Skip to main content

パナマのバナナ生産量推移(1961-2022)

パナマのバナナ生産量推移を見ると、1960年代から1980年代半ばにかけて一貫して生産量が増加し、1987年には約125万トンでピークを迎えました。その後、生産量は変動を繰り返しながらも1990年代には減少傾向が始まりました。2000年代以降は減少が顕著になり、2022年には約39.8万トンにまで落ち込んでいます。それでも2020年以降はやや回復傾向にありますが、過去のピーク時とは大きな差がある状況です。

年度 生産量(トン)
2022年 397,576
2021年 419,436
2020年 423,633
2019年 365,000
2018年 371,520
2017年 358,925
2016年 311,060
2015年 333,878
2014年 318,955
2013年 314,188
2012年 307,583
2011年 328,368
2010年 338,280
2009年 320,535
2008年 456,522
2007年 545,162
2006年 538,852
2005年 439,228
2004年 497,076
2003年 508,980
2002年 521,692
2001年 532,608
2000年 660,398
1999年 775,961
1998年 576,220
1997年 757,578
1996年 838,266
1995年 864,192
1994年 899,263
1993年 834,358
1992年 881,616
1991年 850,368
1990年 1,177,455
1989年 1,253,615
1988年 1,237,527
1987年 1,251,291
1986年 906,733
1985年 1,066,744
1984年 1,055,869
1983年 1,045,104
1982年 1,034,450
1981年 1,045,215
1980年 1,034,569
1979年 1,063,460
1978年 1,056,489
1977年 1,027,713
1976年 999,399
1975年 989,406
1974年 976,709
1973年 963,698
1972年 988,397
1971年 1,012,700
1970年 988,800
1969年 1,019,200
1968年 949,000
1967年 591,800
1966年 586,400
1965年 578,900
1964年 568,700
1963年 561,200
1962年 551,000
1961年 543,500

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、パナマのバナナ生産量は長年にわたる増減を経て、2022年時点で約397,576トンとなっています。この数字は1987年のピーク時(約1,251,291トン)と比べると大幅に減少していますが、2020年の回復期以来、やや持ち直している傾向もみられます。こうした動きから、パナマのバナナ生産は長期的な減少の背景に複数の要因が絡んでいると考えられます。

1960年代から1980年代半ばにかけて、パナマは徐々に生産量を増加させ、特に輸出用のバナナ生産で名を馳せていました。この時期、近隣のラテンアメリカ諸国、特にコスタリカやエクアドルと同様に、バナナはパナマの経済の中核を形成する輸出産品の一つでもありました。地理的にはカリブ海やアメリカ市場へのアクセスの良さが大きな強みとなり、国際市場での競争力を維持することができました。しかし、1980年代後半以降、バナナ生産量は不安定になり、特に1990年代には大幅な減少がみられるようになりました。この背景には、気候変動、土壌の劣化、バナナの主要品種に影響を与えた植物病害(例:パナマ病と呼ばれるフザリウム病)などの複雑な課題が存在しています。同時に、経済的不安や国内の政治不安が農業部門全体へ悪影響を及ぼしたことも指摘されています。

さらに地政学的背景としては、パナマ運河地帯が戦略的重要性を持つ一方で、度重なる経済的衝突や国際市場の供給過多による輸出価格の低迷が影響を与えました。特に1990年代以降、エクアドル、コロンビア、フィリピンなど他の主要生産国が競争力を強化したことが、パナマ産バナナの市場シェアを奪う結果となりました。

2000年以降の生産量の減少はバナナ生産業が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。生産コストの上昇、輸送インフラの老朽化、労働力不足などはこれに拍車をかけています。また、近年の気候変動によるハリケーンや洪水などの自然災害も、農作物全般に深刻なダメージを与え、多くの農家が持続的な農法を選択できない状態となっています。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、労働力の制約や物流の遅延が生産と輸出の両面で問題を引き起こしました。このような状況の中、2020年以降の若干の回復は、予防的な農業政策や輸出市場の開拓努力の成果と見ることができます。

今後の課題として、まずは生態系を守りつつ生産効率を高める農業技術の導入が必要不可欠です。具体的には、新たな病害に強いバナナ品種の研究育成が重要となります。また、農業従事者への教育プログラムやファンディングの提供を拡大し、持続可能な農法の普及を図ることが求められます。同時に、輸出市場で競争力を再び取り戻すためには、農産物の認証制度を利用して品質を保証し、他国との差別化を図ることが効果的です。地域間の協力枠組みを活用することで、ラテンアメリカ全体で市場の安定性を高める取り組みも考えられます。

さらに、世界的な視点から見ると、新たな地政学的リスクや気候変動の影響が予測される中で、国際機関からの支援を強化し、農業産品の多角化を進める政策転換も計画することが未来のリスク軽減に寄与します。