国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、アゼルバイジャンの鶏飼養数は1992年には26,665羽でしたが、その後の数年間で急激に減少し、2000年代には安定した推移を見せました。しかし2014年以降は再び増加傾向となり、2019年には32,230羽に達しました。その後の2020年以降は若干の減少が見られ、2022年には29,795羽となりました。このデータはアゼルバイジャンの農業政策や経済状況、さらには地域的な要因が影響を与えていることを示しています。
アゼルバイジャンの鶏飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(羽) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 28,698,000 |
-3.68% ↓
|
2022年 | 29,795,000 |
0.58% ↑
|
2021年 | 29,624,000 |
-1.83% ↓
|
2020年 | 30,176,000 |
-6.37% ↓
|
2019年 | 32,230,000 |
5.68% ↑
|
2018年 | 30,498,000 |
0.08% ↑
|
2017年 | 30,473,000 |
8.8% ↑
|
2016年 | 28,009,000 |
1.63% ↑
|
2015年 | 27,559,000 |
-4.48% ↓
|
2014年 | 28,852,000 |
22.25% ↑
|
2013年 | 23,600,000 |
6.21% ↑
|
2012年 | 22,220,000 |
3.25% ↑
|
2011年 | 21,520,000 |
1.75% ↑
|
2010年 | 21,150,000 |
-1.4% ↓
|
2009年 | 21,450,000 |
7.79% ↑
|
2008年 | 19,900,000 |
10.56% ↑
|
2007年 | 18,000,000 |
-3.17% ↓
|
2006年 | 18,590,000 |
6.23% ↑
|
2005年 | 17,500,000 |
3.55% ↑
|
2004年 | 16,900,000 |
1.81% ↑
|
2003年 | 16,600,000 |
5.06% ↑
|
2002年 | 15,800,000 |
11.27% ↑
|
2001年 | 14,200,000 | - |
2000年 | 14,200,000 |
5.97% ↑
|
1999年 | 13,400,000 |
-5.63% ↓
|
1998年 | 14,200,000 |
11.81% ↑
|
1997年 | 12,700,000 | - |
1996年 | 12,700,000 |
-6.62% ↓
|
1995年 | 13,600,000 |
-15.17% ↓
|
1994年 | 16,032,000 |
-22.57% ↓
|
1993年 | 20,704,000 |
-22.36% ↓
|
1992年 | 26,665,000 | - |
アゼルバイジャンの鶏飼養数の推移を見ると、いくつかの特徴的な変動が確認できます。まず1992年から約10年間にわたり、鶏の飼養数が急激に減少しています。これは、ソビエト連邦崩壊後にアゼルバイジャンの経済が混乱に陥ったことが大きな要因と考えられます。この期間、農業全般が停滞し、家禽を含む畜産業のインフラや支援体制も十分ではなかったと推測されます。特に1993年には鶏の飼養数が20,704羽、1995年には13,600羽に落ち込み、畜産業の大幅な縮小が窺えます。
2000年代に入ると、飼養数はやや回復の兆しを見せます。これは、アゼルバイジャン政府による農業政策や経済の安定化が進み、鶏肉や卵の需要が市場で徐々に増加したことが背景と考えられます。また、2004年から2009年の間に飼養数が19,900羽まで回復したことは、都市部への需要増加や輸出機会の拡大が農業分野に影響を与えたと考えられます。
さらに、2014年から2019年の間に飼養数が再び大きく増加し、ピークとなった2019年には32,230羽を記録しました。この成長は、アゼルバイジャンが地域の輸出市場としての競争力を高めた時期であり、また政府による農村経済支援策が強化されたことも一因です。一方で2020年以降には新型コロナウイルス感染拡大の影響による供給網の混乱や減産が影響し、再び減少傾向となっています。例えば2020年には30,176羽、2021年に29,624羽と緩やかに落ち込んでおり、畜産業の回復にはさらなる努力が必要とされています。
現在、アゼルバイジャンが抱える課題として、持続可能な鶏飼養システムの確立が挙げられます。特に、世界的な食糧需給の不安定性や物流コストの増加、化学飼料の使用抑制など、農業・畜産業を取り巻く新しい課題に対応する必要があります。具体的には、飼料自給率の向上や生産効率の改善、病気のリスク管理を含む畜産衛生分野の強化が重要になるでしょう。これには、地域協力や国際的な技術交流を活用することが効果的と考えられます。
同時に、地政学的リスクもこの分野には影響を及ぼしています。アゼルバイジャンはカスピ海沿岸に位置し、エネルギー資源の輸出に依存する経済を持っていますが、これによる収入が畜産分野への投資に十分回っていない可能性があります。近隣諸国との紛争や地域の経済摩擦も影響し、農業全般の安定性が懸念材料です。こうした中で、アゼルバイジャンが国内外の市場へのアクセスを広げることや、新技術導入を通じて畜産業の効率性を向上させることが、課題解決の糸口となるでしょう。
結論として、アゼルバイジャンの鶏飼養数の長期的な増減は、経済情勢や政策、国際情勢に大きく影響を受けてきました。今後、地域の需要に対応した生産と、輸出市場での競争力強化を実現するには、技術革新の採用やインフラ整備、関係国との連携強化が不可欠です。国際機関や地域協力を通じた支援も期待される中、アゼルバイジャンが持続可能な畜産業を構築することで、食品安全保障の強化や経済成長への貢献が可能となるでしょう。