国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、マダガスカルのニンニク生産量は1961年には260トンだったものの、その後の数十年の間に増加と減少を繰り返しながら成長してきました。特に、2000年代初頭から急速に生産量が増加し、2010年には2,934トンに達しました。しかしその後、2023年には2,539トンとなり、2010年代のピークよりも減少傾向にあります。この推移は、国内外の経済条件、農業技術の発展、気候変動などの多角的な要因の影響を反映しています。
マダガスカルのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 2,539 |
-1.75% ↓
|
2022年 | 2,584 |
0.64% ↑
|
2021年 | 2,567 |
-0.49% ↓
|
2020年 | 2,580 |
-0.91% ↓
|
2019年 | 2,604 |
0.13% ↑
|
2018年 | 2,601 |
-0.53% ↓
|
2017年 | 2,614 |
-0.65% ↓
|
2016年 | 2,632 |
-6.97% ↓
|
2015年 | 2,829 |
12.42% ↑
|
2014年 | 2,516 |
-1.33% ↓
|
2013年 | 2,550 |
-1.92% ↓
|
2012年 | 2,600 |
-5.79% ↓
|
2011年 | 2,760 |
-5.94% ↓
|
2010年 | 2,934 |
11.59% ↑
|
2009年 | 2,629 |
10.35% ↑
|
2008年 | 2,383 |
1.18% ↑
|
2007年 | 2,355 |
12.8% ↑
|
2006年 | 2,088 |
14.35% ↑
|
2005年 | 1,826 |
1.31% ↑
|
2004年 | 1,802 |
4.44% ↑
|
2003年 | 1,725 |
21.54% ↑
|
2002年 | 1,420 |
39.85% ↑
|
2001年 | 1,015 |
23.8% ↑
|
2000年 | 820 |
-1.2% ↓
|
1999年 | 830 |
1.22% ↑
|
1998年 | 820 |
-1.2% ↓
|
1997年 | 830 |
1.22% ↑
|
1996年 | 820 |
1.23% ↑
|
1995年 | 810 |
1.25% ↑
|
1994年 | 800 |
-3.61% ↓
|
1993年 | 830 |
2.47% ↑
|
1992年 | 810 |
2.11% ↑
|
1991年 | 793 |
-0.84% ↓
|
1990年 | 800 |
1.27% ↑
|
1989年 | 790 |
1.28% ↑
|
1988年 | 780 |
1.3% ↑
|
1987年 | 770 |
2.67% ↑
|
1986年 | 750 | - |
1985年 | 750 |
1.35% ↑
|
1984年 | 740 |
12.12% ↑
|
1983年 | 660 |
13.79% ↑
|
1982年 | 580 |
11.32% ↑
|
1981年 | 521 |
13.26% ↑
|
1980年 | 460 |
3.37% ↑
|
1979年 | 445 |
3.01% ↑
|
1978年 | 432 |
-8.47% ↓
|
1977年 | 472 |
-8.35% ↓
|
1976年 | 515 |
90.74% ↑
|
1975年 | 270 |
-49.06% ↓
|
1974年 | 530 |
-29.33% ↓
|
1973年 | 750 |
56.25% ↑
|
1972年 | 480 |
4.35% ↑
|
1971年 | 460 |
4.55% ↑
|
1970年 | 440 |
4.76% ↑
|
1969年 | 420 |
5% ↑
|
1968年 | 400 |
5.26% ↑
|
1967年 | 380 |
5.56% ↑
|
1966年 | 360 |
5.88% ↑
|
1965年 | 340 |
6.25% ↑
|
1964年 | 320 |
6.67% ↑
|
1963年 | 300 |
7.14% ↑
|
1962年 | 280 |
7.69% ↑
|
1961年 | 260 | - |
マダガスカルのニンニク生産推移データは、国内農業の多くの歴史的、経済的そして環境的な要因を含んだ興味深い指標です。1961年に始まるデータでは、初期の生産量が260トンと比較的小規模で、以降1970年代まで毎年わずかな成長を遂げましたが、1973年に750トンと急増した後、1975年には270トンに大幅に減少するという不安定な動向が見られます。この急激な変動は、当時の農業政策や気候条件、可能性としてはインフラの整備状況の遅れ、また肥料や種子の供給体制の不備などが影響していた可能性があります。
その後1980年代から1990年代にかけて、生産量はおおむね増加傾向にあり、2000年には820トンに達しましたが、注目すべきは2000年代初頭の劇的な成長です。この時期は、2001年の1,015トンから2006年の2,088トン、さらには2010年のピークである2,934トンに至るまで、生産量が一貫して著しく上昇しました。この急成長は、国内の農業技術の進展や市場の拡大、そして政府や国際援助機関による農業開発支援が功を奏した結果と考えられます。また、特産品としてのニンニクに対する需要増加も背景の一因と見られます。
しかし、2010年以降の生産量は増減を示しつつも減少傾向が見られ、2023年時点では2,539トンと、ピーク時より400トン近く減少しています。この減少の一因として考えられるのは、気候変動による降雨パターンの変化や台風被害の増加、土壌の劣化、または新型コロナウイルス感染症の影響による国内外の貿易の停滞などです。ニンニクは高温で湿度の少ない条件を好む作物ですが、マダガスカルでは近年こうした条件が安定していないとの報告もあります。
2023年現在の生産量2,539トンは、依然として過去の水準に比べて高いものの、生産のピークと比べると減少しているため、国内農業の持続可能性に課題を残しています。気候変動の影響に対処するための灌漑施設の整備や、土壌の改良を目指した長期的な施策が求められます。また、農家への経済支援や技術支援を通じて新しい農業手法の導入を進めることが、さらなる生産性向上の鍵を握るでしょう。
加えて、地政学的リスクへの対応も軽視できません。国際市場での競争力強化を図るため、品質管理の基準を高めるとともに、物流網の安全性向上も重要です。他国、例えば中国やインドはニンニクの主要生産国として世界市場をリードしており、種類や価格競争からもマダガスカルのニンニクが埋もれる危険性があります。日本やヨーロッパ諸国と協力し、取引先を拡大する取り組みも進めるべきです。
結論として、マダガスカルが未来のニンニク生産を持続可能かつ競争力のあるものにするためには、国内の農業基盤の強化、環境への適応、国際市場への戦略的なアプローチの3つを柱とした政策を迅速に実行する必要があります。国際社会と連携しつつ、地域特有の気候条件や農業課題に対応する柔軟な施策が、今後の発展を左右するでしょう。