最新のFAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、ボリビアのナシ生産量は、1961年に5,000トンに達していましたが、その後緩やかに減少し、特に2003年以降、年間2,000トンを下回る低水準となりました。ただし、近年は若干の回復傾向が見え、2023年には1,936トンとなっています。このデータはボリビアの農産業にいくつかの課題と可能性を示しています。
ボリビア (多民族国家)のナシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,936 |
-0.31% ↓
|
2022年 | 1,942 |
2.61% ↑
|
2021年 | 1,892 |
-1.02% ↓
|
2020年 | 1,912 |
-5.86% ↓
|
2019年 | 2,031 |
3.25% ↑
|
2018年 | 1,967 |
3.15% ↑
|
2017年 | 1,907 |
6.6% ↑
|
2016年 | 1,789 |
2.17% ↑
|
2015年 | 1,751 |
2.28% ↑
|
2014年 | 1,712 |
-13.82% ↓
|
2013年 | 1,987 |
1.09% ↑
|
2012年 | 1,965 |
2.48% ↑
|
2011年 | 1,918 |
1.27% ↑
|
2010年 | 1,894 |
0.83% ↑
|
2009年 | 1,878 |
4.86% ↑
|
2008年 | 1,791 |
0.9% ↑
|
2007年 | 1,775 |
1.02% ↑
|
2006年 | 1,757 |
1.09% ↑
|
2005年 | 1,738 |
1.16% ↑
|
2004年 | 1,718 |
1.06% ↑
|
2003年 | 1,700 |
-62.76% ↓
|
2002年 | 4,565 |
0.26% ↑
|
2001年 | 4,553 |
0.07% ↑
|
2000年 | 4,550 |
1.11% ↑
|
1999年 | 4,500 |
4.77% ↑
|
1998年 | 4,295 | - |
1997年 | 4,295 |
1.78% ↑
|
1996年 | 4,220 |
1.2% ↑
|
1995年 | 4,170 |
3.73% ↑
|
1994年 | 4,020 |
3.18% ↑
|
1993年 | 3,896 |
2.12% ↑
|
1992年 | 3,815 |
2.28% ↑
|
1991年 | 3,730 |
1.91% ↑
|
1990年 | 3,660 |
-0.81% ↓
|
1989年 | 3,690 |
-0.27% ↓
|
1988年 | 3,700 |
2.78% ↑
|
1987年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
1986年 | 3,500 |
32.38% ↑
|
1985年 | 2,644 |
5.76% ↑
|
1984年 | 2,500 |
2.88% ↑
|
1983年 | 2,430 |
-29.46% ↓
|
1982年 | 3,445 |
8.5% ↑
|
1981年 | 3,175 |
0.47% ↑
|
1980年 | 3,160 |
0.16% ↑
|
1979年 | 3,155 |
2.1% ↑
|
1978年 | 3,090 |
-40.29% ↓
|
1977年 | 5,175 | - |
1976年 | 5,175 |
-0.48% ↓
|
1975年 | 5,200 |
4% ↑
|
1974年 | 5,000 | - |
1973年 | 5,000 | - |
1972年 | 5,000 | - |
1971年 | 5,000 | - |
1970年 | 5,000 | - |
1969年 | 5,000 |
2.04% ↑
|
1968年 | 4,900 | - |
1967年 | 4,900 | - |
1966年 | 4,900 |
-2% ↓
|
1965年 | 5,000 | - |
1964年 | 5,000 | - |
1963年 | 5,000 | - |
1962年 | 5,000 | - |
1961年 | 5,000 | - |
ボリビアのナシ生産量推移をみると、1960年代から1970年代初頭までは比較的安定していましたが、1978年以降大幅な減少が目立っています。特に1983年には2,430トンまで急減し、その背景には気候変動や農業インフラの未整備、また国内の経済的困難があったと考えられます。1990年代にはある程度の成長が見られたものの、2003年に再び大幅な減産が起こり、以後、ナシ生産量は低水準での推移が続いています。
この動態を理解するにはいくつかの要因が関連していると考えられます。第一に、地政学的な背景として、ボリビアは安定した農業基盤を欠いています。高原地帯と熱帯地帯の気候多様性があるものの、インフラの整備や農業支援政策が他国に比べて遅れており、長期的な成果に結びついていません。また、頻発する自然災害も毎年の収穫に大きな影響を与えています。
さらに、2003年以降の低生産量は世界的な食料需給バランスの変化やボリビア国内の経済状態の悪化、新しい市場開拓の失敗が影響している可能性が考えられます。特に、近年の気候変動の影響は他の中南米諸国でも重要な課題となっており、ナシ生産に適した気象条件を維持するための政策が急務です。
一方で、2020年以降、コロナ禍による労働力不足や物流網の変化も影響を与えており、2020年からの数値を見ると若干の回復基調が見られるものの、依然安定とは言い難い状況です。また、2023年では1,936トンと最盛期の半分以下となっており、これに対する解決策が求められています。
ボリビアのナシ生産の低下は、単なる国内課題にとどまらず、同国の農産物輸出市場の活性化や近隣諸国との競争にも影響を与えています。例えば、中国、インドなどのアジア諸国では果物の生産が大きく拡大し、国際市場での競争力を強めています。一方で日本などの先進国は、安定した品質の果物需要が高まっており、これに応える国際市場開拓の機会がある一方で、その需要に応じた品質と数量を確保する必要があります。
今後、ボリビアが考慮すべき具体的対策としては、まず灌漑システムや冷蔵技術などの農業基盤の整備が挙げられます。また、気候変動による収穫量変動を抑えるため、ナシの栽培に適した地域や品種の研究開発を進める必要があります。さらに、近隣国や国際機関との協力を強化し、農業技術の共有を進めることで、持続可能な生産体制を築くのが理想的です。
地政学的観点からは、ナシを含む果物産業への投資が地域の雇用促進や計画的な農地利用に結びつく可能性があります。同時に、自然災害やコロナのような疫病流行に対応した危機管理体制を設けることも必要です。
結論として、ボリビアのナシ生産における主要課題は、経済的・環境的側面からの持続可能性の確立にあります。これには国内外の支援や協力体制強化が不可欠であり、その具体化が同国の農業発展に寄与するはずです。国際機関や先進国は、ボリビアのような新興国の農業発展を支援するための持続的なプログラム策定を進める必要があると言えるでしょう。