国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、トンガの鶏卵生産量は1961年の98トンから1970年代後半にかけて安定的に増加し、1988年にはピークとなる340トンに達しました。しかし、その後減少傾向を示し、2000年代前半には300~320トン程度で安定しました。さらに2014年以降は146トンに急減し、2023年までその状況が継続しています。近年の急激な減産傾向の背景や課題が浮き彫りとなっています。
トンガの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 146 | - |
2022年 | 146 | - |
2021年 | 146 | - |
2020年 | 146 | - |
2019年 | 146 | - |
2018年 | 146 |
0.33% ↑
|
2017年 | 146 |
0.01% ↑
|
2016年 | 146 |
0.27% ↑
|
2015年 | 146 |
-0.03% ↓
|
2014年 | 146 |
-56.96% ↓
|
2013年 | 338 |
0.39% ↑
|
2012年 | 337 |
0.5% ↑
|
2011年 | 335 |
-0.32% ↓
|
2010年 | 336 |
3.25% ↑
|
2009年 | 326 |
-2.77% ↓
|
2008年 | 335 |
-10.01% ↓
|
2007年 | 372 |
15.16% ↑
|
2006年 | 323 |
0.19% ↑
|
2005年 | 323 |
0.2% ↑
|
2004年 | 322 |
0.19% ↑
|
2003年 | 321 |
0.19% ↑
|
2002年 | 321 |
0.19% ↑
|
2001年 | 320 |
0.19% ↑
|
2000年 | 319 |
0.19% ↑
|
1999年 | 319 |
5.34% ↑
|
1998年 | 303 |
0.09% ↑
|
1997年 | 302 |
-4.61% ↓
|
1996年 | 317 |
5.02% ↑
|
1995年 | 302 |
7.1% ↑
|
1994年 | 282 |
-0.06% ↓
|
1993年 | 282 |
0.98% ↑
|
1992年 | 279 |
1.84% ↑
|
1991年 | 274 |
-2.06% ↓
|
1990年 | 280 |
-6.67% ↓
|
1989年 | 300 |
-11.76% ↓
|
1988年 | 340 |
2.41% ↑
|
1987年 | 332 |
3.75% ↑
|
1986年 | 320 |
2.56% ↑
|
1985年 | 312 |
8.33% ↑
|
1984年 | 288 |
2.86% ↑
|
1983年 | 280 |
6.06% ↑
|
1982年 | 264 |
6.45% ↑
|
1981年 | 248 |
10.71% ↑
|
1980年 | 224 |
3.7% ↑
|
1979年 | 216 |
8% ↑
|
1978年 | 200 |
8.7% ↑
|
1977年 | 184 |
6.98% ↑
|
1976年 | 172 |
7.5% ↑
|
1975年 | 160 |
14.29% ↑
|
1974年 | 140 |
16.67% ↑
|
1973年 | 120 | - |
1972年 | 120 |
-14.29% ↓
|
1971年 | 140 |
-12.5% ↓
|
1970年 | 160 |
2.56% ↑
|
1969年 | 156 |
2.63% ↑
|
1968年 | 152 |
2.7% ↑
|
1967年 | 148 |
2.78% ↑
|
1966年 | 144 |
2.86% ↑
|
1965年 | 140 |
7.69% ↑
|
1964年 | 130 |
8.33% ↑
|
1963年 | 120 |
9.09% ↑
|
1962年 | 110 |
12.24% ↑
|
1961年 | 98 | - |
トンガにおける鶏卵の生産動向データは、農業や食糧安全保障の観点から重要な指標であり、長期的な視点でその推移を見ると、地域経済や社会動態の変化が如実に反映されています。1960年代から1980年代にかけて生産量が一貫して増加し、1988年には340トンに達しました。この時期は、トンガ国内における自給自足の強化や鶏卵の需要拡大が影響していると考えられます。
一方で、1989年以降から生産量に減少傾向が見られ、1990年代には一部の年で280トンまで落ち込むこともありました。その後2000年代初頭には300トン付近で安定するものの、2007年に372トンと一時的な増産を見せた後、再び減少しはじめました。そして2014年から現時点での2023年にかけて146トンという低水準で推移しています。この変化は、地政学的リスクや災害への脆弱性、輸出環境の変化、または新型コロナウイルスによる影響を含む外的要因が重なった結果と推測されます。
トンガでは、農業や畜産業が国内総生産(GDP:ある国や地域が一定期間内に作り出した財やサービスの総額)の重要な要素を担っていますが、同時に輸入依存度が高い国でもあります。鶏卵の生産減少は、食料安全保障の観点からも大きな懸念を生じさせるでしょう。特に2014年以降の急減の背景には、サイクロンなどの自然災害、多発する地震や洪水、飼料供給の停滞などがあると考えられます。また、農業従事者の高齢化や人口全体の小規模性も、労働力の側面で影響を与えている可能性があります。
例えば同じ太平洋諸島のフィジーやサモアと比較すると、トンガの146トンという現状は非常に低い値と言えます。こうした差異は、国内市場の小規模性と経済環境が大きく関係しています。また、主要農産品の供給先や生産インフラへの依存度が大きい中国やアメリカ、日本などと違い、トンガには現地生産を支えるための設備投資が限定的であることも課題として挙げられます。
今後、トンガが鶏卵生産の回復と安定を目指すには、幾つかの具体的な対策が必要です。一つには効率的な農業技術の導入が挙げられます。政府および国際協力機構(JICAなど)の支援の下、持続可能な養鶏技術や自然災害に強い生産システムの構築が重要です。また、飼料供給の安定化のために地域間での物流協力を推進し、他国からの支援を引き出すことも効果的です。さらに地元住民に対する教育活動を強化し、養鶏技術と経営管理のスキルを向上させることが鍵でしょう。
結論として、トンガの鶏卵生産量の動態は、その背景にある複数の課題を深掘りしていく必要があることを示しています。自然災害の多発、農業従事者の減少、インフラの脆弱性といった問題に対処するためには、国際的な協力の枠組みと持続可能な地域農業の構築が不可欠です。結果として、トンガの食料安全保障の向上や地域経済の活性化に寄与するでしょう。