Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表したデータによると、チェコにおける鶏の飼養数は、1993年から2020年までの期間において全体的に減少傾向が見られます。1993年時点の27,160千羽をピークに、2020年には21,018千羽となり、約22.6%減少しました。この間、一部の年度では増加も見られるものの、長期的な下降傾向が顕著です。
チェコの鶏飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(羽) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 21,957,000 |
4.47% ↑
|
2020年 | 21,018,000 |
-3.78% ↓
|
2019年 | 21,844,000 |
-2.6% ↓
|
2018年 | 22,428,000 |
8.94% ↑
|
2017年 | 20,587,000 |
0.81% ↑
|
2016年 | 20,422,000 |
-4.94% ↓
|
2015年 | 21,483,000 |
4% ↑
|
2014年 | 20,656,000 |
-8.33% ↓
|
2013年 | 22,534,000 |
12.07% ↑
|
2012年 | 20,107,000 |
-2.28% ↓
|
2011年 | 20,577,000 |
-14.41% ↓
|
2010年 | 24,042,000 |
-5.67% ↓
|
2009年 | 25,487,000 |
-2.37% ↓
|
2008年 | 26,105,000 |
10.62% ↑
|
2007年 | 23,599,000 |
-4.72% ↓
|
2006年 | 24,768,000 |
2.75% ↑
|
2005年 | 24,104,000 |
-1.08% ↓
|
2004年 | 24,366,000 |
-4.96% ↓
|
2003年 | 25,638,000 |
-10.83% ↓
|
2002年 | 28,753,000 |
-6.47% ↓
|
2001年 | 30,742,000 |
4.08% ↑
|
2000年 | 29,538,000 |
1.71% ↑
|
1999年 | 29,041,000 |
4.2% ↑
|
1998年 | 27,871,000 |
5.22% ↑
|
1997年 | 26,489,000 |
-0.48% ↓
|
1996年 | 26,617,000 |
4.29% ↑
|
1995年 | 25,522,000 |
6.17% ↑
|
1994年 | 24,039,000 |
-11.49% ↓
|
1993年 | 27,160,000 | - |
チェコの鶏飼養数は、1993年から2020年の約30年間で全体的に減少しています。1993年の27,160千羽を基準とすると、2020年の21,018千羽は大幅な落ち込みを示しており、この減少は国内だけでなく、EU全体の家禽肉産業の規模縮小や政策の影響を背景にしていると考えられます。
この減少の主な要因として挙げられるのは、まずEU加盟国として採用している畜産・農業政策の変化です。EUでは環境への影響削減やアニマルウェルフェア(動物福祉)に関する規制が厳格化され、それを遵守するためのコストが増加したことで、小規模および中規模の養鶏業者が経営を縮小または撤退するケースが相次ぎました。また、1990年代末期から2000年代初期には一時的な増加も見られましたが、これは生産効率向上や国内需要の増大が一因とされています。しかし、2003年以降の持続的な減少傾向は時代の流れを明確に示しています。
国際的な視点で見ると、チェコの鶏飼養数の減少傾向は他のヨーロッパ諸国と類似しています。例えば、ドイツやフランスでも環境政策と食肉需要の多様化により頭数の削減が進んでいます。一方で、アメリカ、中国、ブラジルといった主要な食肉輸出国では、近年の都市化やプロセスフードの需要増加に伴い鶏飼養数が増加する動きも見られています。この国際的な競争状況は、チェコ国内の鶏業界にも価格競争力低下という形で影響を及ぼしています。
また、疫病の影響も排除できません。例えば、2000年代以降にエンテロウイルスやインフルエンザの流行が確認されたことで、鶏肉生産への信頼が一時的に低下しました。このような疫病の流行時には生体数を抑える対応を取る傾向が見られます。加えて、パンデミックや自然災害による飼料不足などの外的要因も影響を与えた可能性があります。
こうした状況を踏まえると、チェコの鶏産業にはいくつかの課題が浮かび上がります。まず、国内市場の需要に重点を置いた、差別化された持続可能な養鶏モデルの確立が急務です。オーガニックやアニマルウェルフェアに配慮した生産が一例として挙げられます。また隣国との協力を深め、安全基準を共有しながら地域経済を活性化する地域間連携も有効な手段となり得ます。そして、疫病や市場の変動に対応できるよう、生産現場のデジタル化を進め、効率的な管理を支援する政策も必要です。
結論として、チェコの鶏飼養数の推移は国内外の経済、政策、疫病リスクが複雑に絡み合った結果を反映しています。この推移は国内の養鶏産業が変革の時を迎えていることを示しており、新たな市場開拓や技術導入による競争力強化、さらには持続可能な農業技術への転換が今後の鍵として挙げられます。チェコ政府のみならず、EU全体や国際機関とも連携した政策展開が今後の成長に寄与すると言えるでしょう。