国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、モンゴルの豚飼育数は一貫した増減を繰り返し、2022年には34,798頭となりました。この統計からは、飼育数が1989年のピークである170,766頭を記録した後、急激な減少を経て、その後は緩やかな回復傾向にあることが示されています。特に1990年代前半に大きな下降が見られ、最近のデータでは、2019年から2022年にかけて再び増加傾向にあることが確認されています。
モンゴルの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 34,798 |
2021年 | 30,577 |
2020年 | 24,531 |
2019年 | 20,892 |
2018年 | 27,819 |
2017年 | 31,870 |
2016年 | 31,489 |
2015年 | 33,491 |
2014年 | 46,305 |
2013年 | 51,864 |
2012年 | 40,421 |
2011年 | 30,397 |
2010年 | 24,842 |
2009年 | 25,808 |
2008年 | 29,285 |
2007年 | 35,974 |
2006年 | 32,761 |
2005年 | 30,000 |
2004年 | 27,000 |
2003年 | 22,000 |
2002年 | 18,000 |
2001年 | 14,773 |
2000年 | 14,684 |
1999年 | 21,684 |
1998年 | 20,800 |
1997年 | 19,100 |
1996年 | 23,513 |
1995年 | 23,423 |
1994年 | 28,656 |
1993年 | 48,556 |
1992年 | 83,300 |
1991年 | 134,700 |
1990年 | 192,090 |
1989年 | 170,766 |
1988年 | 120,195 |
1987年 | 79,665 |
1986年 | 56,126 |
1985年 | 47,600 |
1984年 | 45,100 |
1983年 | 39,400 |
1982年 | 35,000 |
1981年 | 33,900 |
1980年 | 34,500 |
1979年 | 28,500 |
1978年 | 20,500 |
1977年 | 14,500 |
1976年 | 12,500 |
1975年 | 14,900 |
1974年 | 13,700 |
1973年 | 13,700 |
1972年 | 11,200 |
1971年 | 10,700 |
1970年 | 11,600 |
1969年 | 13,100 |
1968年 | 14,300 |
1967年 | 14,400 |
1966年 | 19,600 |
1965年 | 22,000 |
1964年 | 24,000 |
1963年 | 18,000 |
1962年 | 11,000 |
1961年 | 10,000 |
モンゴルの豚飼育数推移データは、国の農業構造や経済状況、さらには社会・地政学的背景の変化を反映する重要な指標です。初期の1960年代には、飼育数が1万頭台から徐々に増加していきましたが、やがて1970年代半ばにかけて停滞期をむかえました。その後、1980年代には着実な増加を見せ、1989年には170,766頭となるピークが記録されました。この時期は、モンゴルが社会主義経済体制の下で計画的な牧畜活動を行っていたことと連動しています。
しかしながら、1990年以降の急激な減少が際立っています。この動きはモンゴルが市場経済へ移行する過程で社会インフラが大きく変動したことと密接に関連しています。特に、経済の自由化に伴う国営農場の解体や農業政策の変容が畜産業全体に影響を及ぼした結果、豚の飼育数は急激に下がり、1994年には28,656頭と1989年から約6分の1にまで減少しました。さらに、その背景には同時期に発生した過酷な気象条件(自然災害)や地域の農業技術の低迷も含まれていると考えられます。
2000年代に入って以降は飼育数が再び持ち直し傾向を示していますが、それでも1980年代の繁栄期と比べると飼育規模は抑えられたままとなっています。2022年現在の飼育数は34,798頭で、これは過去のピークの約20%に相当します。この増加の背景として、国内外の需要が増加し、特に都市部における豚肉消費が拡大していることが指摘できます。また、中国やロシアといった隣国との貿易関係による影響も見逃せません。モンゴルは、豚の飼育が農村部の限られた地域で集中的に行われているという特性があります。特に寒冷地での環境対応型の畜産技術が求められる地域であるため、地域的な技術力の平準化が課題となっています。
課題として注目すべきは、まず地政学的リスクです。隣国との農畜産物貿易に依存するモンゴルは、中国やロシアの経済政策や輸入規制の影響を受けやすい構造にあります。また、新型コロナウイルスのパンデミック中、モンゴル国内の農畜産物供給チェーンが停止したことによっても飼育数に間接的な影響が出たと考えられます。
モンゴルが今後注力すべき施策としては、以下が考えられます。第一に、気象条件や疫病に対応した豚の飼育管理技術の向上です。例えば、寒冷地用の豚舎建設の普及や餌の安定供給システムの確立が必要でしょう。第二に、輸出市場の拡大を目指す政策推進です。隣国だけでなく、他国市場への積極的な参入を検討することで国全体の豚肉産業を活性化できます。第三に、農業従事者への支援強化も欠かせません。新たな技術研修や経済的インセンティブの導入には、国内政策と国際支援の連携が重要です。
結果的に、モンゴルの豚飼育数は長期の推移データを通じて、気象条件や経済政策といった要因の影響を強く受けている一方で、最新のデータでは改善傾向を示しています。これらの課題に適切な対応を行うことで、持続可能で競争力のある豚肉産業を育成する可能性があります。国際社会との協力と国内政策の改善を通じて、モンゴルの豚飼育数の安定成長が期待されています。