国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データを基に、北マケドニアにおける鶏飼養数の推移を分析しました。鶏飼養数は1990年代初頭には4,000羽以上の規模が維持されていましたが、1996年以降急減を始め、2010年代後半には1,500羽前後にまで減少しています。2022年時点の飼養数は1,562羽となり、30年間で半分以下にまで縮小しています。この現象の背景には、経済的要因、農業政策、地政学的影響が複合的に絡んでいると考えられます。
北マケドニアの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 1,562.00 |
2021年 | 1,484.00 |
2020年 | 1,643.00 |
2019年 | 1,562.00 |
2018年 | 1,828.00 |
2017年 | 1,840.00 |
2016年 | 1,866.00 |
2015年 | 1,761.00 |
2014年 | 1,940.00 |
2013年 | 2,202.00 |
2012年 | 1,776.00 |
2011年 | 1,944.00 |
2010年 | 1,995.00 |
2009年 | 2,118.00 |
2008年 | 2,226.00 |
2007年 | 2,264.00 |
2006年 | 2,585.00 |
2005年 | 2,617.00 |
2004年 | 2,725.00 |
2003年 | 2,417.00 |
2002年 | 2,900.00 |
2001年 | 3,350.00 |
2000年 | 3,350.00 |
1999年 | 3,339.00 |
1998年 | 3,500.00 |
1997年 | 4,033.00 |
1996年 | 3,361.00 |
1995年 | 4,880.00 |
1994年 | 4,685.00 |
1993年 | 4,393.00 |
1992年 | 4,297.00 |
北マケドニアの鶏飼養数は、1990年代初頭には4,000羽以上を維持し、比較的安定した成長を見せていました。しかし、1996年以降、急激な減少が見られ、この時期は特に経済的混乱や地政学的な要因が影響したと考えられます。北マケドニアは1991年に旧ユーゴスラビアから独立しましたが、政治的、経済的な基盤整備が追いつかず、農業や畜産業に対する公的な投資の減少を招きました。この影響が鶏飼養数の減少に反映されていると見られます。
さらに、その後の2000年代以降においても飼養数の減少は続き、特に2002年以降の減少傾向は顕著です。この時期、北マケドニアの農業政策はEU加盟の準備として、他の農産分野への注力が優先されたため、畜産業の競争力が弱まった可能性があります。また、2008年から始まった世界的な金融危機は北マケドニアにも影響を及ぼし、農業全般が低迷したことが影響していると考えられます。
近年、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行も、鶏飼養数に間接的な影響を与えたと考えられます。パンデミックによる輸送コストの上昇、生産者の経済的困難、家禽市場の停滞などが、鶏飼養をさらに難しい状況に追い込んだ一因になっている可能性があります。
また、地域の地政学的リスクが農業生産に与える影響も無視できません。北マケドニアはバルカン半島の中心地に位置しており、過去には近隣諸国との緊張が高まる時期もありました。このような地政学的状況は、特に小規模な農業従事者において、生産面での不安定性を増大させる要因となります。
これらの状況に対しては複数の対策が考えられます。一つは、鶏飼養業者向けの補助金や低金利融資制度を創設し、生産基盤を回復させる政策です。また、EU加盟に向けた改革の中で農業支援策を一層強化し、鶏肉市場の国際競争力を高めることが不可欠です。さらに、飼料の輸入コスト削減や地元の栽培促進を通じて、生産コスト全体を抑える取り組みも重要と言えるでしょう。
北マケドニアの鶏飼養数の減少が示す背景には、経済的・地政学的なリスクが複合的に絡んでおり、単なる農業政策の転換では対処しきれない側面があります。しかしながら、地域農業の持続可能性を確保するためには、地元のニーズに即した柔軟な政策が求められます。今後、政府や国際機関は、農業の多角化、地域間の協力体制の強化、生態系の維持に向けた戦略を実施し、持続可能な農業の発展に寄与する必要があります。このような包括的な取り組みは、北マケドニアの農業及び経済全体の復興を促進する可能性を秘めています。