国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、キルギスタンの鶏飼養数は1992年の12,161千羽をピークに1995年まで急激に減少し、その後1996年以降徐々に回復基調に転じています。2022年の飼養数は4,984千羽と、ここ30年間での最低値である1,821千羽(1996年)から大幅に改善されていますが、依然として1992年の水準には程遠い状況です。
キルギスタンの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 4,984.00 |
2021年 | 4,593.00 |
2020年 | 4,674.00 |
2019年 | 4,822.00 |
2018年 | 4,567.00 |
2017年 | 4,415.00 |
2016年 | 4,252.00 |
2015年 | 4,044.00 |
2014年 | 3,828.00 |
2013年 | 3,793.00 |
2012年 | 3,665.00 |
2011年 | 4,490.00 |
2010年 | 4,422.00 |
2009年 | 4,238.00 |
2008年 | 4,194.00 |
2007年 | 4,088.00 |
2006年 | 3,911.00 |
2005年 | 4,121.00 |
2004年 | 3,949.00 |
2003年 | 3,338.00 |
2002年 | 2,921.00 |
2001年 | 2,744.00 |
2000年 | 2,660.00 |
1999年 | 2,438.00 |
1998年 | 2,080.00 |
1997年 | 1,892.00 |
1996年 | 1,821.00 |
1995年 | 1,978.00 |
1994年 | 6,187.00 |
1993年 | 9,320.00 |
1992年 | 12,161.00 |
キルギスタンの鶏飼養数推移を分析すると、以下の特徴が見られます。1992年は12,161千羽と高い水準で始まりましたが、その後わずか3年間で飼養数が大きく減少し、1995年には1,978千羽にまで低下しました。この急落の背景には、1991年のソビエト連邦解体による経済的混乱と農業構造の急激な変化が影響していると考えられます。特に集団農業(ソビエト時代のコルホーズやソフホーズ)の崩壊により多くの養鶏場が閉鎖されるなど、畜産業が大打撃を受けたことが主な要因とされています。
1996年以降、鶏飼養数は少しずつ増加し始め、2000年代に入るとより顕著な回復が見られます。この回復は、市場経済への移行が安定し、国内農業への投資が増加したことによるものと推測されます。特に2000年代前半から中盤にかけて目覚ましい増加を示し、2004年には3,949千羽、2005年には4,121千羽に達しました。しかし、2006年から2009年にかけての成長は停滞傾向を見せており、この時期には世界的な金融危機の影響も一因として考えられます。
2010年以降も全体的な増加傾向を維持し、2019年には4,822千羽に到達しました。これは10年で約400千羽以上の増加を示しており、経済の安定化が鶏飼養業の回復を後押ししていることを示唆しています。ただし、2020年には新型コロナウイルスの流行により社会経済活動が制限された影響で、再び一時的な減少が見られました。その後2022年には4,984千羽に達し、過去30年間での最も高い水準に近づいています。
しかし、現状の増加ペースでは1992年のピークである12,161千羽を回復するのは容易ではなく、さらなる課題が残っています。一つの課題として、安定したインフラ整備や養鶏に必要な飼料の供給体制の強化が挙げられます。特にキルギスタンは山岳地帯が多い地理的制約があるため、低コストでの飼料生産や輸入ルートの確保が急務です。
また、地域間の協力も重要です。隣接するカザフスタンやウズベキスタンから安価な鶏肉や卵が流入しているため、国内生産者の競争力を高める方策が必要です。具体的には、品質の向上やブランド化を通じた高付加価値化が有効と考えられます。さらに、持続可能な養鶏を目指して地元の中小農家への支援や技術指導を強化することが推奨されます。
地政学的リスクとしては、域内の社会的・政治的安定が鶏飼養数の増減に直接影響を及ぼす可能性があります。地域的な紛争や国際的な供給チェーンの混乱が再発すれば、再度大きな減少が起こるリスクも否定できません。
これらを踏まえると、キルギスタン政府や国際機関は、安定した経済基盤を整えつつ農業支援を強化する政策を採用する必要があります。また、住民への広報を通じて鶏肉や卵の消費拡大を促進することも地域の食糧安全保障の観点から意義深いでしょう。効果的な政策の実施により、キルギスタンの養鶏業は今後さらに成長し、国内の栄養改善や経済発展に寄与する可能性を秘めています。