国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、パラグアイのニンジン・カブ類の生産量は、1970年代には年間数千トンの規模で展開されていましたが、2000年前後を境に大幅に増加しました。しかし、近年では生産量が安定傾向にある一方で、2022年には再び大幅な減少が見られるなど、一貫性に欠ける動向が特徴的です。2023年には12,248トンに持ち直したものの、過去数十年の推移を分析すると、生産量の変動幅が大きいという課題が浮き彫りになっています。
パラグアイのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 12,248 |
45.39% ↑
|
2022年 | 8,424 |
-38.22% ↓
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2021年 | 13,635 |
-2.33% ↓
|
2020年 | 13,960 |
5.76% ↑
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2019年 | 13,200 |
-3.44% ↓
|
2018年 | 13,670 |
8.06% ↑
|
2017年 | 12,650 | - |
2016年 | 12,650 |
1.42% ↑
|
2015年 | 12,473 |
7.39% ↑
|
2014年 | 11,615 |
-0.62% ↓
|
2013年 | 11,688 | - |
2012年 | 11,688 | - |
2011年 | 11,688 |
0.07% ↑
|
2010年 | 11,680 |
1.94% ↑
|
2009年 | 11,458 |
52.71% ↑
|
2008年 | 7,503 |
-49.98% ↓
|
2007年 | 15,000 |
-38.35% ↓
|
2006年 | 24,330 |
14.23% ↑
|
2005年 | 21,300 |
6.59% ↑
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2004年 | 19,983 |
16.9% ↑
|
2003年 | 17,094 |
-40.43% ↓
|
2002年 | 28,697 |
30.41% ↑
|
2001年 | 22,005 |
-18.16% ↓
|
2000年 | 26,888 |
61.41% ↑
|
1999年 | 16,658 |
25.4% ↑
|
1998年 | 13,284 |
29.3% ↑
|
1997年 | 10,274 |
16.23% ↑
|
1996年 | 8,839 |
0.35% ↑
|
1995年 | 8,808 |
38.71% ↑
|
1994年 | 6,350 |
11.91% ↑
|
1993年 | 5,674 |
4.11% ↑
|
1992年 | 5,450 |
4.57% ↑
|
1991年 | 5,212 |
-16.78% ↓
|
1990年 | 6,263 |
-16.79% ↓
|
1989年 | 7,527 |
4.92% ↑
|
1988年 | 7,174 |
-7.11% ↓
|
1987年 | 7,723 |
36.26% ↑
|
1986年 | 5,668 |
-19.71% ↓
|
1985年 | 7,059 |
0.71% ↑
|
1984年 | 7,009 |
35.83% ↑
|
1983年 | 5,160 |
7.5% ↑
|
1982年 | 4,800 |
7.12% ↑
|
1981年 | 4,481 |
-6.65% ↓
|
1980年 | 4,800 |
6.67% ↑
|
1979年 | 4,500 |
4.65% ↑
|
1978年 | 4,300 |
7.5% ↑
|
1977年 | 4,000 |
5.26% ↑
|
1976年 | 3,800 |
8.57% ↑
|
1975年 | 3,500 |
16.67% ↑
|
1974年 | 3,000 |
7.14% ↑
|
1973年 | 2,800 |
12% ↑
|
1972年 | 2,500 |
25% ↑
|
1971年 | 2,000 | - |
パラグアイのニンジン・カブ類の生産量の推移を振り返ると、1971年の2,000トンから緩やかな増加が見られ、1970年代末にはおおむね4,000トン台を維持していました。この時期の基本的な増加は、国内の農業技術の改善や作付面積の拡大が背景にあると考えられます。当時の流れを基盤とした生産拡大は1980年代にさらに進み、1984年には7,000トンを超える水準に到達しました。しかし、その後は1980年代後半において6,000トン前後で不安定な動きを見せ、一時的な停滞期を迎えました。
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、大きな生産量の急増が見られます。特に1999年から2002年にかけての急激な上昇は、作物の需要増加や輸出拡大の可能性を示していると考えられます。この期間、2000年には26,888トンと記録的な量となり、パラグアイ農業にとっての黄金期が始まりました。しかし、その後、2003年から2008年にかけて再び減少に転じ、最小で約7,500トンの低水準にまで落ち込みを経験しています。この要因としては、気候変動による天候不順や市場価格の変動、農地利用の競合の影響が考えられます。
2010年代に入ると、生産量は11,000トン台を中心に安定しました。この安定化は、政策的な農業支援や灌漑技術の導入、輸出政策の再編によるものと推察されます。しかし2022年には突如として約8,400トンへ急落し、翌2023年には再び12,248トンに回復しています。この変動には、おそらく新型コロナウイルス感染症の影響、国際的な物流の混乱、さらには農業資材価格の高騰などが絡んでいる可能性があります。
このデータから浮かび上がる最大の課題は、生産量の変動幅の大きさです。急激な生産量の増減は、国内外のマーケットにおける安定供給に影響を及ぼしかねません。また、特定年度において生産量の急増が見られても、それが一時的なものであれば市場予測や計画的な輸出戦略が立てづらくなるため、農業経済の持続可能性にリスクを伴います。
解決策として、まずは気候リスクに対応した持続可能な農業技術の導入が求められます。具体的には、作付計画の長期的な見直し、高収量品種の普及、灌漑設備のアップグレードを進めるべきです。また、生産者の農業経営能力を向上させるための教育プログラムや、農産物貿易における新しい市場の開拓も重要です。さらに、気候変動対策に国際機関や地域協力を積極的に活用し、異常気象や災害時にも作物の安定供給を図る仕組みを構築すべきです。
地政学的には、南米内での農産物貿易協定や近隣国との輸出入の調整が、将来の競争環境を左右すると考えられます。特にブラジルやアルゼンチンといった農業大国との競争に備えるため、ニンジンやカブ類の付加価値化戦略を強化する意義は大きいでしょう。
パラグアイのニンジン・カブ類の生産量は、国内生産の安定だけでなく、国際的な農業市場における影響力を持つ可能性を秘めています。この潜在性を活かすには、安定化した生産システムの構築と、付加価値を高めた製品戦略の推進が不可欠です。国際機関や地域共同体、さらには民間企業も巻き込んだ包括的な取り組みが、今後の成長の鍵となるでしょう。