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コンゴ民主共和国の大麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に提供した最新データによると、コンゴ民主共和国(以下、DRコンゴ)の大麦生産量は、長期的に見て1960年代から2023年まで一貫した増減の傾向を示しています。1968年から1970年にかけて大きな生産量の伸びが見られた一方、その後は長期的な停滞が続き、2000年代初頭より安定した増加傾向に移行しました。2023年の生産量は994トンで、過去60年間と比べると依然として低い水準ですが、上昇傾向を維持しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 994
0.21% ↑
2022年 992
-0.52% ↓
2021年 997
0.42% ↑
2020年 993
0.73% ↑
2019年 985
-2.66% ↓
2018年 1,012
3.3% ↑
2017年 980
1.68% ↑
2016年 964
-2.38% ↓
2015年 987
3.48% ↑
2014年 954
0.43% ↑
2013年 950 -
2012年 950
10.66% ↑
2011年 858
7.31% ↑
2010年 800
6.67% ↑
2009年 750
19.05% ↑
2008年 630
-7.35% ↓
2007年 680
0.74% ↑
2006年 675
3.85% ↑
2005年 650
11.11% ↑
2004年 585
17% ↑
2003年 500 -
2002年 500 -
2001年 500 -
2000年 500
11.11% ↑
1999年 450
2.56% ↑
1998年 439
2.65% ↑
1997年 427
3.21% ↑
1996年 414
3.27% ↑
1995年 401
0.27% ↑
1994年 400
10.5% ↑
1993年 362
8.78% ↑
1992年 333
5.24% ↑
1991年 316
-14.3% ↓
1990年 369
5.43% ↑
1989年 350 -
1988年 350 -
1987年 350
16.67% ↑
1986年 300 -
1985年 300 -
1984年 300 -
1983年 300 -
1982年 300 -
1981年 300 -
1980年 300 -
1979年 300 -
1978年 300 -
1977年 300 -
1976年 300
-28.74% ↓
1975年 421
-44.16% ↓
1974年 754
-49.73% ↓
1973年 1,500
-25% ↓
1972年 2,000 -
1971年 2,000
1.27% ↑
1970年 1,975
-21.47% ↓
1969年 2,515
24.5% ↑
1968年 2,020
403.74% ↑
1967年 401
4.97% ↑
1966年 382
12.02% ↑
1965年 341
-3.13% ↓
1964年 352
-10.2% ↓
1963年 392
-10.71% ↓
1962年 439 -
1961年 439 -

DRコンゴにおける大麦生産量の推移を分析すると、まず注目すべきは、1960年代後半から1970年代前半における急激な増加とその後の急激な減少です。1968年から1970年にかけて生産量は2000トンを超えましたが、1974年以降その数字は急激に減少し、それ以降1980年代半ばまでは300トン台の低水準に落ち着いています。このような劇的な変動の背景には、当時の国内の経済政策の混乱、政治的不安定性、さらには農業技術の遅れが関与していた可能性が考えられます。

1980年代後半から1990年代にかけては、緩やかな増加が見られますが、この時期の伸びは限定的でした。この時期は国内の長期的な内戦や紛争が農業の発展を制約していたことが要因として推測されます。また、DRコンゴの農業は農家個々の小規模な営農に依存しており、近代的な灌漑や農業インフラの普及が進まなかったことも生産量が伸び切らなかった理由の一つとみられます。

2000年代に入ってから生産量は再び上昇に転じ、2023年には994トンに達しました。特に2010年代における顕著な増加は、地域ごとに展開された農業振興政策や国際援助の影響を示していると考えられます。この成果は、大麦という作物が食糧危機の対策の一環として改めて評価され始めたこと、さらには新しい農業技術の一部導入によってもたらされています。しかしながら、2020年代に入ってからは伸び率が鈍化していることも注目すべき傾向です。

コンゴ民主共和国の大麦生産に関連する課題として、インフラ整備の遅れ、高騰する肥料価格、気候変動の影響、土地利用の競合が挙げられます。特にDRコンゴは降雨量に依存する形態の伝統的農業が主体をなしているため、気候変動による干ばつや洪水などの自然災害が大きな課題です。また、国内の人口増加に伴い、主要作物(キャッサバやトウモロコシなど)への土地集中が進み、大麦の生産拡大が困難になるリスクも存在します。

また、地政学的な観点では、DRコンゴが内陸国であることから輸送コストが非常に高いという問題が生産性の向上を阻害しています。輸出入に必要なインフラが未整備であることから、国内で生産された大麦を活用した加工食品の製造や地元市場の発展が進みにくいという側面もあります。

これらの課題に対応するためには、いくつかの対策が提案されます。まず第一に、持続可能な灌漑技術や高品質の種子を導入することで、気候変動への適応力を高めるべきです。国際的な協力や農業投資を活用して農業インフラを整備することで、高付加価値な作物の育成や輸出の促進が期待できるでしょう。また、農家の教育と訓練プログラムを強化し、農村部での生計手段を拡充することが重要です。

結論として、DRコンゴの大麦生産量はここ数十年間で緩やかに回復しつつありますが、依然として数多くの課題を抱えています。この国の独特な地政学的リスクや自然環境の問題を考慮しながら、国内政策と国際援助の両輪で包括的なアプローチが求められます。今後、持続可能な農業の実現のために、研究開発・技術改善・国際協力など多面的な対策を講じることが急務と言えるでしょう。