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カナダの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、カナダの鶏卵生産量は1961年の292,515トンから2023年の636,398トンまで着実に増加しています。この62年間で約2.2倍の成長を遂げました。近年では2010年代以降、特に顕著な伸びを示しており、2010年以降の年平均成長率は約3.6%と、過去50年と比較して急速な増加傾向にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 636,398
2% ↑
2022年 623,902
2.2% ↑
2021年 610,501
1.03% ↑
2020年 604,284
2.09% ↑
2019年 591,892
2.71% ↑
2018年 576,268
4.46% ↑
2017年 551,650
3.79% ↑
2016年 531,500
6.88% ↑
2015年 497,300
4.92% ↑
2014年 473,970
0.21% ↑
2013年 473,000
1.1% ↑
2012年 467,850
1.91% ↑
2011年 459,060
1.67% ↑
2010年 451,500
6.98% ↑
2009年 422,042
0.72% ↑
2008年 419,013
5.16% ↑
2007年 398,436
-0.29% ↓
2006年 399,612
0.09% ↑
2005年 399,260
5.88% ↑
2004年 377,070
-4.06% ↓
2003年 393,010
0.32% ↑
2002年 391,770
1.67% ↑
2001年 385,330
3.47% ↑
2000年 372,390
5.17% ↑
1999年 354,081
4.32% ↑
1998年 339,420
0.93% ↑
1997年 336,300
1.93% ↑
1996年 329,940
1.32% ↑
1995年 325,630
0.87% ↑
1994年 322,820
0.81% ↑
1993年 320,240
0.2% ↑
1992年 319,600
0.33% ↑
1991年 318,550
0.46% ↑
1990年 317,085
-1.2% ↓
1989年 320,950
-1.59% ↓
1988年 326,132
0.11% ↑
1987年 325,759
1.14% ↑
1986年 322,088
0.26% ↑
1985年 321,252
-1.13% ↓
1984年 324,911
-3.81% ↓
1983年 337,766
1.43% ↑
1982年 333,016
-1.29% ↓
1981年 337,379
0.26% ↑
1980年 336,496
5.58% ↑
1979年 318,715
1.19% ↑
1978年 314,967
0.56% ↑
1977年 313,222
1.25% ↑
1976年 309,341
-1.71% ↓
1975年 314,717
-1.58% ↓
1974年 319,775
0.61% ↑
1973年 317,844
-0.58% ↓
1972年 319,704
-4.04% ↓
1971年 333,167
-0.21% ↓
1970年 333,876
5.75% ↑
1969年 315,721
4.37% ↑
1968年 302,508
0.55% ↑
1967年 300,857
6.09% ↑
1966年 283,593
-3.37% ↓
1965年 293,491
-1.5% ↓
1964年 297,959
4.79% ↑
1963年 284,351
-3.74% ↓
1962年 295,407
0.99% ↑
1961年 292,515 -

カナダの鶏卵生産量は1961年以来一貫して増加しており、特に2010年以降においてその成長率が顕著に高まっています。この成長は単なる国内消費の増加にとどまらず、世界的な食料需要の拡大、健康志向の高まり、鶏卵の生産効率向上など、多くの要因が背景となっています。

1960年代から2000年にかけては、生産量の変動が大きく、安定的に成長しているとは言い難い状況でした。例えば、1963年には284,351トンまで減少した一方で、1970年代後半から1980年代には生産量は300,000トン台を維持し、緩やかな上昇が見られました。しかし、2000年を境に急激な増加傾向が始まり、2023年には636,398トンに達しています。この変化には、技術革新による生産効率化、飼料コスト削減、また政府の農業政策が大きく寄与していると考えられます。

世界的な視点で見ると、カナダの鶏卵生産量は主要先進国の中では中規模といえます。例えば、アメリカの生産量は2023年で約8,000,000トン、中国はさらに高い数値で20,000,000トンを超えています。日本(約2,600,000トン)や韓国(約936,000トン)と比較すると数値が低い一方で、カナダの人口比から考えると、国内需要を十分に賄える水準となっています。また、EU諸国と比較しても、カナダの規模は大きな輸出志向というよりも、国内市場への安定供給を重視していると見受けられます。

この増加の一因は、カナダ国内で鶏卵が持続可能なタンパク源としての注目が高まっていることにあります。鶏卵は牛や豚などの肉類と比較して飼料転換効率が良い(少ない飼料で高いタンパク質を生産可能)ため、環境負荷を低減する観点からも需要が高まっています。また、健康志向の消費者が増える中で、鶏卵が優れた栄養源として評価され、1人当たり消費量も拡大していることがデータにも反映されています。

このような背景に対し、今後の課題も浮かんできます。第一に、環境問題への対応が重要です。鶏卵生産量の増加に伴い、廃棄物処理や温室効果ガスの排出量が増加する可能性があります。畜産業における環境対策として、例えばメタン排出削減技術の導入や、リサイクル可能な資源の利用を促進するべきです。第二に、地政学的リスクへの耐性を強化する必要があります。特に飼料価格は国際市場の変動の影響を受けやすく、カナダ国内生産の拡大や輸入元の多様化が課題として挙げられます。第三には、感染症や疫病への備えです。鶏卵生産は鳥インフルエンザなどの感染リスクが伴うため、厳格な衛生管理が引き続き求められます。

将来的には、技術革新を活用した生産効率化や、消費者ニーズに対応した「有機卵」「放牧卵」など付加価値の高い製品の展開が生産者にとっての鍵となるでしょう。また、気候変動や国際市場の影響を緩和するために、カナダ国内での持続可能な飼料生産体制の構築や、省エネ型鶏舎の導入なども推進されるべきです。

最後に、新型コロナウイルスの影響にも触れる必要があります。パンデミックにより供給チェーンの弱点が露呈し、一時的に鶏卵の流通が滞った経験があります。そのため、危機時の供給安定性向上を目的とする国家的支援や地域間の協力体制が不可欠です。

総じて、カナダの鶏卵生産は順調な増加を続けていますが、環境や地政学的課題、疫病リスクなどを考慮した政策や産業界の取り組みが重要になります。その実現には、政府、企業、研究者の連携が欠かせないでしょう。