国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ミャンマーの鶏卵生産量は1961年から徐々に増加し、2000年代後半には急成長を遂げました。特に2009年から2017年にかけては、生産量が30万トンを超える規模に達しましたが、2018年に大幅な減少を記録しました。その後2020年以降は横ばい状態が続き、生産量は11万トン台にとどまっています。その背景には国内の政治的不安定さや経済状況、さらには新型コロナウイルスの影響が関連すると考えられます。
ミャンマーの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 111,360 | - |
2022年 | 111,360 | - |
2021年 | 111,360 |
-0.21% ↓
|
2020年 | 111,594 |
17.9% ↑
|
2019年 | 94,649 |
24.23% ↑
|
2018年 | 76,192 |
-86.28% ↓
|
2017年 | 555,390 |
2.44% ↑
|
2016年 | 542,174 |
6.4% ↑
|
2015年 | 509,574 |
8.02% ↑
|
2014年 | 471,730 |
9.32% ↑
|
2013年 | 431,500 |
8.99% ↑
|
2012年 | 395,900 |
6.52% ↑
|
2011年 | 371,682 |
8.66% ↑
|
2010年 | 342,055 |
7.48% ↑
|
2009年 | 318,264 |
20.84% ↑
|
2008年 | 263,368 |
13.78% ↑
|
2007年 | 231,462 |
10.26% ↑
|
2006年 | 209,924 |
12.48% ↑
|
2005年 | 186,639 |
18.59% ↑
|
2004年 | 157,387 |
16.94% ↑
|
2003年 | 134,587 |
13.08% ↑
|
2002年 | 119,016 |
13.1% ↑
|
2001年 | 105,235 |
-6.04% ↓
|
2000年 | 112,000 |
37.76% ↑
|
1999年 | 81,300 |
29.05% ↑
|
1998年 | 63,000 |
8.06% ↑
|
1997年 | 58,300 |
16.6% ↑
|
1996年 | 50,000 |
8.5% ↑
|
1995年 | 46,082 |
12.02% ↑
|
1994年 | 41,137 |
6.74% ↑
|
1993年 | 38,540 |
0.77% ↑
|
1992年 | 38,247 |
6.56% ↑
|
1991年 | 35,894 |
4.95% ↑
|
1990年 | 34,202 |
-4.39% ↓
|
1989年 | 35,771 |
-27.7% ↓
|
1988年 | 49,477 |
-0.28% ↓
|
1987年 | 49,614 |
3.47% ↑
|
1986年 | 47,949 |
-0.87% ↓
|
1985年 | 48,372 |
10.02% ↑
|
1984年 | 43,968 |
1.34% ↑
|
1983年 | 43,388 |
10.97% ↑
|
1982年 | 39,099 |
6.27% ↑
|
1981年 | 36,791 |
21.44% ↑
|
1980年 | 30,296 |
11.31% ↑
|
1979年 | 27,218 |
7.33% ↑
|
1978年 | 25,359 |
3.59% ↑
|
1977年 | 24,480 |
6.82% ↑
|
1976年 | 22,917 |
3.46% ↑
|
1975年 | 22,150 |
7.26% ↑
|
1974年 | 20,650 |
-2.89% ↓
|
1973年 | 21,265 |
16.47% ↑
|
1972年 | 18,258 |
0.16% ↑
|
1971年 | 18,229 |
0.49% ↑
|
1970年 | 18,140 |
14.44% ↑
|
1969年 | 15,851 |
3.26% ↑
|
1968年 | 15,350 |
4.32% ↑
|
1967年 | 14,715 |
4.5% ↑
|
1966年 | 14,081 |
4.75% ↑
|
1965年 | 13,442 |
4.96% ↑
|
1964年 | 12,807 |
5.21% ↑
|
1963年 | 12,173 |
5.5% ↑
|
1962年 | 11,538 |
5.84% ↑
|
1961年 | 10,901 | - |
ミャンマーの鶏卵生産量は、1961年の10,901トンから2017年のピークとなる55万5,390トンに至るまで、長期的に増加傾向を示してきました。このデータは、ミャンマー国内における農業技術の改良や需要の拡大を反映しており、食料自給率の向上や輸出可能性のある商品の増加を示唆するものです。特に2000年代後半から2017年にかけては、飼料の供給体制の強化や養鶏業の効率化が進んだ結果と考えられます。この期間中、ミャンマーの鶏卵生産は世界の成長トレンドと一致しており、近隣の中国やインドなどの需要増加と輸出の可能性も追い風となりました。
しかし、2018年以降、鶏卵生産量は劇的に減少し、その後、2020年以降は年間約11万トン前後で停滞しています。この急激な変化の背景には、さまざまな国内外の要因が存在します。2018年の激減については、政治的混乱や国内経済の停滞、農業インフラの限界が影響した可能性があります。また、新型コロナウイルスのパンデミックが2020年に発生したことで物流の停滞や消費市場の縮小がもたらされ、これも生産活動に影を落としたと考えられます。
さらには、ミャンマーにおける近年の地政学的リスクも無視できません。政治的な不安定さによる経済制裁や国内紛争が、農業振興の取り組みを著しく阻害しています。特に、農家への支援制度の機能停止や労働力の供給減少が、鶏卵生産の抑制に直結しています。これにより、ミャンマーの輸出競争力が低下し、隣国のタイやベトナムといった他の東南アジア諸国に比べても不利な立場に立たされています。
現在、生産量が低迷する中での主な課題は、政治的安定性の確保と持続可能な農業基盤の構築です。まずは、農家への直接的な補助金や資金援助の再開を支援することが急務です。また、食料供給ネットワークを再編し、効率的な流通システムを確立する必要があります。さらに、環境の変化や疫病の影響にも柔軟に対応できる生産体制を整えることも重要です。このため、政府や関連団体に加え、国際機関や他国の協力を得た技術導入が求められます。
結論として、ミャンマーの鶏卵生産量の推移は、国内の経済・政治・社会状況を反映した重要な指標と言えます。今後の安定的な成長のためには、インフラ設備の改善や政策支援、そして国際的な協力が不可欠です。同時に、他国の優れた生産モデルを参考にした地域間協力の枠組みの構築も検討すべき課題の一つです。これらの対策を通じて、ミャンマーの鶏卵生産が再び増加軌道に乗ることが期待されます。