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キルギスタンの豚飼育数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、キルギスタンの豚飼育数は1992年の357,700頭をピークに、現在の2022年には25,640頭と80%以上の大幅な減少が見られます。2000年代初頭から緩やかな減少傾向を示していましたが、2019年以降では減少が加速し、2020年および2021年においてもほぼ横ばいの水準にとどまっています。このデータから、キルギスタンの豚飼育がこの30年間でいかに大きな変化を遂げたかが明らかです。

年度 飼育数(頭)
2022年 25,640
2021年 29,508
2020年 29,465
2019年 34,750
2018年 51,265
2017年 52,169
2016年 51,082
2015年 50,345
2014年 50,782
2013年 51,777
2012年 55,380
2011年 59,202
2010年 59,791
2009年 61,315
2008年 74,918
2007年 79,567
2006年 77,786
2005年 82,659
2004年 82,770
2003年 87,159
2002年 86,619
2001年 101,053
2000年 104,800
1999年 105,476
1998年 92,600
1997年 88,000
1996年 113,900
1995年 117,800
1994年 169,400
1993年 246,600
1992年 357,700

キルギスタンにおける豚飼育数は、1992年の時点で357,700頭を記録し、これは国内の畜産業において一定の重要性を持っていました。しかし、この時期はソ連崩壊後の混乱期にあたり、農業および畜産業は市場経済への移行の影響を強く受け、資材供給の混乱や経済的困難が背景となり、豚飼育数は翌年の1993年には246,600頭へ急減、その後も1995年には117,800頭、1997年には88,000頭と急激な減少を続けました。

2000年代に入ると減少速度は緩やかになり、数値は長期間にわたり約70,000〜105,000頭の範囲で推移していました。この安定的な水準は、豚肉需要の減少や飼料費の増大に対応した小規模生産への転換、また宗教的要因(豚肉が消費されにくいイスラム教の影響など)による意識変化が影響したとされています。

しかし2019年以降には、一段と急激な減少が確認されました。2019年の34,750頭から2022年の25,640頭への大幅な減少は、いくつかの要因が重なった可能性があります。一つには、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が畜産業に与えた生産・物流面での悪影響が挙げられます。また、地政学的に不安定な状況や国内経済の停滞により、畜産業への投資がさらに控えられる傾向が指摘されています。

このような豚飼育数の顕著な減少は、将来的な課題を浮き彫りにしています。キルギスタンでは、豚飼育業の縮小が畜産業全体のバランスに影響を与える可能性があります。豚は飼料効率が比較的高いため、少ない資源で生産できる利点を持っています。そのため、豚飼育の衰退は、持続可能な食糧供給確保の観点から問題視されるべきです。

また、この減少の背景には、イスラム教の影響による宗教的信条が豚肉消費の低迷を招いている点も含まれる可能性があります。この文化的背景を踏まえつつ、地元の家畜生産の多様化を図ることが重要です。例えば、ヤギや羊の飼育の強化を通じて、畜産業の安定化を目指すことが適切かもしれません。また、豚の飼育減少に伴う知識や技能の喪失を防ぐため、農業教育及び技術支援を通じて、小規模農家が引き続き持続可能な営農を続けられるようにする政策が有効です。

さらに地政学的背景を考慮すると、国内外の食糧輸送や物流政策の改善が必要です。新型コロナウイルスの影響下、複雑化した供給網が再編される中で、キルギスタンにおいて効率的な農業・畜産物流の整備は急務といえます。

結論として、キルギスタンの豚飼育数推移は、国内経済・地政学的状況、宗教的要因、新型コロナ禍による影響が絡み合い、その現象として80%以上の減少を示しました。この現状を受けて、地域的な特性に即した多角的な政策対応が求められます。具体的には、豚飼育以外の畜産業振興策の推進、持続可能な知識共有、物流の近代化、及び農村地域での雇用創出が重要です。キルギスタン政府および国際機関は、これらの課題を俯瞰した上で統合的な戦略を策定する必要があります。