国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、モーリタニアの米生産量は1961年の500トンから2022年の403,000トンまで着実に増加しています。とりわけ、2010年以降に生産量が急拡大し、2021年には428,400トンと過去最高値を記録しました。一方で、一部の年では生産量が大幅に減少する傾向も見られ、安定的な生産には課題が残されています。
モーリタニアの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 403,000 |
2021年 | 428,400 |
2020年 | 291,300 |
2019年 | 255,500 |
2018年 | 323,000 |
2017年 | 301,000 |
2016年 | 207,000 |
2015年 | 223,000 |
2014年 | 293,219 |
2013年 | 202,547 |
2012年 | 184,217 |
2011年 | 158,021 |
2010年 | 134,447 |
2009年 | 53,569 |
2008年 | 82,163 |
2007年 | 82,165 |
2006年 | 70,462 |
2005年 | 72,000 |
2004年 | 85,530 |
2003年 | 79,000 |
2002年 | 77,409 |
2001年 | 58,809 |
2000年 | 76,200 |
1999年 | 86,463 |
1998年 | 101,900 |
1997年 | 80,942 |
1996年 | 66,748 |
1995年 | 52,813 |
1994年 | 45,400 |
1993年 | 64,925 |
1992年 | 50,718 |
1991年 | 41,678 |
1990年 | 51,796 |
1989年 | 55,067 |
1988年 | 50,949 |
1987年 | 52,900 |
1986年 | 33,000 |
1985年 | 25,000 |
1984年 | 20,000 |
1983年 | 22,000 |
1982年 | 20,000 |
1981年 | 15,000 |
1980年 | 10,800 |
1979年 | 9,300 |
1978年 | 3,300 |
1977年 | 3,600 |
1976年 | 3,960 |
1975年 | 3,840 |
1974年 | 3,000 |
1973年 | 3,000 |
1972年 | 2,500 |
1971年 | 1,370 |
1970年 | 1,370 |
1969年 | 497 |
1968年 | 514 |
1967年 | 400 |
1966年 | 700 |
1965年 | 650 |
1964年 | 700 |
1963年 | 600 |
1962年 | 500 |
1961年 | 500 |
モーリタニアの米生産量の歴史的推移を見ると、1960年代は年間生産量が500~1,000トン程度と極めて少量に留まっていました。その後、1970年代には灌漑技術の導入や農業政策の進展によって生産量が徐々に増加し、1980年代には1万トンを超える規模に達しました。この地域では米は国内の重要な主食でもあり、生産拡大は食料安全保障にとって不可欠な課題でした。
1990年代から2000年代にかけては、技術進歩や農業支援プログラムにより、米の生産量は5万トンから10万トンの範囲で推移しました。しかし、この時期においても、干ばつやインフラ整備不足などの理由で、生産量が安定しない年が見受けられました。また、2009年の53,569トンや2020年の大幅な減少など、天候や生産資源への依存度が高いことが課題として浮上しています。
2010年代以降は政府および国際機関の支援により、モーリタニアの農業政策はさらに発展しました。この10年ではじめて、米生産量は20万トンを超えるようになり、2017年に301,000トン、2018年には323,000トンに到達しました。このような成長は、近年の農業技術の導入、特に灌漑設備の拡充や高収量品種の導入が背景にあります。また、この地域では新型コロナウイルス感染症の影響が一時的に農業生産に影響を与えたものの、長期的には持続的な増加傾向が確認されています。2021年には428,400トンを記録し、復調傾向を維持しています。
しかしながら、モーリタニアの米生産における課題も依然として多いです。一つは、気候変動による影響です。同国はサヘル地域に属し、干ばつや洪水といった極端な気象現象が農業に大きな打撃を与えることがあります。特に2019年や2022年は生産量が減少した年であり、これには環境要因が影響している可能性が高いといえます。さらに、灌漑インフラの老朽化や持続可能な農業技術への投資不足も生産効率に影響を及ぼしています。
このような背景を踏まえ、将来に向けた提言として、以下の対策が考えられます。第一に、灌漑施設や農業インフラへのさらなる投資が重要です。これにより旱魃や洪水時の影響を最小限に抑えた安定的な生産が可能になります。第二に、農業従事者への技術研修や教育プログラムを強化することで、生産効率を向上させることが求められます。また、耐乾性を重視した作物の品種改良も重要な要素です。さらに、地域間の協力や国際援助団体との連携を強化し、資金や技術移転の枠組みを構築することが必要です。
モーリタニアの米生産量が着実に伸びている現状は、同国の食糧安全保障や農村経済の発展において重要な転換点であるといえます。一方で、気候変動や地域の地政学的リスクに直面しているため、持続可能な農業の実現が急務となっています。この課題に積極的に対応することで、モーリタニアが今後さらに米生産量を向上させ、国内の需要を自給自足するだけでなく、他国への輸出も視野に入れる可能性が広がるでしょう。そのためには、国内外の各種取り組みを一層促進する必要があります。