FAO(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新した最新データによると、アイスランドのヤギの飼養頭数は、1961年の150頭から2022年の1,875頭へと著しく増加しています。特に2000年代以降、この増加傾向は顕著で、直近10年間(2012年から2022年)での成長率はほぼ2倍に達しています。このデータは、アイスランド国内でのヤギ飼育への関心の高まりや、農業政策、需要動向の変化を反映していると考えられます。
アイスランドのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 1,875 |
2021年 | 1,672 |
2020年 | 1,621 |
2019年 | 1,471 |
2018年 | 1,488 |
2017年 | 1,300 |
2016年 | 1,123 |
2015年 | 990 |
2014年 | 981 |
2013年 | 877 |
2012年 | 857 |
2011年 | 818 |
2010年 | 729 |
2009年 | 655 |
2008年 | 563 |
2007年 | 524 |
2006年 | 449 |
2005年 | 411 |
2004年 | 395 |
2003年 | 361 |
2002年 | 438 |
2001年 | 416 |
2000年 | 416 |
1999年 | 502 |
1998年 | 431 |
1997年 | 417 |
1996年 | 350 |
1995年 | 350 |
1994年 | 337 |
1993年 | 330 |
1992年 | 318 |
1991年 | 350 |
1990年 | 345 |
1989年 | 323 |
1988年 | 288 |
1987年 | 264 |
1986年 | 262 |
1985年 | 280 |
1984年 | 260 |
1983年 | 212 |
1982年 | 242 |
1981年 | 220 |
1980年 | 232 |
1979年 | 292 |
1978年 | 300 |
1977年 | 275 |
1976年 | 222 |
1975年 | 284 |
1974年 | 266 |
1973年 | 228 |
1972年 | 235 |
1971年 | 209 |
1970年 | 209 |
1969年 | 180 |
1968年 | 183 |
1967年 | 170 |
1966年 | 158 |
1965年 | 140 |
1964年 | 138 |
1963年 | 138 |
1962年 | 150 |
1961年 | 150 |
アイスランドのヤギ飼養頭数の推移は、農業の一分野としてのヤギ飼育の発展と、国の経済的調整を映し出しています。1961年から1980年代前半までは、おおむね200頭から300頭程度の水準で推移し、大きな変動は見られませんでした。この時期の安定は、ヤギ飼育が限られた規模で行われており、主に自家消費や小規模な市場供給に留まっていたことを示唆します。
しかし、1990年代に入ると、増加の兆候が顕著になり、2000年代以降は特に顕著な拡大が見られるようになりました。この大幅な増加にはいくつかの要因が考えられます。第一に、アイスランドの畜産業全般の基礎整備や、農業技術向上が進んだことで、飼育効率が向上したことが挙げられます。また、観光業の拡大による郷土料理や乳製品の需要増加も、ヤギ飼養が促進された要因と言えるでしょう。さらに近年では、環境意識の高まりによって、ヤギ肉やヤギ乳が他の肉類や乳製品の代替品として注目されるようになり、需要が拡大している可能性もあります。
とりわけ2010年代後半から2020年代にかけては、年間100頭以上のペースで飼養頭数が増加しています。例えば2015年には990頭だった飼養頭数が2022年には1,875頭と、7年間で倍増しています。この増加は、政策の支援やマーケットでのニーズの変化によるものと考えられます。同時に輸出市場の開拓を視野に入れた牧畜業界の戦略変更も、一定の影響を与えたと推察されます。
一方で、この急激な成長には課題も伴います。過剰な増産や飼養頭数の急拡大は、土地利用や飼料供給、生態系への負荷を増大させる可能性があります。とりわけアイスランドのように自然環境の繊細な国では、適切な資源管理が欠かせません。さらに、観光業に依存する部分が大きいアイスランド経済では、新型コロナウイルス感染症の影響に見られるように、需要の急激な変動に飼養頭数の調整が追いつかないリスクもあります。
このような背景から、将来的な対策として、いくつかの方向性が考えられます。第一に、持続可能な牧畜業を推進するために、飼養設備や飼料供給の改善を通じて、環境負荷を最小化する政策が必要です。特に、地元産の自然資源を活用したヤギ飼育モデルは、長期的な環境保護を支援しつつ生産性の向上を図る鍵となります。第二に、付加価値の高い製品開発や輸出市場の多様化を目指し、ヤギ乳製品や加工肉のブランド化に投資するべきです。第三に、地域間や農業従事者間の協力体制を強化し、予測されるフードロスや需要変動への対応能力を向上させることが求められます。
特に、アイスランドは輸出相手国としての欧州圏にアクセスしやすい地理的な強みを持っています。このことを活用しながら、付加価値製品の供給を進めることで、外貨収入の増加や地元経済のさらなる発展が期待できます。また、この取り組みは地域衝突や地政学的リスクを低減させ、食品供給の安定性を維持するための国際的取り組みにも寄与します。
総じて、アイスランドのヤギ飼養頭数の増加は、同国の農業発展や需要変化を示す好事例ですが、この成長を持続可能にするための工夫が不可欠です。国際機関や政府が連携して政策支援を進めることで、環境保護と経済成長を両立するヤギ飼育のモデルケースを構築することが可能と考えられます。