国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公開した最新データによると、クウェートのヤギ飼養頭数は長い時間をかけて大きな変動を経験しています。1960年代から1970年代後半にかけては増加傾向を示し、1979年には307,239頭という大きなピークを迎えましたが、その後急激に減少し1981年以降10年間低迷しました。それから徐々に回復し、2010年代後半から再び増加傾向を見せています。2022年には223,114頭に到達し、過去の低迷期を克服した形となっています。
クウェートのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 223,114 |
2021年 | 219,757 |
2020年 | 214,260 |
2019年 | 235,324 |
2018年 | 209,686 |
2017年 | 197,768 |
2016年 | 172,259 |
2015年 | 156,543 |
2014年 | 153,391 |
2013年 | 150,495 |
2012年 | 137,441 |
2011年 | 151,716 |
2010年 | 178,703 |
2009年 | 181,611 |
2008年 | 171,218 |
2007年 | 160,951 |
2006年 | 140,966 |
2005年 | 138,428 |
2004年 | 141,662 |
2003年 | 193,559 |
2002年 | 146,747 |
2001年 | 168,173 |
2000年 | 191,928 |
1999年 | 159,036 |
1998年 | 129,754 |
1997年 | 123,191 |
1996年 | 96,097 |
1995年 | 68,987 |
1994年 | 41,911 |
1993年 | 34,072 |
1992年 | 13,992 |
1991年 | 3,000 |
1990年 | 39,923 |
1989年 | 44,715 |
1988年 | 37,680 |
1987年 | 35,489 |
1986年 | 21,828 |
1985年 | 18,259 |
1984年 | 18,117 |
1983年 | 12,415 |
1982年 | 15,749 |
1981年 | 100,000 |
1980年 | 273,314 |
1979年 | 307,239 |
1978年 | 151,234 |
1977年 | 97,036 |
1976年 | 90,000 |
1975年 | 85,991 |
1974年 | 81,342 |
1973年 | 76,924 |
1972年 | 73,718 |
1971年 | 68,579 |
1970年 | 67,424 |
1969年 | 69,000 |
1968年 | 60,000 |
1967年 | 57,000 |
1966年 | 55,000 |
1965年 | 52,000 |
1964年 | 50,000 |
1963年 | 47,000 |
1962年 | 45,000 |
1961年 | 45,000 |
クウェートのヤギ飼養頭数は、農業と牧畜が国の食料安全保障や経済活動にとって重要な役割を持つ中で、長期的な推移を示しています。1961年の45,000頭という初期値から、1979年には307,239頭と約7倍の増加を見せています。この時期の増加は、牧畜技術の向上や政府の支援、また豊富な石油収入を背景にした畜産業への投資が貢献したと考えられます。しかし、その後1980年代にかけて頭数は急激に減少し、1983年には12,415頭という劇的な低水準に至りました。この急減の背景には、経済的なリスクや地域的な紛争、例えば1980年代初頭のイラン・イラク戦争が影響している可能性が高いと推察されます。紛争による農業インフラへの被害や輸送ルートの混乱が畜産業へ大きな打撃を与えたと言えます。
1981年以降、特に1991年のわずか3,000頭という低谷を経て、ヤギ飼養頭数は再び徐々に回復を見せました。この低谷は、1990年に勃発した湾岸戦争による影響と一致します。この戦争は、牧畜業だけでなく全ての農業活動に多大な影響を及ぼし、家畜の頭数が著しく減少しました。しかし戦後、政府や国際機関による復興支援とインフラ整備が進められたことにより、1995年以降の回復が見られました。2000年代後半には200,000頭近くまで回復し、その後も上下の変動を伴いながらもゆるやかな増加傾向が継続しています。
2022年時点での飼養頭数は223,114頭に達し、安定と再成長の兆候が見られます。これは環境条件の改善、牧草地拡張政策、畜産技術の革新、さらには政府による安定的な食糧供給への支援政策などが寄与している結果と言えます。しかしながら今後もクウェートは、地政学的リスクや気候の変動による牧畜業への影響について考慮し続ける必要があります。
未来に向けた課題としては、第一に気候変動への適応策が挙げられます。クウェートは高温で乾燥した気候であり、これが牧草地の維持や水資源の確保に負の影響を与える可能性があります。これに対し、干ばつに強いヤギ品種の導入や、持続可能な水利用技術の普及が有望な対策の一部となり得ます。第二に、地域的な紛争や社会的な不安定さは依然としてリスクとして存在し、農業および牧畜インフラの強靭性を向上させる必要があります。例えば、輸送網や供給チェーンの多様化、また必要に応じて国際的な協力体制を構築することで、将来的なリスクの軽減が期待されます。
クウェートのヤギ飼養頭数の推移は、単なる動物統計にとどまらず、経済、社会、環境に影響される幅広い要素を映し出しています。今後、国際機関やクウェート自身が、地域特有の問題に即した対策を講じることで、ヤギ飼育が食料安全保障と持続可能な経済活動に寄与し続けることが期待されます。