国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、スウェーデンにおける豚の飼育数は1961年の約204万8000頭から過去数十年の間に大きな変動を経て、2022年には約141万6270頭となっています。一時的に増加を見せた1970年代から1980年代には上限でおよそ272万頭に達し、その後、長期的な減少傾向が続いています。2010年代後半から現在にかけて飼育数が徐々に増加する動きもあるものの、昔のピーク時には遠く及びません。
スウェーデンの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 1,416,270 |
2021年 | 1,372,500 |
2020年 | 1,389,300 |
2019年 | 1,481,200 |
2018年 | 1,417,200 |
2017年 | 1,382,300 |
2016年 | 1,471,200 |
2015年 | 1,435,300 |
2014年 | 1,377,351 |
2013年 | 1,398,875 |
2012年 | 1,363,364 |
2011年 | 1,482,592 |
2010年 | 1,519,900 |
2009年 | 1,528,740 |
2008年 | 1,609,289 |
2007年 | 1,676,327 |
2006年 | 1,680,535 |
2005年 | 1,811,216 |
2004年 | 1,818,037 |
2003年 | 1,903,126 |
2002年 | 1,881,743 |
2001年 | 1,891,456 |
2000年 | 1,917,917 |
1999年 | 2,115,213 |
1998年 | 2,286,030 |
1997年 | 2,351,201 |
1996年 | 2,348,800 |
1995年 | 2,313,137 |
1994年 | 2,328,405 |
1993年 | 2,276,547 |
1992年 | 2,279,053 |
1991年 | 2,201,413 |
1990年 | 2,263,943 |
1989年 | 2,263,660 |
1988年 | 2,274,364 |
1987年 | 2,234,381 |
1986年 | 2,438,668 |
1985年 | 2,588,981 |
1984年 | 2,684,885 |
1983年 | 2,677,235 |
1982年 | 2,727,152 |
1981年 | 2,723,411 |
1980年 | 2,714,197 |
1979年 | 2,694,060 |
1978年 | 2,700,385 |
1977年 | 2,643,124 |
1976年 | 2,547,832 |
1975年 | 2,522,480 |
1974年 | 2,456,394 |
1973年 | 2,455,308 |
1972年 | 2,508,800 |
1971年 | 2,363,737 |
1970年 | 2,073,559 |
1969年 | 2,065,125 |
1968年 | 2,086,453 |
1967年 | 2,028,606 |
1966年 | 1,907,560 |
1965年 | 1,892,600 |
1964年 | 1,874,043 |
1963年 | 1,808,215 |
1962年 | 2,113,090 |
1961年 | 2,048,000 |
スウェーデンの豚飼育数推移データを見ると、長期的な視点での変動と現状の背景を理解することができます。1960年代から1980年代末にかけて、飼育数は幾度かの増減を含みつつも全体的に増加傾向を示しており、特に1978年から1983年頃には安定して約270万頭を維持しました。しかし、1990年代以降飼育数は減少傾向に入り、2000年には約191万8000頭、さらに2022年には約141万6000頭にまで減少しました。これは半世紀前の数値と比べて約30%の減少となっています。
この傾向の背後にはいくつかの要因が考えられます。まず、スウェーデンの農業政策や畜産業における構造的変化が大きな影響を与えています。EU加盟(1995年)後、スウェーデンでは環境基準や動物福祉に関する規制が強化されました。具体的には飼育スペースの拡大や飼料に関する規制が厳しくなり、それに伴うコストの増加が小規模農家の撤退や大規模飼育への転換を促す結果に繋がっています。また、健康志向の高まりやベジタリアン・ヴィーガン人口の増加により、国内の豚肉需要が減少したことも見逃せません。
一方でこの減少が示すもう一つの背景は、グローバル市場での競争環境の変化です。スウェーデン国内の生産者が他の安価な豚肉生産国(例えばデンマークやオランダ)との貿易競争に直面し、特に利益率の低い国内市場向けの生産が厳しい状況に立たされています。一方で、気候変動や環境配慮の観点からも畜産業全般が重要な課題となっており、排出ガス削減の必要性も生産規模の縮小を後押ししています。
将来的には、小規模農家のさらなる淘汰や効率化された大規模な豚舎への集中が続くことが予測されます。この動きは短期的には国内供給量の維持に役立つ一方で、地域による農業の多様性や伝統が失われる懸念もあります。また、疫病や経済的不安定性が畜産業全体にさらなる打撃を与えるリスクも排除できません。特にアフリカ豚熱のような疫病への対策や、2020年代における原材料価格高騰の影響が課題として挙げられます。
課題の克服には、いくつかの具体的な方策が必要です。まず、国内の豚肉需要を持続可能にするための啓発活動が重要です。持続可能な農業や地産地消の必要性を消費者に伝える取り組みは、短期的な需要喚起に寄与します。また、農家に対しては環境負荷を抑えた技術や品質改善のための革新的な支援策が求められています。さらに、畜産業者に求められるCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)を拡大し、国際的な市場競争における優位性を確立することも視野に入れるべきです。
また、気候変動への対応を視野に、再生可能エネルギーの利用やロス削減技術の導入も進める必要があります。地域単位では、農業集落を中心に生産者間の連携を強化し、生産効率の向上とコスト削減を図るべきです。なお、EUや国際機関と連携し、南北格差の是正や環境配慮型の貿易政策を推進することも効果的な手段であると考えます。
全体として、スウェーデンにおける豚飼育数の推移は、畜産業が直面する経済的・社会的・環境的課題を象徴しています。これらの問題はスウェーデン国内にとどまらず、他の先進畜産国、特にヨーロッパ各国とも関連し、国際的な課題として捉える必要があります。持続可能性の確立と地域特性の保護を両立させるためには、政府、農業団体、消費者が一体となった広範な取り組みが不可欠です。