1992年 | 29,459 |
1991年 | 24,939 |
1990年 | 28,931 |
1989年 | 25,750 |
1988年 | 30,430 |
1987年 | 32,470 |
1986年 | 29,092 |
1985年 | 34,811 |
1984年 | 31,076 |
1983年 | 28,800 |
1982年 | 30,650 |
1981年 | 26,693 |
1980年 | 27,266 |
1979年 | 24,649 |
1978年 | 24,954 |
1977年 | 20,205 |
1976年 | 18,311 |
1975年 | 16,590 |
1974年 | 14,725 |
1973年 | 13,952 |
1972年 | 12,981 |
1971年 | 20,365 |
1970年 | 19,532 |
1969年 | 16,305 |
1968年 | 19,985 |
1967年 | 19,904 |
1966年 | 18,680 |
1965年 | 10,117 |
1964年 | 16,259 |
1963年 | 13,943 |
1962年 | 14,159 |
1961年 | 13,658 |
データを見ると、カナダのイチゴ生産量は1960年代の平均13,000~19,000トン程度から、1970年代後半には一時的に20,000トン台後半に達し、その後1980年代には30,000トン台に突入しました。この段階では生産技術の向上や新たな品種の導入により、生産性が飛躍的に上昇したことが寄与したと考えられます。また、気候条件が比較的安定しており、イチゴ栽培が拡大していた背景も好影響を及ぼしました。
しかしながら、1990年代以降、特に2000年代からは生産量の減少が目立つようになりました。この一因には、農村人口の減少とそれに伴う高齢化問題、さらには季節労働者の確保が困難になってきた状況が挙げられます。さらに、一部の地域では農地が都市化の影響で縮小し、可耕地面積の減少が生産効率に悪影響を与えるようになりました。また、2000年代後半からは地球温暖化などの気候変動によって、極端な気象条件がイチゴ生産に打撃を与えた可能性も考えられます。
2020年代の生産量を見ると、2020年には24,134トン、2021年は24,615トン、2022年には25,072トンと、比較的安定した推移を見せていますが、かつての1980年代から1990年代のピーク時に比べると明らかに低い水準にとどまっています。新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、労働力不足や物流の混乱が一定の影響を与えた可能性がありますが、それが直接的な原因というよりも、長期的な構造問題が根底にあると言えます。
カナダのイチゴ生産における課題解決に向けて、いくつかの対策が提案できます。まず、農業分野への新たなテクノロジー導入が鍵となります。具体例として、AIによるスマート農業技術の活用や自動化された収穫ロボットの導入などが挙げられます。これにより、人手不足の問題をある程度軽減することができます。また、気候変動の影響に対応するために、耐病性や耐暑性に優れた品種の開発と導入を進めることも重要です。
さらに、農地面積の確保に向けた政策支援は不可欠です。農業従事者への補助金提供や都市化が進む地域における農地保護策の強化により、生産用地の確保を図るべきです。また、若い世代の農業参入を促進し、高齢化の影響を緩和するには、農業教育プログラムの拡充や新規参入者向けの資金援助が効果的でしょう。加えて、多国間での農業協力や貿易促進を通じて、国際的な学びや資源の共有もこれからの持続可能な農業展開には重要です。
結論として、カナダのイチゴ生産事業は、これまでの積み重ねてきた技術と資源を基盤に、新しい時代の課題に合わせた現代技術と政策改革が求められる段階にあります。これらを適切に達成することで、生産量の安定化とさらなる成長が期待できるでしょう。将来的には、国内の需要を満たすだけでなく、輸出拡大による国際市場での競争力向上も目指していく必要があります。