国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、北マケドニアにおけるヤギ飼養頭数は、2000年以降安定的な推移を見せていましたが、2007年から2008年にかけて急激に増加し、その後再び減少傾向を見せるなど、大きな変動を示しています。2022年には80,186頭が記録され、依然として変動が続いています。
北マケドニアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養頭数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 85,528 |
6.66% ↑
|
2022年 | 80,186 |
5.85% ↑
|
2021年 | 75,753 |
-20.27% ↓
|
2020年 | 95,008 |
8.48% ↑
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2019年 | 87,581 |
-25.43% ↓
|
2018年 | 117,447 |
9.29% ↑
|
2017年 | 107,466 |
5.7% ↑
|
2016年 | 101,669 |
15.45% ↑
|
2015年 | 88,064 |
8.26% ↑
|
2014年 | 81,345 |
8.42% ↑
|
2013年 | 75,028 |
18% ↑
|
2012年 | 63,585 |
-12.63% ↓
|
2011年 | 72,777 |
-3.87% ↓
|
2010年 | 75,708 |
-19.47% ↓
|
2009年 | 94,016 |
-29.32% ↓
|
2008年 | 133,017 |
5.19% ↑
|
2007年 | 126,452 |
98.89% ↑
|
2006年 | 63,579 |
2.23% ↑
|
2005年 | 62,190 |
0.31% ↑
|
2004年 | 62,000 | - |
2003年 | 62,000 | - |
2002年 | 62,000 |
-0.8% ↓
|
2001年 | 62,500 |
-3.1% ↓
|
2000年 | 64,500 | - |
北マケドニアのヤギ飼養頭数は2000年代初頭にはおおむね6万頭台で推移していましたが、2007年には突然126,452頭という劇的な増加が見られました。翌年の2008年にはさらに133,017頭に達し、ピークを迎えています。この急増の背景には、政府による農業政策の一環である、ヤギによる乳製品生産の奨励や輸出促進のための助成金が影響していたと考えられます。しかし、2009年以降急速に減少に転じ、10万頭以下に減少しました。近年では波動が見られるものの、2016年から2018年にかけて一時的な増加傾向が再び確認されています。
2022年現在では80,186頭が記録されていますが、これは2008年のピーク時から約4割減少した数字です。変動が続いている理由として、気候変動による飼育環境への影響や、若い世代の農業離れ、生産性を高めるための技術や知識へのアクセス不足が挙げられます。また、北マケドニアはEU加盟を目指しており、EU基準への適応に伴う規制の変更も、ヤギ飼育業界に影響を与えた可能性があります。
特に急激な減少が見られた2009年の94,016頭、ならびに2019年以降の減少傾向が示す通り、経済的な要素だけではなく、地政学的な要因も一因として考えられるでしょう。北マケドニア周辺ではバルカン半島の歴史的な影響もあり、農業政策が頻繁に変更されることが産業の安定性を損ねていると考えられます。また、地球規模のパンデミックである新型コロナウイルスも、2020年からの飼養頭数減少に少なからず影響を与えたと考えられます。市場流通の停滞、不確定要素による投資の鈍化が生産活動に大きな影響を及ぼしている可能性があります。
今後、北マケドニアのヤギ飼育業は複数の課題に直面する可能性が高いです。第一に、安定した気候変動対策が必要です。飼育可能な土地や餌資源を確保し、自然災害や気温変動の影響を最小限に抑えるための対策が不可欠です。第二に、農業従事者への教育やテクノロジー導入の支援が必要でしょう。特にヤギを活用した乳製品加工技術や市場流通を専門とするスキルを普及させるための施策が求められます。
また、地域衝突や地政学的リスクによる市場の変動が農業に影響を与えることも避けられません。国際協力の枠組みを活用し、農業政策を調整するための地域間の協力体制が重要です。たとえば、EU加盟実現のためのスタンダードに順応しつつ、国内生産業者の利益を守る政策作りが必要となります。同時に、若い世代を農業に惹きつける長期的な戦略も求められています。
結論として、北マケドニアのヤギ飼育業は過去20年で劇的な変動を経験してきましたが、政策、経済、気候変動、地政学的要因など、さまざまな背景の下で再び振興に向けた基盤を整備する必要があります。今後の安定的な成長には国際的な協力の枠組みを活用し、持続可能な農業支援と市場開拓を目指す努力が求められるでしょう。