国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによれば、カナダの鶏飼養数は1961年の69,962羽から持続的に増加し、2022年には173,942羽に達しました。この増加は特に1990年代以降顕著で、一定水準を超えた後も緩やかな伸びを続けています。
カナダの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 173,942.00 |
2021年 | 173,156.00 |
2020年 | 172,370.00 |
2019年 | 171,950.00 |
2018年 | 169,149.00 |
2017年 | 168,609.00 |
2016年 | 168,095.00 |
2015年 | 167,587.00 |
2014年 | 167,000.00 |
2013年 | 166,500.00 |
2012年 | 166,000.00 |
2011年 | 164,600.00 |
2010年 | 165,000.00 |
2009年 | 165,000.00 |
2008年 | 165,000.00 |
2007年 | 165,000.00 |
2006年 | 160,000.00 |
2005年 | 160,000.00 |
2004年 | 160,000.00 |
2003年 | 160,000.00 |
2002年 | 160,000.00 |
2001年 | 158,000.00 |
2000年 | 158,000.00 |
1999年 | 155,000.00 |
1998年 | 140,000.00 |
1997年 | 138,000.00 |
1996年 | 142,000.00 |
1995年 | 136,000.00 |
1994年 | 132,000.00 |
1993年 | 115,000.00 |
1992年 | 108,000.00 |
1991年 | 112,000.00 |
1990年 | 111,000.00 |
1989年 | 107,000.00 |
1988年 | 106,714.00 |
1987年 | 107,644.00 |
1986年 | 98,286.00 |
1985年 | 95,385.00 |
1984年 | 92,193.00 |
1983年 | 93,261.00 |
1982年 | 92,415.00 |
1981年 | 95,835.00 |
1980年 | 93,511.00 |
1979年 | 98,688.00 |
1978年 | 91,789.00 |
1977年 | 90,011.00 |
1976年 | 87,277.00 |
1975年 | 82,175.00 |
1974年 | 88,280.00 |
1973年 | 90,832.00 |
1972年 | 91,140.00 |
1971年 | 87,537.00 |
1970年 | 94,995.00 |
1969年 | 86,680.00 |
1968年 | 78,515.00 |
1967年 | 78,887.00 |
1966年 | 75,524.00 |
1965年 | 70,691.00 |
1964年 | 71,514.00 |
1963年 | 67,645.00 |
1962年 | 65,031.00 |
1961年 | 69,962.00 |
カナダにおける鶏飼養数の推移を見ると、1960年代から現在に至るまで長期的な増加傾向が確認できます。このデータは、カナダ国内における家禽産業の発展状況及び消費需要の変遷を映し出しており、産業全体の成長を裏付けています。特に1970年代から1980年代初頭にかけては一定の変動が見られましたが、1990年以降はおおむね安定した成長を見せています。例えば、1990年の111,000羽から2022年の173,942羽へと増加し、32年間で約56%の成長を遂げました。
これらの増加要因として考えられるのは、国内外での鶏肉需要の増加です。鶏肉は他の肉類よりも生産効率が高く、低コストで健康的なタンパク源として広く支持を受けています。さらに、カナダ国内の人口増加や移民政策の影響も需要を押し上げる要因として寄与した可能性があります。また、カナダの家禽産業は良好な持続可能性への取り組みや高度な飼育技術の導入に力を入れたことから、生産効率の向上と食品安全への信頼性向上を確保しました。
しかし、この増加傾向にはいくつかの課題も伴います。まず、気候変動が家禽業への影響を及ぼす可能性が指摘されています。特に、異常気象や水資源不足が今後の飼育環境に悪影響を与える可能性があります。また、大規模集約型の飼育方式の増加に伴い、疫病の発生リスクが高まる可能性があるため、感染症拡大の抑止策が喫緊の課題となるでしょう。これは新型コロナや鳥インフルエンザなどの疫病が通商や貿易に大きな影響を与えた事例からも明らかです。
さらに、地政学的リスクに基づく餌料供給の不足リスクも見過ごせません。鶏の飼料はトウモロコシや大豆といった作物が主因ですが、これらは気候変動の影響を強く受けるだけでなく、ロシアやウクライナなどの穀物輸出大国の紛争や貿易制限が市場に波及することも懸念されています。したがって、カナダが鶏の飼養数を安定させるためには、国内の穀物供給の自立度を高め、分散的なサプライチェーンの構築を図ることが必要です。
未来に向けて具体的な解決策を示すと、持続可能性に焦点を当てた飼育システムの改良が求められます。例えば、水やエネルギーの効率的利用、環境負荷の低減技術を導入することが考えられます。同時に、鳥インフルエンザなどの疫病リスクへの迅速な対応能力を強化するため、家禽飼育データのデジタル管理や予測モデルの構築を進めるべきです。これらの手法は、災害や感染症の発生時にも供給網が揺るがないようにするために不可欠と言えるでしょう。
また、輸出市場における競争力を維持するための施策として、高付加価値製品の開発や、カナダ産鶏肉のブランド化を進めることも有効です。例えば、抗生物質を使用しない清潔な飼育プロセスや、動物福祉に配慮した養鶏などに注力することで、国際市場での競争優位性を獲得できる可能性があります。
結論として、カナダの鶏の飼養数の増加は、持続可能で効率的な生産体制の構築と食品安全への信頼に基づく産業成長の象徴とも言えます。しかし、内外の課題を克服するためには、気候、疫病、国際市場の変化に柔軟に対応し得る長期的な政策設計が不可欠です。そのためには、国際機関や他国とも連携した取り組みを進め、地域間協力の枠組みを強化することがカナダ独自の競争力を更に発展させる鍵となるでしょう。