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モルドバ共和国の鶏飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新の2024年更新データによると、モルドバ共和国における鶏飼養数は、長期的に見ると一貫した上昇傾向にあります。特に1992年から2000年代初頭にかけては減少傾向にありましたが、それ以降は着実な回復と増加を見せています。2022年には48,867千羽(約4,886万羽)に達し、1992年の23,642千羽と比較すると2倍以上に増加しました。この推移は、国内の経済成長や農業政策、および食料確保のための取り組みを反映していると考えられます。

年度 飼養数(羽) 増減率
2023年 50,696,000
3.74% ↑
2022年 48,867,000
4.44% ↑
2021年 46,791,000
5.54% ↑
2020年 44,334,000
5.78% ↑
2019年 41,913,000
4.78% ↑
2018年 40,000,000
5.83% ↑
2017年 37,798,000
2.92% ↑
2016年 36,727,000
-0.31% ↓
2015年 36,840,000
15.7% ↑
2014年 31,840,000
-2.33% ↓
2013年 32,600,000
22.93% ↑
2012年 26,520,000
-22% ↓
2011年 34,000,000
52.19% ↑
2010年 22,340,000
22.61% ↑
2009年 18,220,000
6.86% ↑
2008年 17,050,000
-23.88% ↓
2007年 22,400,000
1.36% ↑
2006年 22,100,000
26.87% ↑
2005年 17,420,000
10.96% ↑
2004年 15,700,000
5.37% ↑
2003年 14,900,000
5.85% ↑
2002年 14,077,000
8.27% ↑
2001年 13,002,000
3.73% ↑
2000年 12,535,000
4.09% ↑
1999年 12,043,000
4.02% ↑
1998年 11,578,000
1.66% ↑
1997年 11,389,000
-22.45% ↓
1996年 14,686,000
2.26% ↑
1995年 14,362,000
-0.84% ↓
1994年 14,484,000
-15.14% ↓
1993年 17,068,000
-27.81% ↓
1992年 23,642,000 -

モルドバ共和国における鶏飼養数の推移には、同国の経済的・社会的背景が色濃く反映されています。1992年時点では23,642千羽の飼養数が記録されていましたが、1990年代初頭はソビエト連邦解体直後にあたり、経済基盤の崩壊や移行期の混乱が顕著でした。この影響により、1997年には最小値である11,389千羽にまで減少しました。この減少は、経済危機や農業基盤の脆弱化、生産コストの上昇が主な要因です。

2000年以降になると、徐々にではありますが飼養数が増加に転じ、2010年代からは国家主導の農業改革が進む中で、大幅な増加が見られます。2022年には48,867千羽に達しており、これは最小値だった1997年と比較して約4.3倍となる上昇幅です。この急激な回復の背景には、幾つかの要因が考えられます。第一に、国民の食生活と家禽産業の重要性への認識が高まったこと、次に、EUを含む国外市場に向けた輸出基盤の整備が進んだことが挙げられます。加えて、この期間にわたる技術革新や飼料の安定供給、政策的支援も大きな役割を果たしました。

他国との比較を行うと、例えば鶏肉の消費量が高い日本や、家禽輸出で世界をリードするアメリカと比較すると、モルドバの鶏飼養数は規模が小さく、国内消費を主体とした生産が中心であることが特徴です。一方で飼養数が急増している点では、農業発展途上の国々とも共通点があります。

ただし、飼養数の増加は課題も浮き彫りにしています。一つ目は、家禽産業が環境に与える影響です。飼養規模の拡大に伴い、鶏糞や排水の適切な処理が強く求められます。二つ目は、飼料の安定供給を確保する必要性です。多くの飼料が輸入に依存している場合、他国との関係や世界情勢の影響を直接的に受けるリスクがあります。三つ目は、家禽産業での従事者数や技術レベルの向上であり、特に技能労働者の確保が今後の課題となるでしょう。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)も、この動向に影響を与えた可能性があります。2020年から2022年にかけて飼養数が増加しており、これは食料安全保障への意識が高まり、国内生産の強化が推進された結果と考えられます。一方で、家禽産業もパンデミックによる物流混乱や労働力不足に直面しており、その影響は予断を許しません。

地域的特性として、モルドバは地政学的な影響を受ける立場にあります。例えば、周辺国との農産物貿易やウクライナ紛争の影響など、安定した生産基盤を妨げるリスクが存在します。このため、地域協力の促進や、持続可能な農業モデルの導入が重要です。例えば、再生可能エネルギーを活用した鶏舎建設や、サステナブルな飼料供給の枠組み作りが挙げられるでしょう。

結論として、モルドバにおける鶏飼養数の増加は、同国の農業発展と国民生活の安定化を象徴しています。しかし、環境負荷の軽減、国際的な流動性への対応力強化、現地労働力の育成といった課題も生じています。今後は、政府による政策や国際機関を含む多国間の協力が重要です。具体的には、環境に配慮した飼養システムの促進や、外部依存度を低減するための国内資源の活用が挙げられます。モルドバの持続可能な成長のためには、家禽産業の進化がカギとなるでしょう。