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スウェーデンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スウェーデンの大麦生産量は、1961年の約94万トンから1984年に約273万トンとピークを迎えた後、その後は徐々に減少傾向を示しています。近年では減少が顕著になり、2023年には約85万トンまで落ち込んでいます。歴史的な増加と減少の裏には需給バランスの変化や気候変動、農業政策の影響が関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 855,500
-43.33% ↓
2022年 1,509,500
42.35% ↑
2021年 1,060,400
-29.94% ↓
2020年 1,513,500
-2.13% ↓
2019年 1,546,500
41.31% ↑
2018年 1,094,400
-33.07% ↓
2017年 1,635,200
6.85% ↑
2016年 1,530,400
-8.49% ↓
2015年 1,672,300
6.23% ↑
2014年 1,574,200
-18.86% ↓
2013年 1,940,100
14.01% ↑
2012年 1,701,700
20.77% ↑
2011年 1,409,100
14.35% ↑
2010年 1,232,300
-26.69% ↓
2009年 1,680,900
0.56% ↑
2008年 1,671,600
16.16% ↑
2007年 1,439,000
29.57% ↑
2006年 1,110,600
-30.28% ↓
2005年 1,592,900
-5.85% ↓
2004年 1,691,900
10.7% ↑
2003年 1,528,400
-13.02% ↓
2002年 1,757,200
8.27% ↑
2001年 1,623,000
0.47% ↑
2000年 1,615,400
-12.8% ↓
1999年 1,852,500
9.82% ↑
1998年 1,686,900
-19.14% ↓
1997年 2,086,300
-1.28% ↓
1996年 2,113,400
17.89% ↑
1995年 1,792,700
7.94% ↑
1994年 1,660,900
-0.57% ↓
1993年 1,670,500
32.47% ↑
1992年 1,261,000
-34.84% ↓
1991年 1,935,300
-8.82% ↓
1990年 2,122,600
13.51% ↑
1989年 1,870,000
-0.46% ↓
1988年 1,878,700
-1.5% ↓
1987年 1,907,400
-18.03% ↓
1986年 2,327,000
0.77% ↑
1985年 2,309,170
-15.51% ↓
1984年 2,732,940
34.87% ↑
1983年 2,026,370
-14.79% ↓
1982年 2,378,190
-3% ↓
1981年 2,451,660
12.88% ↑
1980年 2,171,940
-7.4% ↓
1979年 2,345,530
-3.65% ↓
1978年 2,434,420
23.82% ↑
1977年 1,966,070
7.7% ↑
1976年 1,825,550
-4.06% ↓
1975年 1,902,830
-19.24% ↓
1974年 2,356,150
35.7% ↑
1973年 1,736,350
-6.14% ↓
1972年 1,849,950
-8.82% ↓
1971年 2,028,980
6.58% ↑
1970年 1,903,650
20.85% ↑
1969年 1,575,180
-11.33% ↓
1968年 1,776,400
13.58% ↑
1967年 1,563,950
11.1% ↑
1966年 1,407,700
-2.02% ↓
1965年 1,436,700
4.52% ↑
1964年 1,374,600
18.98% ↑
1963年 1,155,350
24.81% ↑
1962年 925,720
-2% ↓
1961年 944,580 -

スウェーデンの大麦生産量は、1960年代から1980年代にかけて増加を見せ、1984年には約273万トンというピークを迎えています。この時期の増加は、国内の農業技術の向上、育種技術の発展、および政策の支援によるものと推測されます。大麦はスウェーデンの寒冷な気候でも育成可能な作物であり、畜産用の飼料やビールの原料として重要です。スウェーデン国内の消費に加え、輸出も一定の割合を占めていたことが増加の背景として挙げられます。

しかし、1980年代中盤以降には生産量が停滞し、さらには下降傾向が顕著となりました。この要因として、気候変動による生育条件の変化、農家の高齢化と人手不足、政府の農業補助金の減少が挙げられます。また、1992年以降に約126万トンと大幅に減少したように、大麦生産は年ごとの天候に大きく依存していることが窺えます。この点については具体的に、干ばつや冷害などの異常気象の影響が指摘されています。

2023年の生産量は約85万トンとなり、過去最低レベルを記録しました。この値は大麦産業にとって危機的状況を意味するものであり、原因の一つとして近年の気候変動が挙げられます。特に2023年はヨーロッパ全域で極端な夏の乾燥が見られ、土壌水分の不足が作物の収量を大幅に減少させました。また、新型コロナウイルス感染症パンデミック後の経済不振や、ウクライナ戦争によるエネルギー価格や肥料供給の不均等化も農業コストの増加を引き起こし、生産量に影響した可能性があります。

さらに、スウェーデンの農業においてはEU諸国とも比較しながらその地位を確認する必要があります。例えば、ドイツやフランスなどのヨーロッパ主要国では大規模農業の効率化による生産性向上が進んでいる一方で、スウェーデンでは規模の縮小や集約化の遅れが目立っています。これにより、競争力の低下が課題となっています。

このような背景を踏まえ、スウェーデンは今後、大麦生産を持続可能な形で維持、拡大するための施策を講じる必要があります。一例として、気候変動の影響を軽減するために耐久性のある品種の開発や、灌漑施設を整備することが挙げられます。また、農業従事者の減少への対応として、新規就農者の育成や農業の魅力を高める政策が求められます。さらに、地域間協力を強化し、EU全体での農業技術の共有や気候対策の統一を進めることも効果的です。

地政学的背景についても考慮する必要があります。スウェーデンに限らず、ウクライナ戦争やその他地域の衝突が国際的な穀物市場に与える影響は大きく、それによる輸入価格の上昇は国内生産への圧力を増大させています。こうしたリスクを緩和するためには、国内生産を補強すると同時に、国際調達の多角化を図りつつ、国際機関と協力し市場の安定化を目指すことが重要です。

結論として、スウェーデンの大麦生産量は気候変動や経済的要因の影響を強く受けて短期的には厳しい状況にあるものの、持続可能な農業改革や国際協力によって回復の可能性があります。特に、政策による支援と長期的視点に立った対策の実施が鍵となります。スウェーデン政府や国際機関は、この課題に直面する機会を現状改革の足がかりとし、持続可能な農業のモデルケースを目指すべきです。