国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、1989年から2023年までのベリーズのプランテン(調理用バナナ)の生産量は、大きな変動を繰り返してきました。初期の数千トンから成長しつつも、生産量は1990年代後半で急落し、2000年に記録的な36,915トンを達成しました。しかしその後、一貫して減少傾向にある時期も見られ、近年では2022年の4,662トンにまで低下しました。2023年にはやや回復し、5,255トンまで増加しましたが、ピーク時と比較すると減少幅が顕著です。
ベリーズのプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,255 |
12.72% ↑
|
2022年 | 4,662 |
-22.85% ↓
|
2021年 | 6,043 |
-1.26% ↓
|
2020年 | 6,120 |
-6.72% ↓
|
2019年 | 6,561 |
-1.58% ↓
|
2018年 | 6,666 |
9.62% ↑
|
2017年 | 6,081 |
5.63% ↑
|
2016年 | 5,757 |
-0.02% ↓
|
2015年 | 5,758 |
41.61% ↑
|
2014年 | 4,066 |
37.88% ↑
|
2013年 | 2,949 |
-14.17% ↓
|
2012年 | 3,436 |
-6.81% ↓
|
2011年 | 3,687 |
16.75% ↑
|
2010年 | 3,158 |
-67.1% ↓
|
2009年 | 9,599 |
31.03% ↑
|
2008年 | 7,326 |
143.63% ↑
|
2007年 | 3,007 |
-80.11% ↓
|
2006年 | 15,118 |
77.78% ↑
|
2005年 | 8,504 |
-48.76% ↓
|
2004年 | 16,597 |
32.99% ↑
|
2003年 | 12,480 |
-30.5% ↓
|
2002年 | 17,958 |
-31.7% ↓
|
2001年 | 26,291 |
-28.78% ↓
|
2000年 | 36,915 |
437.1% ↑
|
1999年 | 6,873 |
115.52% ↑
|
1998年 | 3,189 |
6.05% ↑
|
1997年 | 3,007 |
-86.3% ↓
|
1996年 | 21,944 |
47.83% ↑
|
1995年 | 14,844 |
64.93% ↑
|
1994年 | 9,000 |
-13.81% ↓
|
1993年 | 10,442 |
26.17% ↑
|
1992年 | 8,276 |
118.42% ↑
|
1991年 | 3,789 |
188.14% ↑
|
1990年 | 1,315 |
-44.56% ↓
|
1989年 | 2,372 | - |
ベリーズのプランテン生産量推移を振り返ると、1989年から初期の成長を経て、2000年には36,915トンに達しました。この年は国内の農業技術の改善や市場政策が功を奏したと考えられます。ところが、その後の生産量は急激に低下し、徐々に不安定な動きが続いています。特に2007年以降は年間数千トン程度まで減少し、近年も安定した成長に戻る兆しが見られません。
この長期的な生産量の変動には、複数の要因が絡んでいると考えられます。一つは地政学的背景や気候変動の問題です。ベリーズは中米特有の気候で、台風や洪水といった自然災害の影響を受けやすい地域であり、これが農作物生産に打撃を与える傾向にあります。また、2000年代初めの生産量の急低下は、労働力不足、インフラ未整備、及び国際市場価格の変動などの複合要因と関連している可能性があります。
具体的な近年の動向として、2022年の4,662トンという低生産量が支払労賃の上昇、新型コロナウイルス感染症の影響による供給チェーンの破綻、農業従事者の減少などと関連していると考えられます。これらの問題が、農業全般の生産効率を低下させる形で影響を及ぼしています。
一方で2023年には、前年よりも生産量が593トン上昇しました。この回復の兆しは、気候条件の改善、地方政府や農業団体による支援策の導入、さらには輸出市場の回復といった要因が寄与したと推測されます。
今後の課題としては、まず気候変動への中長期的な対策が急務です。台風や乾季の影響を最小化するために、耐災害性を持つ農業インフラの建設や作物の品種改良が求められます。また、国内外の物流網の整備や市場開拓も重要です。特に、他国とのFTA(自由貿易協定)や地域連携を通じた輸出支援が財政基盤を強化するうえで有効でしょう。他にも、農業従事者の育成や国内向け教育キャンペーンを強化し、持続可能な農業の普及を進めるべきです。
他国との比較でみると、例えばコロンビアやフィリピンなどの主要プランテン生産国は、規模の経済を活かしながら収益性を高める努力を続けています。これらの国々の実践例に学び、ベリーズも国内の農業集約化や技術導入を図ることが大切です。また、中米地域全体での気候の影響を見据えた農業協力プログラムを共同で展開する動きも期待されます。
結論として、このデータはベリーズ農業の現状と抱える課題を如実に示しています。これを踏まえ、飢餓削減や農業振興といった国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿った方策を検討することがベリーズの農業政策の方向性として重要です。地域住民や国際社会を含めた包括的な取り組みが、持続可能なプランテン生産の未来を切り開く鍵を握っています。